トランプ氏、英極右団体のムスリム排斥ビデオをリツイート 英首相の非難に反論

British Prime Minister Theresa May and US President Donald Trump at the White House in in Washington, DC on 27 January 2017 Image copyright Getty Images
Image caption メイ英首相は外国首脳として初めてトランプ大統領のホワイトハウスを訪れた(1月27日)

ドナルド・トランプ米大統領は29日、英極右団体「ブリテン・ファースト」の副代表がツイートしたムスリム(イスラム教徒)排斥の扇動的ビデオ3本をリツイートした。テリーザ・メイ英首相が報道官を通じてこれを非難すると、大統領は首相を名指しで反論した。

米大統領がリツイートしたビデオは、「イスラム教徒移民が松葉づえのオランダ人男性を襲った」ものだとされるビデオなど。ツイートしていたジェイダ・フランセン副代表(31)は、公の場での「脅迫的言動」で起訴されている。また、昨年6月に労働党のジョー・コックス下院議員を殺害した男は、「ブリテン・ファースト!」と叫んで犯行に及んでいた。

ただし、オランダ検察庁の報道官はBBCに、暴行容疑で逮捕された男性は「オランダで生まれ育った」人物で、移民ではないと説明した。ワシントンのオランダ大使館もツイッターで、トランプ氏にあてて「事実は大事です。この暴力行為の実行犯はオランダで生まれ育った人物です。オランダの法の下で刑罰を言い渡され、服役しました」と正している。

フランセン氏がツイートし、トランプ氏がリツイートしたもう1本のビデオには、聖母マリア像を壊す男性が映っていた。これは2013年にYouTubeに投稿されたもので、映っている男性は「レバントの土地で崇拝するのはアッラーのみ」と発言している。「レバント」とはこの場合、シリアを意味する可能性がある。3本目のビデオは2013年のエジプトで起きた暴動の映像で、アレクサンドリアで建物の上から男性が突き飛ばされる様子が映っている。事件の関係者は2015年に訴追され、男1人が処刑された。

トランプ氏のツイートについて、中東歴訪中のテリーザ・メイ英首相は報道官を通じて、「大統領がこのようなことをしたのは間違っている」と述べ、ブリテン・ファーストは「うそをばらまき、緊張の火をあおる、憎悪にまみれた主張」を展開する組織で、その言動は英国が重視する「品位と寛容と敬意」という価値観のアンチテーゼだと非難した。

さらにトランプ氏自身もツイッターで、メイ首相に異例の反論をツイート。最初は、フォロワーわずか6人の別人のアカウントに向けていたが、間もなくこれを削除し、首相のアカウントに向けてツイートし直した。大統領はそこで、「テリーザ・メイ、僕を気にするんじゃなく、英国内で起きている破壊的なイスラム過激主義テロを気にしなさい。こっちはまったく問題ないので!」と書いた。

ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は、「ビデオが本物かどうかはともかく、脅威は本物だ」と反論し、メイ首相をはじめとする各国首脳は「話し合わなくてはならない本物の脅威がある」ことを承知しているはずだと苦言した。

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トランプ氏の極右団体リツイート ホワイトハウスが擁護

米英は伝統的に「特別な関係(special relationship)」と呼ばれる友好関係にあるとされているため、両国の首脳が表立って批判し合うのは異例。トランプ氏が大統領就任後、初めてホワイトハウスを訪れた外国首脳はメイ首相だった。

サジド・ジャビド・コミュニティー・地方政府担当相は首相官邸より先に、「合衆国大統領は、私や私のような人間を憎む、おぞましい憎悪まみれの人種差別団体の視点を、支援すると表明したわけだ。それは間違っているし、私は何も言わずに受け流すつもりはない」とツイートした。ボリス・ジョンソン外相も後に、「ブリテン・ファースト」は「社会を分断する憎悪に満ちた団体」だとツイートした。

