トランプ米大統領、シリア政府軍の「化学攻撃」非難 東グータ

シリア東グータ地区の反政府勢力地区ドゥーマで7日、手当てを受ける子供たちの様子とされる未確認ビデオ Image copyright Reuters
Image caption シリア東グータ地区の反政府勢力地区ドゥーマで7日、手当てを受ける子供たちの様子とされる未確認ビデオ

シリア首都ダマスカス近郊の東グータ地区で7日と8日に、政府軍による化学兵器攻撃があったと疑われている問題で、ドナルド・トランプ米大統領は8日、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領をはじめ、アサド政権を支えるロシアとイランに対して、「大きな代償を払うことになる」と強く非難した。医療関係者によると、反政府勢力が支配する東グータ地区のドゥーマで7日、数十人が死亡した。

シリアとロシアは、化学兵器攻撃はなかったと主張し、住民脱出を可能にするため反政府勢力と合意を交わした。

国連安全保障理事会は9日、東グータ危機を協議する予定。

化学兵器の使用が疑われる事態に、国際社会からは強い非難の声が上がっている。ローマ法王フランシスコ1世は、「自分を守る術のない人々や住民に、このような撲滅の道具を使うなど、正当化の余地は何一つない」と述べた。欧州連合(EU)は、「国際社会が直ちに反応」する必要があると呼びかけた。

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シリアの化学兵器疑惑 子供たちにも被害

どのような攻撃だったのか

「ホワイト・ヘルメッツ」として知られるボランティア団体「シリア民間防衛隊」が撮影したビデオでは、家屋内に複数の男女と子供たちが遺体となって横たわる様子が映っている。遺体の多くは口から白い泡を出している。

別の未確認映像には、にわか仕立ての救護所で手当てを受ける幼い子供たちが泣いている姿が収められている。

ただし、実際に何があり、具体的に何人が犠牲になったのかの第三者的な確認はまだでてきていない。

東グータの治療施設を運営する英国の慈善団体「シリア医療救援組織連合(UOSSM)」は、BBCニュースに対して、70人の死亡を確認したと話した。

米国の医療支援団体「シリア系米国人医療協会(SAMS)」によると、「化学物質を浴びた様子を示す症状」で少なくとも48人が死亡した。SAMSはさらに、現地の救急サービス情報として、500人以上が同様の症状で治療施設に運ばれたと報告している。

満員状態になったドゥーマの病院で働く医師は、BBCニュースのジョール・グンター記者に、地下に隠れていた自分の子供たちが、染み込んだガスで咳を始めたため、パニックしたと話した。

グンター記者は現地医学生から聞いた内容をツイートした。それによると、「学生は、患者のほとんどは女性や子供だと話した。6人死亡した6人のうち、1人をこの学生が手当てした。35歳くらいの男性だったという。『瞳は拡大し、口から泡を吹いていた。脈は非常にゆっくりで、咳き込むと口の中に血を吐きだした。死ぬんだと分かった』と話した」。

米国は軍事行動に出るのか

トランプ米大統領はツイッターで、アサド大統領を「けだもの」と呼んだ。

「シリアで無謀な化学攻撃があり、女性や子供を含め、大勢が死んだ。残虐行為のあった地域は封鎖され、シリア軍に包囲されているので、世界はまったく立ち入れない。プーチン大統領とロシアとイランに、けだものアサドを支援した責任がある。大きな……」

「……代償を払うことになる。医療支援と査察のため、ただちに地域を開放しろ。またしても何の理由もない人道的な大惨事だ。病んでる!」(太文字は原文で大文字による強調箇所)

2017年4月には、北西部イドリブ県ハーン・シェイフンの反政府勢力地域がサリンガス攻撃に遭い、80人以上が死亡した。国連と化学兵器禁止機関(OPCW)は合同調査の結果、シリア政府軍による攻撃だと断定した。

攻撃を受けてトランプ大統領は、シリア空軍基地に対して巡航ミサイル攻撃を命じた。

今回のドゥーマ攻撃を理由に再びシリアを空爆する可能性について聞かれた、ホワイトハウスのトム・ボサート補佐官(国土安全保障担当)は米ABCニュースに対して、「何の可能性も除外しない」と述べた。

エマニュエル・マクロン仏大統領も今年2月、もしシリアが市民に化学兵器を使うなら空爆すると警告していた。

トランプ大統領のツイートに先立ち、米国務省は攻撃の内容が確認された場合は「国際社会による即応」が必要だと述べていた。

ボリス・ジョンソン英外相は8日、「化学兵器を使用した当事者は、一切の道徳的正当性を失った。罪に問われなくてはならない」と述べ、早急な調査を呼びかけた。

シリアとロシアの反応は

シリア国営メディアは、化学兵器攻撃の報道は、東グータにおける政府軍の進軍を阻止するための「テロリスト」メディアの捏造(ねつぞう)だと批判した。

ロシア外務省は、ドゥーマでの化学兵器攻撃の報道は、シリアへの軍事介入を正当化するための情報操作だと主張した。

「何の根拠もない嘘だらけの推測は、政治取引に応じない過激反政府勢力やテロリストを守るのが目的のものだ。さらに、外部による武力行使を正当化するためのものだ」

ロシア軍は8日、ドゥーマを支配する反政府勢力「ジャイシュ・アル・イスラム(イスラム軍)」と、戦闘終結に向けた住民の部分的避難で合意した。反体制派とその家族を移送するためのバスが、町に入る様子が目撃されていた。

ロイター通信によると、合意のもとでロシア軍警察がドゥーマ町内に入り、反体制派はシリア軍に摘発されないまま残るか脱出することが認められた。

シリア国営メディアは、捕虜釈放と引き換えに「ジャイシュ・アル・イスラム」の48時間以内のドゥーマ脱出を認める合意が取り交わされたと伝えていた。

シリア軍は今年2月から、首都ダマスカス郊外の東グータに対する攻勢を強めており、反体制派にとってはドゥーマが最後の拠点となっている。

ロシアは2015年9月、シリア政府から支援を要請されたとして、シリアで軍事行動を開始した。

内戦開始から7年間で、40万人以上が死亡もしくは死亡が推定されている。シリア国民の半数以上が、家を追われた。

<解説> 試練の時――ジェイムズ・ランズデイルBBC外交担当編集委員

反政府勢力が死守しようとするドゥーマに対して、化学兵器が使用されたという情報は、関係者に厳しい選択を迫っている。

民間人は、ドゥーマに住む家族や子供たちは、今後も自分たちに襲いかかる恐怖と流血と非人道的な攻撃に、いつまで耐えられるのか。

反体制の武装派は、自分たちの闘争と抵抗は、今でも有意義だと信じているのか。シリア政府によってこれほどの代償を、自分たちも市民も払わされているなかで。

ロシアは、英国で神経剤を使ったことがこれほど国際的に非難されているなか、同盟国シリアが化学兵器を使ったらしい事態を、どこまで弁護するつもりなのか。

そして国際社会は、ハーン・シェイフンへの攻撃から1年たって繰り返された化学兵器攻撃にどう反応するのか。シリアが明らかに、国際社会の覚悟のほどを試しにきたのは明らかだ。

毎回儀礼的に繰り返される非難声明に、軍事行動は続くのだろうか。国際社会は言葉だけでなく実力で、アサド大統領が繰り返す化学兵器の使用を阻止しようとするのか。それとも、欧米はともかくもシリアのこの紛争に終わってもらいたいだけで、事態のエスカレーションは紛争を長引かせるだけだと判断するのだろうか。

(英語記事 Syria war: Trump condemns Syria for 'chemical attack' on Douma

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