トランプ氏、元側近バノン氏は「正気失った」 政権関連本の発言で

US President Donald Trump and former White House aide Steve Bannon. Image copyright Reuters

ドナルド・トランプ米大統領の長男と複数のロシア人の接触について、元側近スティーブ・バノン氏が「売国的」と呼んだという著書の内容が明らかになり、トランプ氏は3日、バノン前首席戦略官について、解任されてから「正気を失った」と述べた。大統領選での勝利についても、選対責任者としての貢献はほとんどなかったと切り捨てた。

ジャーナリスト、マイケル・ウォルフ氏による9日発売の新著「Fire and Fury: Inside the Trump White House(炎と激怒――トランプ政権の内側)」の中で、バノン氏はドナルド・トランプ・ジュニア氏が大統領選中の2016年6月に、ヒラリー・クリントン氏に不利な情報を持つというロシア人弁護士と面会したことについて、「売国的」で「非愛国的」と表現している。著者によるインタビューでバノン氏は、ロシア当局とトランプ陣営の結託をめぐる捜査について、「連中は全国放送でドン・ジュニアを卵みたいにかち割るはずだ」と述べている。

トランプ・ジュニア氏とロシア人弁護士との会談には、トランプ氏の娘婿で、政権発足後に大統領上級顧問となったジャレッド・クシュナー氏も同席していた。

米報道によると、バノン氏はウォルフ氏に対して、選対幹部3人は、問題の会談後、「ただちに連邦捜査局(FBI)に連絡すべきだった」と話したという。

著書内のバノン氏の発言内容が3日に明らかになって間もなく、トランプ大統領は声明を発表し、「スティーブ・バノンは僕や僕の政府となんの関係もない。解任された際に、仕事を失っただけでなく、正気も失った」と反論した。

「スティーブは、すでに対立候補17人を倒して党の指名を獲得した後で、うちで働くようになったスタッフの1人だ。共和党が集めた最も優れた候補者の顔ぶれと呼ばれた17人を、僕が倒した後のことだ」とトランプ氏は書き、「僕はいとも簡単そうに勝ってみせるが、実はそれほど簡単なことじゃないと、一人になった今、スティーブは気づき始めている。我々の歴史的勝利にスティーブはほとんど何も関わっていない。僕たちが勝ったのは、この国の忘れられた人々のおかげだ」と、トランプ陣営へのバノン氏の関与はほとんどなかったと強調した。

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トランプ陣営の「アメリカ第一」の選挙スローガン推進に関わったバノン氏は、トランプ政権発足後には「首席戦略官」となり、今年8月に解任されるまでは政権の中心人物の一人とされていた。解任後は右派オンラインメディア「ブライトバート・ニュース」に戻り、「外にいるウィングマン」として政権を補佐するつもりだと述べていた。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏とバノン氏は最近では12月13日、アラバマ州の上院補選でバノン氏とトランプ氏が支援した候補が敗れた翌日に、15分ほど話をしている。

ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は、大統領がバノン氏と最後に話をしたのは、「12月初め」だと思うと記者の質問に答えている。

サンダース氏は、ウォルフ氏の著書について、「ホワイトハウスに何のアクセスも影響力もない複数の個人から聞き取った、作り事や誤解を招く話に溢れている」と批判。「下品なタブロイド的でっちあげとしか言いようがない本に参加するなど、その人がいかに悲しいほど必死になって、自分の存在意義を確保しようとしているかのあらわれだ」と、バノン氏も批判した。

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英紙タイムズによると、ウォルフ氏の著書ではほかに、トニー・ブレア元英首相が昨年2月にトランプ氏に対して、英情報機関がトランプ氏とトランプ陣営を監視していた可能性があると伝えたと書かれている。

昨年3月の時点で当時のショーン・スパイサー大統領報道官は記者団に、英情報機関がニューヨークのトランプ・タワーに対する防諜活動に関与していたかもしれないと話した。英政府通信本部(GCHQ)は「とんでもない話だ」と否定していた。

タイムズ紙は、ブレア氏がトランプ政権の中東顧問として職を求めていたと書いている。ブレア氏の広報担当はタイムズ紙に、そのような指摘は「まったくの作り事」で、ブレア氏がトランプ政権の中東特使になろうとしたことなどないと反論した。

ロバート・ムラー特別検察官が指揮するロシア疑惑捜査では、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やジョージ・パパドプロス元トランプ陣営外交顧問が、虚偽供述や捜査妨害で有罪を認め、捜査に協力している。トランプ氏はパパドプロス被告が訴追された際には、飲み物を運ぶのが仕事の「コーヒー・ボーイ」に過ぎなかったと話していた。


<解説> 避けがたい破局――アンソニー・ザーー、BBCニュース(ワシントン)

ドナルド・トランプ氏は、スティーブン・バノン氏と「ブライトバート」の保守メディア帝国の背に乗って、大統領の座になだれこんだ。そのバノン氏やブライトバート勢力と戦争を始めたトランプ氏の今後の戦いぶりが注目される。

バノン氏のコメントに、大統領は痛烈に答えた。その激しさからして、政治家トランプ氏と、トランプ氏をイデオロギー的に導いたガイド役とのつながりは、もはや燃えカスも同然だというのが分かった。しかし、トランプ氏の大量の支持者たちはどう反応するのか。何があろうとトランプ氏を支持する人たちの忠誠心を、過小評価するのは決して賢明なことではない。

トランプ氏との戦いがどうなるにせよ、バノン氏個人にとっては凄まじい大打撃だと見る必要がある。反エスタブリッシュメントな保守派大衆主義を長年推進してきたバノン氏は、トランプ政権でついに権力の中枢に自分の居場所を確保したはずだった。2017年2月には、自分の目的は実に「行政国家の脱構築だ」と公言していた。

しかしまたしても権力の座の外に追いやられたバノン氏は、古くからの敵や元仲間から集中砲火を浴びている。自分が押し上げた大統領はつい先日、企業利益を大いに推進する税制改革法案に署名した。大統領選を経て初めて関わった選挙、アラバマの上院補選では、屈辱的な敗北を味わった。

こうした一連の流れを思えば、バノン対トランプは避けがたいと同時に、激しい応酬になるしかなかったのかもしれない。


(英語記事 Ex-aide Bannon has lost his mind - Trump

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