ヒップホップ・ミュージカル「ハミルトン」が7冠 英演劇界のオリビエ賞

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英オリビエ賞受賞者の声 「ハミルトン」最多受賞

英演劇界の優秀作品や関係者を表彰するオリビエ賞の授賞式が8日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開かれ、大ヒット中のミュージカル「ハミルトン」が、最優秀新作ミュージカル賞など7部門で受賞した。ミュージカル作品としては、2012年に「マティルダ」が作った最多受賞に並んだ(敬称略)。

リンマヌエル・ミランダ作の「ハミルトン」は、米国建国の父のひとり、アレキサンダー・ハミルトンをヒップホップ音楽で描いた異色ミュージカル。ニューヨークで大ヒットし2016年のトニー賞で11部門受賞した後、昨年12月からロンドンでも上演が始まった。

オリビエ賞授賞式は英演劇界にとって最大の式典だが、帯状疱疹で療養中のミランダは欠席。それでも、編曲担当のアレックス・ラカモアと共に、音楽賞を受賞した。

Image copyright Matthew Murphy
Image caption 「ハミルトン」のロンドン版は昨年12月に開幕した

主人公のハミルトンと敵対するアーロン・バー役のジャイルズ・テレーラが主演男優賞を受賞し、「ハミルトン」が多数受賞したことについて「ほっとしているし、興奮して幸せ」だと話した。

複数受賞が当然視されていたものの、「とるはずだとはまったく思っていなかった」とテレーラは言い、「認められて良かった」と述べた。

さらに、「たまに特別な作品が出現して、物事を動かす。ミュージカル演劇にとどまらない影響をもつ」と、「ハミルトン」は「ウェストサイド・ストーリー」や「レ・ミゼラブル」、「レント」などの傑作に並ぶ作品だと話した。

主役ハミルトンを演じ、テレーラと並んで主演男優賞候補だったジャマエル・ウェストマンは、「ハミルトン」が「ミュージカル演劇とはこういうものという思い込みの壁を、崩している」と話した。

「この作品は、ミュージカルの可能性を再考した。ヒップホップや、もっと今の時代にあった音楽に、ほとんどシェイクスピア的とも言える言葉を使っている。演劇にたいする人の見方を変えている。だから評価されたんだ」

「ハミルトン」はほかに、英国王ジョージ3世を演じたマイケル・ジブソンが、1回の舞台を通じて合計8分間の演技で、助演男優賞を獲得した。さらに、振り付けや照明、音響デザインの各部門で受賞した。

北アイルランドの家族の喪失

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Image caption 自分の家族の体験をもとにした 「The Ferryman」で主演女優賞を得たローラ・ドネリー

北アイルランド紛争を描く、ジェズ・バターワース作の新作劇「The Ferryman」も3部門で受賞した。1981年のロンドンデリーで収穫を迎える農家の人々とアイルランド共和軍(IRA)の闘争を通じて、北アイルランドの家族の喪失を描いたこの作品は、新作戯曲賞のほか、演出のサム・メンデスと主演女優のローラ・ドネリーがそれぞれ受賞した。

ドネリーは戯曲家バターワースのパートナーでもある。ドネリーの家族の話をもとに戯曲を書いたバターワースは、新作戯曲賞を手にして、「これは彼女の物語だ。僕はジン・アンド・ドニックを飲みながら家に残って、働きに出なきゃならなかったのは彼女だ。それがどれだけ大変なことで、この受賞がどれほど意味をもつか、よく分かってる」と話した。

失踪した夫を待ち続けるケイトリンを演じたドネリーは、主演女優賞を得て、「興奮しているけれども、ショック状態だ。子供の頃からずっと憧れていたことなので、ここまでたどりついたなんて、現実のことと思えない」と喜んだ。

