重体のシリア子供避難、駆け引き材料にされる危険を国連警告

Ambulances and medical workers evacuate critically-ill patients from the besieged town of Douma, Eastern Ghouta, to Damascus, Syria December 26, 2017 Image copyright Reuters

シリア・ダマスカス郊外で政府軍に包囲されている反政府勢力地域から重病の子供たちを避難させる取り組みが進むなか、国連幹部は27日、子供たちがシリア政府と反政府勢力の駆け引き材料に使われていると指摘した。

国連シリア担当特使上級アドバイザーのヤン・エグランド氏はBBCに、反政府勢力が子供たちに避難と引き換えに拘束中の政府職員を解放すると合意したと話した。

「良い合意内容だといいが、捕虜と病気の子供を交換しようというのなら、それは悪い合意だ。病気の子供が、双方の綱引きの駆け引き材料にされてしまう。子供たちは避難する権利があり、我々は避難させる義務がある」と特使は話した。

東グータにおける最大の反政府勢力「ジャイシュ・アル・イスラム」は、政府は捕虜となっている政府関係者29人の解放と引き換えに子供たちの避難に合意したとツイートした。

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ダマスカス郊外の東グータからは26日に4人、27日に12人の重体の子供がダマスカスへ搬送された。28日にはさらに13人が退避する予定。

シリア米医学協会(SAMS)が、12人の子供の避難についてツイートした。

ただし、SAMS所属のモハマド・カトゥーブ医師はBBCに、重体患者の搬送が追い付かず子供の死亡が相次いでいると話した。

「今朝も地元スタッフが、29人の避難リストに含まれた女の子の家族を尋ねたところ、すでに数日前に死亡したと言われた」と医師は言う。

東グータの住民約40万人では2013年以来、政府軍に包囲されている。

エグランド特使は、東グータにはもはや使える医療施設はほとんど残っていないと指摘。

「シリアの戦争は色々な意味で、医療従事者に対する戦争でもある。あまりにたくさんの病院が双方で爆撃され、大勢の医師や看護師が殺された。おかげで、東グータの市民40万人に残された(医療施設・医療関係者は)ほとんどない」

東グータはシリア政府の主要同盟国ロシアおよびイランと、反政府勢力を支援するトルコから、「緊張緩和地帯」 に指定されている。しかし11月半ばに反政府勢力の攻勢に対抗して政府軍が反攻の手を強めたため、市民数十人が死亡したとされている。

Image caption 11月20日現在のシリアとイラクの勢力図。藤色がクルド人勢力地域、赤茶色が「イスラム国」、黄緑がイラク政府、青緑がシリア政府、赤紫がシリア反政府勢力の支配地域。

食料や燃料、衣料品の不足も甚だしく、厳しい寒さが住民の状況をより厳しいものにしている。

赤十字国際委員会(ICRC)は27日、重体患者4人が家族と共にダマスカスの病院に搬送されたと確認。「今後数日の間に」合計29人の避難を完了させたいと話した。

ICRC広報官のアナスタシア・イシュク氏はBBCに対して、「この避難作戦は明らかに、東グータ住民に一定の猶予を与える前向きな動きだ。特に、命にかかわる救急治療をなんとしても必要としている人にとって」と話した。

「今回の医療搬送をきっかけに、今後もさらに続くことを期待している。多くの住民が必要としているので。また、人道支援団体が支援物資と共に定期的かつ無条件で、東グータに入れるようになるのが何としても必要だ」

国連のエグランド特使は先週、11月に提出された優先医療搬送者リストに494人の名前が記載されているものの、人数は減り続けていると話した。人数が減っていくのは、搬送が進んでいるからではなく、住民が次々と死亡しているからだと特使は強調していた。

(英語記事 Syria child evacuees may be used as bargaining chips, UN warns

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