米共和党重鎮、トランプ氏は米を「第3次世界大戦への道に」

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ボブ・コーカー上院議員は9月末、政界引退を発表した
米共和党重鎮で上院外交委員会のボブ・コーカー委員長は8日、ドナルド・トランプ大統領が米国を「第3次世界大戦への道」に巻き込みかねないと警告した。
テネシー州選出で9月末に政界引退を発表したばかりのコーカー議員は、8日付米紙ニューヨーク・タイムズとの電話インタビューで、トランプ氏が大統領としての職務を「リアリティ番組」のように扱っていると非難。さらに、ホワイトハウスのスタッフが大統領を「抑え込む」ことに苦労していると述べた。
「合衆国大統領が発言し、あのような内容のこと言うと、それは世界中に、特に発言対象の地域にどれほどの影響を与えるか、よく分かっていないのだと思う」とコーカー議員は述べた。
与党の現職議員が現職の大統領を公然と非難するのは極めて異例。
コーカー氏は昨年の政権移行期に、国務長官候補に挙がっていたが、その後はトランプ氏と仲たがいしている。
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トランプ氏はコーカー氏の再選を支持しなかったとツイート。写真は7日、ホワイトハウスで
「なぜ事実と異なる内容をツイート」
トランプ氏はこれまで繰り返し、核保有国となった北朝鮮を挑発してきた。この言動についてコーカー議員は、米国を「第3次世界大戦への道」に巻き込みかねないと警告した。
「なぜ事実と異なる内容を大統領がツイートするのか、分からない。そういう真似をしていると知っている。みんな知っている。でもあの人はそれを続けている」
大統領とコーカー議員の激しい舌戦は8日朝、ツイッター上で始まった。
トランプ氏は、再選のため大統領の後援が欲しいと上院議員が懇願してきたが、自分はこれを断ったのだとツイートした。トランプ氏は「とんでもないイランとの(核)合意の大部分」はコーカー議員の責任だと非難した。
これに対してコーカー議員はツイッターで、「ホワイトハウスがデイケアセンターになってしまったのは、残念な話だ」、「明らかに誰かが今朝の担当シフトをすっぽかしたんだな」と皮肉で返した。
トランプ氏は今週、オバマ政権の2015年イラン核合意を破棄する見通し。トランプ氏はかねてから、イランとの合意を批判してきた。
対して、イラン合意は継続すべきだと発言してきたコーカー議員は、来年秋の中間選挙に出馬しないと9月末に発表した。
トランプ、コーカー両氏は8月にも、バージニア州シャーロッツビルの衝突をめぐり対立。女性1人が死亡した衝突について、白人至上主義者と反ファシズム抗議の参加者の双方に非があると発言した大統領の反応を、コーカー議員は強く非難していた。
トランプ氏がコーカー氏について非難ツイートをし始めたのは、コーカー氏がレックス・ティラーソン国務長官を思いやる発言をした後のことだった。ティラーソン長官は大統領に軽んじられているというのが、大方の見方だ。
上院外交委員会の委員長を務めるコーカー議員は、国務長官が「とてつもなく腹立たしい立場に立たされている」、「国務長官が得るべき支援を得られていない」と擁護した。
ティラーソン長官は4日、夏の間に大統領を「間抜け」と呼び、辞任しようとしたのを副大統領に慰留されたとの報道を、異例の記者会見で否定している。
<解説> トランプ氏にとって代償は高くつくのか アンソニ・ザーカーBBC北米担当記者
ドナルド・トランプ氏はこれまでも、自分の党の関係者を攻撃してきた。しかし攻撃されたほとんどの人は、歯を食いしばって黙って耐え忍んできた。
ボブ・コーカー氏は違う。もしかすると、来年の選挙で怒れるトランプ支持者の波に対面しなくてもいいと思うと、自由になるのかもしれない。あるいは、トランプ氏が米外交を大混乱に陥れていると信じる以上、外交委員会の委員長として非難しないわけにはいかないと思ったのかもしれない。
コーカー氏の痛烈な非難に、大統領はまだ反応していない。しかしホワイトハウス関係者によると、大統領は「コーカーをこのままにしない」つもりだという。
コーカー議員は政界引退を発表したものの、上院での任期は2019年1月まで続く。それが大統領にとっての問題だ。
それまでの間、コーカー氏は強力な委員会の委員長だ。そして本会議場でも、共和党からほんの数人が造反しただけで、共和党提出の法案は否決されてしまう。
大統領は落とし前をつけるつもりかもしれないが、その代償はかなり高くつく可能性がある。