プーチン氏、シリア・東グータで「人道的休戦」指示 1日5時間

Syrian children fill plastic containers at a water pump in Arbin in the rebel-held enclave of Eastern Ghouta on February 25, 2018. Image copyright AFP
Image caption 水を汲むシリアの子供たち(25日、東グータ)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は26日、シリア・東グータ地区で毎日5時間の「人道的休戦」を国防省に指示した。発表したロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、休戦は27日から開始すると述べた。首都ダマスカスに近い東グータの反政府勢力地区には、民間人39万3000人が閉じ込められている。シリア軍は今月に入り、ロシア軍の支援を得て激しい空爆を続けてきた。

ショイグ国防相は、民間人の避難を可能にする「人道的回廊」を設けるため、午前9時から午後2時の間の5時間、攻撃を休止すると説明した。国防省はさらに、シリアの赤新月社と共に「人道的回廊」を設置すると発表した。住民にはちらしやテキストメール、ビデオなどで情報を提供するという。

国連安全保障理事会は24日、人道援助を現地に届け、重体の傷病者の避難・搬送を可能にするため、シリア全土で30日間の停戦を求める決議を採択している。アントニオ・グテーレス国連事務総長は26日、「東グータは待てない。地上のこの地獄をいい加減、終わらせるべきだ」と強く訴えた。

しかし、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は記者団に、国連決議に基づく停戦は「紛争の全当事者が、停戦の実現方法について合意できた時に始まる」と話していた。

ラブロフ外相は、「イスラム国」(IS)やアルカイダなどのイスラム聖戦主義組織は排除すると述べた。ほかに、アフラル・アル・シャムやジャイシュ・アル・イスラムなど主要なイスラム主義反政府勢力も、「ヌスラ前線の提携組織」と呼び、排除する方針を示した。

ヌスラ戦線は、アルカイダ系の反政府武装組織で、現在は「ハイヤート・タハリール・アル・シャーム」を名乗っている。東グータでは小規模な勢力を保っている。

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爆撃を逃れて地下室に暮らす 東グータの11歳

東グータの状況は

英国を拠点にシリア情勢を監視する民間団体「シリア人権監視団」によると、東グータでは過去8日の間で560人以上が死亡した。24日の安保理決議採択以降だけで36人が死亡し、26日にはドゥーマとハラスタの町で22人が空爆や銃撃で死亡したという。

反政府勢力地区で市民支援活動を展開するボランティア団体、シリア民間防衛隊によると、ドゥーマの建物1棟では空爆で市民9人が死亡した。

一方でシリア国営シリア・アラブ通信(SANA)は、警察の話として、東グータの反政府勢力による砲撃で、首都ダマスカスの政府支配地域カッサで民間人が負傷したと伝えた。

シリア政府の医療担当者はロイター通信に、反政府勢力の砲撃で過去4日間で36人が死亡し、複数が負傷したと話した。

Image caption 東グータ地区の勢力地図(19日現在)。紫が反政府勢力、オレンジが「イスラム国」、緑がシリア政府

25日に塩素攻撃があったのか

東グータ地区のシフニヤ町で25日午後6時半ごろ、大きな爆発があった。複数の救急車運転手が、塩素のにおいがすると報告した。

反政府勢力が運営する医療サービスは、塩素を浴びた思われる呼吸困難や目のただれ、めまいなどの症状で、少なくとも18人を治療したと話している。男の赤ちゃんが1人死亡し、生後4カ月の赤ちゃん1人が人工呼吸器を必要とする状態だったという。

民間医療団体「シリア系米国人医療協会」はツイッターで、「化学物質を浴びたものと思われる症状で、女性6人と子供4人を含む患者16人を、SAMSが支援する東グータの病院で治療したことを確認する。2011年以来、シリアで化学兵器が使われたのはこれで197回目。2018年に入ってからは7回目だ」と書いた。

化学兵器使用に関する情報はいずれも、独立して確認されていない。男の子の死亡が、化学兵器によるものか、爆発によるものかもはっきりしていない。

ラブロフ外相は、塩素使用の情報は「でたらめ」で、安保理決議の実施妨害が目的の「挑発」だと批判している。

シリア政府は化学兵器の使用を一貫して否定している。しかし、国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の専門家は、2014年と2015年にかけてシリア政府軍が少なくとも3回は塩素を武器として使用したと断定している。

OPCWはさらに、昨年4月にシリア北西部の反政府勢力地域で、政府軍が神経ガス「サリン」を住民に使ったのは間違いないと強調する。ハーン・シェイフンの町では80人以上が死亡した。

<解説> ロシアの動きの意義は ―― ジェレミー・ボーウェンBBC中東編集長

もし成功すれば、人道的休戦を毎日実施するというプーチン大統領の発表は、東グータへの爆撃が今月半ばから激化して以来、苦しむ住民にとってはやっと訪れた朗報ということになる。しかし、国連安保理決議の完全実施にはならない。

安保理決議は、シリアのアサド大統領に不可欠な同盟国ロシアの拒否権行使を回避するため、内容が薄められた。

決議が求める停戦の開始予定日について合意はなく、「遅れなしに」という表現にとどまった。そのおかげでロシアは、武装反政府勢力への攻撃を続ける時間稼ぎのため、様々な条件を導入できる。

ISやアルカイダなどイスラム聖戦主義組織への攻撃は、安保理決議の対象から除外されている。しかしロシアは、ジャイシュ・アル・イスラムへの攻撃は続ける方針だ。サウジアラビアが支援するジャイシュ・アル・イスラムは、ジュネーブの和平協議にも出席しており、東グータでは圧倒的に最強の反政府勢力組織だ。ジャイシュ・アル・イスラムは、自衛権を留保しつつ、安保理決議に基づく停戦を受け入れている。

ロシアとシリアは、すべての反政府勢力をテロ組織とみなしている。

(英語記事 Syria conflict: Putin orders Eastern Ghouta 'humanitarian pause'

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