【ロヒンギャ危機】 衛星写真が組織的な焼き討ち示すと人権団体

複数のロヒンギャ集落が焼き討ちに遭う前後を比較した衛星写真

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複数のロヒンギャ集落が焼き討ちに遭う前後を比較した衛星写真

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは14日、ミャンマーのムスリム(イスラム教徒)系少数派ロヒンギャが住む集落に対する「組織的」な焼き討ちを示すとみられる衛星写真を公表した。

アムネスティは衛星写真について、ミャンマーの治安部隊がロヒンギャを国から追い出そうとしている証拠だと述べた。

ミャンマー軍は、戦闘の相手は武装勢力で市民は標的にしていないと説明している。

先月末に衝突が始まって以来、隣国バングラデシュに避難したロヒンギャの数は約38万9000人に上る。ロヒンギャはミャンマーで「不法移民」として扱われ、長らく迫害の対象になってきた。

ミャンマー政府によると、西部ラカイン州にある複数のロヒンギャ集落の少なくとも30%から、住民がいなくなった。

ロヒンギャは数世代にわたってミャンマーに居住しているが、国籍を与えられていない。ロヒンギャの扱いをめぐり、ミャンマーに対して国際的に強い批判が集まっている。

訪英中のレックス・ティラーソン米国務長官は14日、ミャンマーの民主主義が「決定的瞬間」に直面していると述べ、「民族を問わず、人のしかるべき扱い方というものがある。誰もが了解しているこのことのため、国際社会が発言するのが重要だ」と語った。「この暴力は終わらなくてはならない。この迫害は終わらなくてはならない」。

これに先立つ13日、国連のアントニオ・グテレス事務総長は、ロヒンギャが人道上破滅的な状況に置かれていると指摘し、ロヒンギャの村への攻撃は容認できないと述べた。国連安全保障理事会は、暴力停止に向けた緊急措置を呼びかけた。

アムネスティは、3週間にわたるロヒンギャの村々を標的にした「巧妙に計画された組織的な焼き討ち」を示す新たな証拠が、火災探知データや衛星写真、写真や映像に加え、目撃者への聞き取り調査から得られたと述べた。

アムネスティで危機対応担当ディレクターを務めるティラナ・ハッサン氏は、「証拠に反論の余地はない。ミャンマーの治安部隊はロヒンギャの人々をミャンマーから追い出そうと標的にして、ラカイン州北部を火の海にしている。これが民族浄化なのは確かだ」と語った。

先週以来、バングラデシュに逃れてくるロヒンギャの数は3倍に達した

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先週以来、バングラデシュに逃れてくるロヒンギャの数は3倍に達した

アムネスティは、治安部隊が村を包囲した後、逃げ出した人々に向かって発砲し、彼らの家々に火をつけていると主張。「人道に対する罪」だと非難した。

アムネスティによると、8月25日に反体制勢力「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)が複数の警察施設を襲撃したことを機に、ミャンマー軍が軍事行動を始めて以来、少なくとも80件の大きな火災が探知されたという。アムネスティは、1カ月の間に同じ規模の火災が探知されたことは、過去4年間なかったと指摘した。

アムネスティはさらに、仏教徒が多いラカイン州でロヒンギャ武装勢力が民家に放火しているという、信頼できる情報も得たと明らかにした。情報の内容は確認できていないという。

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ミャンマーの国連大使はラカイン州での暴力の責任はロヒンギャ武装勢力にあると主張し、ミャンマーはこのような残虐行為を決して容認しないと語った。

ミャンマー政府のザウ・ハティ報道官は、家を失った人はラカイン州に設置した臨時キャンプに避難するよう呼びかけたが、すでにバングラデシュに逃げた全員の帰国は認められないと述べた。

ミャンマー軍のトップ、ミン・アウン・フライン国軍司令官は13日、ロヒンギャをバングラデシュからの不法移民だとするミャンマーの主張に基づき、「真実を隠すことで、『ロヒンギャ』という言葉を受け入れ認めることはできない」と語った。「ラカインの民族(仏教徒)は、先祖代々住んでいる土着の人々だ」。

ラカイン州に176カ所あるロヒンギャの村のうち、30%以上が住民がいない状態になっているとミャンマー政府は認めている。

暴力行為はアムネスティの報告書が出る前にも伝えられており、村の焼き討ちには治安部隊が関与していると避難したロヒンギャの人たちが証言している。

40万人近いロヒンギャが避難した今回の危機以前に、すでにバングラデシュに数十万人のロヒンギャが避難していると国連は指摘する。

ミャンマー国内にも、難民キャンプで生活しているロヒンギャが存在する。

ロヒンギャとはどんな人々か

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ロヒンギャとは……自分たちの言葉で

ミャンマー国内には少なくとも100万人のロヒンギャが生活している。大多数はイスラム教徒だが、一部はヒンズー教徒。元々バングラデシュとインドの西ベンガル州に住んでいたが、多くはミャンマー国内に数百年にわたって居住してきた。

ミャンマーの法律はロヒンギャを「国家の民族」と認めておらず、実質的に国籍を得られなくなっている。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)は、ロヒンギャを国を持たない主要な民族に挙げている。

HRWは、「過去の暴力の波によって難民化した人々は、移動が制限され基本的な医療サービスを受けられずにおり、深刻な人道状況に置かれている」と述べた。

バングラデシュのシェイク・ハシナ首相はミャンマーがロヒンギャ難民の帰国を受け入れるよう訴えた。

ロヒンギャへの暴力は西部ラカイン州(Rakhine)に集中している
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ロヒンギャへの暴力は西部ラカイン州(Rakhine)に集中している