「The Ferryman」についてはその題材ゆえに、「きちんとやらなくてはと、これまでの仕事とは違う責任の重みを感じていた。あまりに身近な話なので」と話した。

「The Ferryman」はドネリーをはじめとするオリジナルキャストで、今年10月からブロードウェイ公演が始まる。

ブライアン・クランストンが主演男優賞

劇作の主演男優賞は、米ドラマ「ブレイキング・バッド」などで知られる米俳優ブライアン・クランストンが、「ネットワーク」で受賞した。

ナショナル・シアターで昨年11月から今年3月まで上演された「ネットワーク」で、オンエア中に問題発言を繰り返すニュースキャスターを演じたクランストンは、政府が芸術への助成を続ける国で働くことができてありがたいと述べ、「今後もそれが続くといいと思う」と期待をこめた。

舞台裏での取材に対しては、「子供たちの想像力を応援して、社会に適応して感受性豊かに育つよう子供を応援するためには、(芸術は)戦争の年表を覚えるよりもはるかに大事だ」と付け加えた。

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Image caption 劇作「ネットワーク」で主演男優賞を獲得したブライアン・クランストン

同じくナショナル・シアター製作の「エンジェルス・イン・アメリカ」は、最優秀リバイバル演劇賞を受賞。演出のマリアン・エリオットは、「誰もうまくいくと思っていなかった。巨大なものリスのような作品なので。素晴らしいことで、こんなに誇らしく思ったことはない」と喜んだ。同作品からは、デニース・ゴフが助演女優賞を受賞した。

同作品のブロードウェイ公演に出演中のゴフは授賞式を欠席したが、代読された受賞スピーチで、性的暴力を告発する「Time's Up(もう時間切れ)」運動の重要性を強調した。式典では複数の女優が、女性活動家と共に出席したり、「Time's Up」のバッジや、演劇界の男女格差解消を訴える「50/50」運動のバッジや指輪を身につけていた。

さらにナショナル・シアター製作のスティーブン・ソンドハイム作「フォリーズ」が、最優秀ミュージカル・リバイバル賞や衣装部門で受賞した。

ほかに、複数の新作が昨年注目された戯曲家ジェイムズ・グレアムが、ルーパート・マードックを描いた「INK」から、マードックを演じたバーティー・カーベルが助演男優賞を受賞。グレアムが労働党を描いたマーティン・フリーマン主演の新作「Labour of Love」は、最優秀新作喜劇賞を受賞した。

ミュージカル部門ではほかに、ボブ・ディランの音楽をフィーチャーした「Girl from the North Country」から、シャーリー・ヘンダーソンが主演女優賞、シーラ・アティムが助演女優賞を獲得した。

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Image caption プレゼンターのキューバ・グディング・ジュニア(右)に名前を呼ばれ、登壇するシャーリー・ヘンダーソン

アティムは自分の受賞に心から衝撃を受けている様子で、「ちょっとみんな、みんな、なにこれすごい!」と喜んだ。さらに、「私が生まれる前にこんなに曲を作った」ボブ・ディランに感謝した。

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Image caption シーラ・アティムは、自分に先駆けてオリビエ賞を受賞した有色人種の女性たちに感謝した

アティムはさらに、自分より先にオリビエ賞を受賞した有色人種の女性たちに感謝した。

「私にとってこれはとても、とても大事なこと。本当に、特にTime's Upや50/50運動もあるわけだし、私のような外見の女性がもっとこの壇上に上がって欲しいと願っている」

シャーリー・ヘンダーソンは、受賞するのは「クレイジー」な気分だと述べ、17年のブランクを経て舞台作品に出ることにした自分にとって、「Girl From the North Country」は「自分が本当に長いこと探し続けていたものが全て詰まっている」作品だと述べた。

先駆的な作品の上演を得意とするロンドン南部のYoung Vic劇場の芸術監督を18年間務め、昨年夏に退任したデイビッド・ランには特別功労賞が贈られた。

(英語記事 Olivier Awards 2018: Hip hop musical Hamilton dominates

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