英国人ISメンバー2人を拘束 シリアで 「ビートルズ」のあだ名

「処刑部隊」の英国人メンバー4人のうち依然として捕まっていなかったコティー容疑者(写真左)とエルシーク容疑者(同右)が今回拘束された

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「処刑部隊」の英国人メンバー4人のうち依然として捕まっていなかったコティー容疑者(写真左)とエルシーク容疑者(同右)が今回拘束された

西側ジャーナリストなどを殺害する動画を公開し、各国に衝撃を与えていた過激派組織「イスラム国」(IS)の英国人メンバー2人がクルド系シリア人勢力によって拘束されたことが、8日までに分かった。米当局が明らかにした。

今回身柄を押さえられたのは、アレクサンダ・コティー容疑者(34)とエル・シャフィー・エルシーク容疑者(29)の2人。ISの「処刑部隊」のメンバーで、当初いたロンドン出身の英国人メンバー4人のうち2人は、すでに殺害・拘束されている。

4人は英国アクセントの英語をしゃべることから、「ビートルズ」のあだ名が付けられていた。

米当局によると、「処刑部隊」は西側諸国の市民27人以上の首を切って殺害した。

「処刑部隊」のメンバー

米国務省が複数の西側諸国の市民を殺害したとする4人は、以下の通り。

  • モハメド・エムワジ容疑者:「ジハーディ・ジョン」と呼ばれ、拘束した西側市民の首を切る様子を撮影した動画に出ていた。ロンドン西部出身の同容疑者は、2015年にISが「首都」としていたシリア・ラッカでドローン(無人機)による攻撃を受け死亡した
  • エイン・デービス受刑者:ロンドン西部出身。IS幹部として活動していた罪で有罪判決を受け、昨年からトルコで受刑中。
  • アレクサンダ・コティー容疑者:同じくロンドン西部出身で、米国務省によると捕虜の拷問に関与した。ISメンバーを募る活動にも携わった。
  • エル・シャフィー・エルシーク容疑者:国務省によると、「処刑部隊」の看守として、水責めや厳しい尋問、処刑の真似、はりつけ刑などの残虐行為を行ったことで知られている。

グループのリーダーはドローン攻撃で死亡したエムワジ容疑者とされる。同容疑者はマスクをして、西側諸国を嘲笑し捕虜の首を切る様子を撮影した残酷な動画に登場していた。

撮影された犠牲者には、英国人の援助団体職員のデイビッド・ヘインズさんとアラン・ヘニングさん、米国人ジャーナリストのジェイムズ・フォーリーさんとスティーブン・ソトロフさん、米国人の援助団体職員のピーター・カッシグさんが含まれる。

容疑者たちはどのように拘束されたのか

米当局の話として米メディア各社が伝えたところによると、コティー、エルシーク両容疑者は、米国が支援する民兵組織「シリア民主軍」(SDF)によって拘束された。

一方、英外務省は個別の案件や捜査についてコメントしないと述べた。

容疑者たちの拘束を最初に報じた米紙ニューヨーク・タイムズによると、米当局は拘束の事実を公にするのを避けようとしたという。

同紙は、当局が「彼らの拘束によって得られた情報をアナリストらにさらに分析させ、イスラム国の標的が予想していない状況で急襲する準備」をしたいと考えていたと報じた。

SDF戦闘員らが米側に説明したところによると、容疑者たちは先月中旬に拘束され、指紋などの生体認証で身元が確認された。

容疑者たちの家族はBBCに対し、報道が出るまで拘束の事実を知らなかったと語った。

ISのシリアでの状況

ISの支配地域は昨年急速に縮小した。

昨年10月には、ISが「首都」としてきた北部ラッカをSDFが奪還。翌月初めには、シリア東部のデイル・アル・ズールとイラク北部のアルカイムで相次いでISが敗走した。

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ISはシリアからほぼ掃討されている

SDFは、ISとの戦闘のためクルド人とアラブ人の民兵によって組織され、シリアの主要拠点からのIS排除に大きな役割を果たした。

米国は、ISが再び台頭しないようにするため、期限を設けずにシリアで米軍のプレゼンスを維持すると表明している。

一方で、シリア北部のクルド系武装勢力が多数の戦闘員を維持していることに、国境を接するトルコが警戒を強めている。