保守党重鎮議員のサー・ニコラス・ソームズは、トランプ氏は自分に大統領としての「資格がまったくない」と、ついに証明したと強く批判した。

労働党のジェレミー・コービン党首は政府の反応に先立ち、「ドナルド・トランプによる極右リツイートをこの国の政府が非難するよう期待する。リツイートはおぞましく、危険で、我々の社会を脅かすものだ」とツイートした。

複数の労働党議員は、来年に英国公式訪問が予定されるトランプ大統領への招待を撤回するようあらためて呼びかけているが、首相官邸はそのつもりはないと言明した。

Image copyright Twitter/@realDonaldTrump
Image caption 問題のビデオはトランプ氏のタイムラインで「問題のある内容が含まれるかもしれない」と警告つきで表示されていた

「ブリテン・ファースト」とは

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Image caption 英極右団体「ブリテン・ファースト」のジェイダ・フランセン副代表。ツイッター・アカウントのフォロワーは5万2000人以上

ブリテン・ファーストは2011年、白人至上主義の極右政党「英国民党(BNP)」の元党員によって結成された。「英国のイスラム化」を懸念するという主張をソーシャルメディアに連投し、注目されてきた。

欧州議会の選挙に移民反対、中絶反対などを掲げて候補を擁立してきたが、まだ議席は獲得していない。

2016年のロンドン市長選にも候補を出し、1.2%の票を得た。

実際の選挙よりもソーシャルメディアで存在感を増しており、フェイスブックでは他のほとんどの英主要政党よりはるかに多い、200万人近くがアカウントに「いいね」を押している

トランプ大統領がリツイートしたフランセン副代表は今年11月、北アイルランド・ベルファスト市庁舎前の集会で、「脅迫的、暴力的、侮蔑的言動」を使用した罪で起訴されている。12月14日にベルファスト地裁で初公判が予定されている。

「大統領は恥じ入るべきだ」

ソーシャルメディアでは大勢が、トランプ氏のリツイートに強く反発した。

「ブリテン・ファースト」と叫ぶ極右男性に妻ジョー・コックス議員を殺害されたブレンダン・コックスさんは、「トランプは自分の国内の極右の存在を正当化してきた。次はこの国でそれをやろうとしている。憎しみの拡散には、結果がともなう。大統領は自分に恥じ入るべきだ」とツイートした。

コックス氏はさらにBBCに対して、「トランプのやることを見れば、これはミスじゃない、これは戦略だと分かる。常に一貫してやっていることなので」と述べた。

「米国の極右関係者をリツイートしてきたし、これまでもユダヤ人差別的な画像を共有した。大統領選そのものを、メキシコ人を強姦犯と呼び、ムスリムの入国を禁止すると呼びかけて戦っていた。もう、認識しなくてはならないと思う(中略)この大統領は、憎悪を広める人間なのだと」

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トランプ氏ツイートは「憎しみを正当化」 殺害された英議員の夫

米市民団体「米イスラム関係評議会」は、「このような行動は、激しい反ムスリムのヘイト・サイトで見るようなものだ。合衆国大統領のツイッターで見ると思うようなものではない」、「トランプの投稿は、米国ムスリムに対する暴力を扇動するに等しい」と批判した。

米ユダヤ人団体「名誉毀損(きそん)防止同盟(ADL)」のジョナサン・グリーンブラット代表は、大統領のリツイートは「米国内外の差別主義者を奮い立たせる」だろうと批判。「非寛容な考えを主張することと、偏見に満ちたミーム(動画や画像)を広めることと、入国禁止政策のような反移民・反ムスリム政策の導入は、明確につながっている。我々はそれを、目の当たりにしてきた。私たちはムスリム・コミュニティーと共にあり、この恥ずべきメッセージを非難する全ての人と共にある」と書いた。

(英語記事 Donald Trump retweets far-right group's anti-Muslim videos / Donald Trump wrong to share far-right videos - PM)

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