ユベール・ド・ジバンシィ氏死去 91歳、仏高級服飾デザイナー

ジバンシィ氏(右)とモデルのイマーン氏(2002年5月) Image copyright AFP/Getty Images
Image caption ジバンシィ氏(右)とモデルのイマーン氏(2002年5月)

フランスの服飾デザイナー、ユベール・ド・ジバンシィ氏が10日、死去した。91歳だった。女優のオードリー・ヘプバーンや元モナコ王妃のグレイス・ケリー、ジョン・F・ケネディ元米大統領の夫人ジャクリーン・ケネディらの衣装を多数手がけたことで知られる。

ジバンシィ氏のパートナーで元衣装デザイナーのフィリップ・ブネ氏が12日、報道を事実と認めた。

ジバンシィ社は12日、「仏オートクチュール界の主要人物で、パリらしいシックとエレガンスを半世紀以上にわたり象徴した紳士、創業者ユベール・ド・ジバンシィの訃報を悲しみとともに報告します。その逝去は大いに惜しまれることでしょう」とコメントを発表した。

ジバンシィ氏は友人やファンに対し、自分が死んだら花を送るかわりに、ユニセフ(国連児童基金)へ寄付してほしいと頼んでいたという。

仏ビジネス界の大物で、現在ジバンシィ社を傘下に収める大手高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)のベルナール・アルノー氏は、ジバンシィ氏を「1950年代のパリを、世界のファッションの中心地にしたクリエイターの1人」と呼んだ。

今年の米アカデミー賞授賞式でも、映画「ブラック・パンサー」に主演した俳優のチャドウィック・ボーズマン氏が「ジバンシィ」ブランドの服を着こなして登場。その尽きない魅力が示されたばかりだった。

ジバンシィ氏の多数の作品の中でも特に有名なのが、映画「ティファニーで朝食を」でオードリー・ヘプバーンが着た「小さな黒いドレス」だ。

「ドレスのおかげで自分が役柄らしく見えていると自信が持てて、とても助かった。(中略)おかげで、役作りは一気に楽になった。ジバンシィ氏が作る素敵でシンプルな衣装を着ると、演じる役の感覚に入り込めた」と、かつてヘプバーン氏はジバンシィ氏との関係を語っていた。

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Image caption オードリー・ヘプバーンが「ティファニーで朝食を」で着た黒いシースドレスは、エレガントなシンプルのお手本となった

デザイナーと女優の友情は約40年間続き、ジバンシィ氏はファッション史と映画史に確固たる地位を築いた。

ヘプバーンはジバンシィ氏の感性を刺激するミューズとなり、ジバンシィ氏は1957年のミュージカル映画「パリの恋人」のスーツや1966年のコメディ映画「おしゃれ泥棒」でのウールのドレスなど、数々の衣装をデザインしている。

ジバンシィ氏は貴族の出身で、第2次世界大戦後は、当時まだ無名のピエール・バルマンやクリスチャン・ディオールと共に働いた。

1952年に自らの会社を創業して独立するまで、前衛的なデザインで知られたエルザ・スキャパレッリに雇われていた。自身のブランドでは、組み合わせを色々に変えられるブラウス、スカート、ジャケット、パンツからなる「セパレーツ」のコンセプトを発表した。

身長1メートル98センチの長身でも知られたジバンシィ氏は、24歳の初コレクション発表でたちまち称賛を獲得した。

「一流の、最高の、シャンパンの1杯を連想するドレス」と、英国のファッションライターは当時、称えている。

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Image caption 2人の友情は、ヘプバーン氏が1993年に亡くなるまで、40年間続いた

ジバンシィ氏はその後すぐに紳士服の世界にも参入し、ニューヨークで成功を確たるものにした。

米国では数多くの著名人や資産家が、ジバンシィ氏の顧客となった。ジャクリーン・ケネディ大統領夫人は夫の葬儀でジバンシィ作の服を着ていたし、後にモナコ公妃となった往年の大女優、グレイス・ケリー氏も顧客の1人だった。

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Image caption ジバンシィ氏が1959年にジャクリーン・ケネディのために作ったコート

ジバンシィ氏は1970年、内装用の布地のデザインにも手を広げ、ホテルやフォード社の高級車「コンチネンタル」の内装も手がけた。

1995年の引退後は、何人もの世界的な著名デザイナーがジバンシィ社のクリエイティブを担当してきた。

その中には、ジョン・ガリアーノやアレクサンダー・マックイーンなどの才能豊かな異端児が含まれる。2005年からは、イタリア人デザイナーのリカルド・ティッシがその型破りな美的感覚をジバンシィ・ブランドに盛り込んだ。

そして2017年3月、クレア・ワイト・ケラーが、女性として初めて同ブランドのアーティスティック・ディレクターに就任した

ジバンシィは今でも、映画賞シーズンを華やかに彩る俳優たちが好んで選ぶ人気ブランドだ。今年の米アカデミー賞では、映画「ワンダー・ウーマン」に主演したガル・ガドット氏が、ジバンシィのオートクチュール・コレクションからロングドレスを選んだ。

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Image caption 米アカデミー賞授賞式では映画「ワンダー・ウーマン」に主演したガル・ガドット氏も、ジバンシィの衣装をまとった。
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Image caption 映画「ブラック・パンサー」の主演チャドウィック・ボーズマン氏も、ジバンシィのスーツで米アカデミー賞授賞式に出席した

<解説>エレガンスの時代から来た男――ヒュー・スコーフィールド BBCニュースパリ

ユベール・ド・ジバンシィ氏はフランスのデザイナーの中でも特に貴族的な存在で、気品や完璧なマナーで有名だった。ジバンシィ氏はフランスの上流家庭に生まれ、当初は法曹の道へ進むはずだった。しかし、第2次世界大戦の終わりに家族を説得し、服飾への情熱を追求する道を選んだ。

1950年代に名声を確立してから30年間、世界の名だたる美女たちの衣装を作り続けた。

美しいドレスだけでなく、「セパレーツ」の概念をファッションに導入し、女性により大きな選択の自由を与えたことでも有名だ。独自の香水を作った最初の服飾デザイナーの1人としても名高い。

1988年に自社をLVMHグループに売却し、その数年後に引退。悠々自適の生活を送っていた。本人も認めていた通り、顧客とデザイナーの個人的な関係性から服が生み出されていた「エレガンスの時代」は消えつつある。ジバンシィ氏は、その消えつつあるファッションの世界の住人だった。

(英語記事 Hubert de Givenchy, French fashion icon, dies aged 91

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