10万頭以上のオランウータン、16年間で殺害=独英研究

ビクトリア・ギルBBC科学担当編集委員

Bornean orangutan on train track (c) Serge Wich Image copyright Serge Wich
Image caption ボルネオ島の森林はオランウータンの生態を維持できないペースで変化しているという

東南アジアのボルネオ島で、1999年から16年間でオランウータン10万頭以上が殺害されていたことが15日、ドイツなどの研究で明らかになった。研究者たちは「とてつもない数字だ」と話している。

15日付の米生物学術誌「Current Biology」に掲載された論文は、生息数減少の主な要因は依然として林業やパーム(ヤシ)油農業、鉱業や製紙業などによる森林伐採だが、森林が残る地域からもオランウータンが「消えつつある」と指摘している。

独マックス・プランク進化人類学研究所の研究者で、論文筆頭著者のマリア・ボイト博士は、このことから多くのオランウータンは単に殺されているようだと分かると言う。

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Image caption 道路や農園がボルネオの森林を細かく寸断している

ボイト博士たちは、農園の作物を荒らすからという理由で、オランウータンが狙われ報復として殺されていると指摘。この影響はこれまで、過小評価されてきたという。

研究に参加した英リバプールのジョン・ムーアズ大学のセルジュ・ウィッチ教授はBBCニュースに、「森林でこれほどの頭数が失われているとは、予想しなかった。なので、狩猟が大問題だと今回の研究で分かった」と話した。

「オランウータンが農園の端で人間と接触し、対立する場合、負けるのは常にオランウータンの方だ。人間に殺される」

「つい先週、ボルネオで撃ち殺されたオランウータンの体から、130発の銃弾が見つかるという報告があったばかりだ」

「衝撃的だし、必要のないことだ。オランウータンは農家の果物を食べるかもしれないが、危険ではない」

ウィッチ教授は、マレーシアとインドネシアの両政府にオランウータンの殺害を禁止するよう対応を求めた。

研究では、意図的な殺害だけでなく、森林伐採だけでも今後35年の間に4万5000頭が減るだろうと警告する。ボルネオの天然資源は、「持続不可能なペース」で搾取され続けているという。

持続可能な油

様々な食物で使われるパーム油の栽培は、環境破壊要因としてよく知られている。

世界自然保護基金(WWF)のエマ・ケラー博士はBBCニュースに、多用されるパーム油の供給源を持続可能なものにするよう、消費者が企業に「圧力をかける」べきだと話した。

ケラー博士は「持続可能なパーム油の円卓会議」(RSPO)と呼ばれる認証制度に言及し、「持続可能」な採取方法の定義は「常に書き換えられている」と述べた。

「今の大目標は、森林伐採の完全禁止と、泥炭土への植栽禁止だ」

2017年に発表された独立機関による審査の結果、RSPOの取り組みは「森林伐採を大幅に減らした」ものの、火事や泥炭地開墾に大きな影響を与えるには、参加する農園の行動を監視する必要があると言われた。

橋を作る

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Image caption 人工の橋を渡るオランウータン。寸断された森林の間をオランウータンが移動できるようにする橋の設置が短期的解決法だ

オランウータンの大幅減少を示す数値が発表される一方で、保護活動家たちは人間が森に作った専用の「橋」でオランウータンの生態が改善されるかもしれないと、期待を寄せている。

英チェスター動物園の対策チームは、動物園でオランウータン用にぶらんこやつり橋を作るために使う強力な貨物梱包用のひもで作った「森林キャノピー橋」を、オランウータンが実際に使っている写真を初公開した。

同動物園の保全活動担当、キャサリン・バートン氏によると、チェスター動物園はマレーシアの慈善団体「フータン」と共同でボルネオ島の各地にこうした橋をかけ、パーム油農園や道路や排水設備によって寸断されてしまった森と森をつなごうとしている。

「オランウータンが橋を使って、細分化されてしまった生態系の中を移動している様子は、本当に良い兆候だ。しかし短期的な解決にすぎない」

長期的には、森を植えなおして、オランウータンの暮らす場所を確保することだとバートン氏は言う。

しかし、ウィッチ教授が指摘するように、森林を保護するだけでは不十分なことが、独英の研究で確認された。「オランウータンを守らなくてはならない。そうしないと、見た目に立派な森があっても、そこにオランウータンはいないということになりかねない」。

(英語記事 '100,000 orangutans' killed in 16 years

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