イーロン・マスク氏のロケット「ファルコン・ヘビー」打ち上げ成功

ジョナサン・エイモスBBC科学担当編集委員

スペースX社の「ファルコン・ヘビー」の最大積載量は他のロケットの2倍以上 Image copyright Reuters
Image caption スペースX社の「ファルコン・ヘビー」の最大積載量は他のロケットの2倍以上

米起業家のイーロン・マスク氏は6日、新型ロケットの打ち上げを成功させた。マスク氏の「スペースX」社は、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから、大型ロケット「ファルコン・ヘビー」を打ち上げた。

「ファルコン・ヘビー」はスペースシャトル打ち上げ以来、最も強力なロケットで、発射台から大西洋のはるか上空に飛び立った。

マスク氏は打ち上げ前には、新型ロケット開発には困難が多く、最初の発射が成功する確率は5割しかないと失敗の可能性を懸念していた。

「発射台で大爆発が起きて、路面に車輪が落ちて転がる光景を想像していた。しかしありがたいことに、そうはならなかった」と、マスク氏は打ち上げ成功後に記者団に話した。

発射成功によって、ファルコン・ヘビーは最も高性能な打ち上げ機となった。

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Image caption ファルコン・ヘビーで宇宙に飛び出たこの自動車と人形は、火星を目指す

ファルコン・ヘビーは、2階建てのロンドンバス5台分に相当する、ペイロード(最大積載量)64トンを宇宙空間の地球の低軌道に乗せるよう設計されている。

世界でファルコン・ヘビーの次に強力なロケット「デルタIVヘビー」の2倍強の積載量だが、自分たちの費用は3分の1だとマスク氏はいう。

ただし今回の打ち上げは実験目的で、結果が不確かだったため、マスク氏は最大積載量より極めて小さく風変わりな貨物を搭載することにした。マスク氏の赤いテスラモーターズ製スポーツカーだ。

宇宙服を着たマネキンが運転席に固定され、ダッシュボードには「パニックしないで!」の文字。車載のプレイヤーからはデイビッド・ボウイの名アルバム「スペース・オディティ」が連続再生されるよう設定されていた。

Image caption 様々なロケットとスペースシャトルの最大積載量比較(単位・トン)

スポーツカーのテスラと「運転手」は、太陽を回り火星にまで届く楕円軌道に乗った。

「ファルコン・ヘビー」は原則的に、スペースX社の主力ロケット「ファルコン9」を3機つなぎ合わせたものだ。スペースXのロケットの常として、3機のブースター(ロケットの下段部)はいずれも地球に戻り、垂直着陸を試みた。

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Image caption フロリダ州のスペースコーストに戻るブースター2機

2機のブースターが、フロリダのケネディ宇宙センターからすぐ南の沖付近に戻り、ほぼ同時に着陸した。

マスク氏は「最高だった。あれほど興奮した光景は、文字通り初めてだったと思う」と話した。

3機目のブースターは数百キロメートル先のドローン船に降りる予定だったが、降下速度を緩めるための推進剤が不足したため、目標を外れて時速約500キロメートルで海面に衝突し、大破した。

この頃には「ファルコン・ヘビー」の上段部とテスラ車はすでに、火星の軌道を目指す旅を始めていた。

それには上段部のエンジンが3回、決まったタイミングで噴射する必要があった。3度目の噴射が確認されたのは、打ち上げから約6時間後だった。

マスク氏は「第3噴射成功。火星軌道を越えて小惑星帯へ飛び続けた」とツイートした。

これほど大型で強力なロケットがあれば、マスク氏とスペースXの今後は、実に興味深い可能性に満ちている。たとえば、次のような可能性が考えられる――。

  • 米情報当局や軍用に、従来よりはるかに大きい人工衛星の打ち上げ。従来の人工衛星は、現在のロケット性能によって大きさが限定されていた。
  • 大量の人工衛星の打ち上げ。例えばマスク氏は、大量の人工衛星を使って、世界中にインターネット高速通信を提供すると提案している。
  • 火星に従来より高性能の大型高いロボットを送る。あるいは木星や土星、それぞれの衛星にロボットを送り込む。
  • 巨大な宇宙望遠鏡を打ち上げる。ハッブル望遠鏡の後継機、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は来年の打ち上げだが、現在の技術ではロケット収納用に折りたたむ必要がある
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Image caption 「ファルコン・ヘビー」は原則的に、スペースX社の主力ロケット「ファルコン9」を3機つなぎ合わせたものだ

しかし、なによりマスク氏が画期的な変化をもたらすと期待しているのが、費用の安さだ。ブースターの回収と再利用によって実現した低コストを、新性能を組み合わせれば、「他の重量物運搬ロケットにとってゲームオーバーだ」と、5日に記者団に話した。

「よその会社が再利用できる飛行機を提供しているのに、1回しか使えない飛行機を売り込むようなものだ。しかもその飛行機は、目的地に着いたらパラシュートで脱出しなくてはならないし、どこかに適当に墜落して壊れてしまう。めちゃくちゃな話だが、それが今のロケット業界の現状だ」

(英語記事 Elon Musk's Falcon Heavy rocket launches successfully

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