精子と卵子以外の細胞から「合成胚」作製 オランダの科学者チーム

ミシェル・ロバーツ ヘルス編集長、BBCニュースオンライン

研究室で科学者たちにより育てられた、胚に似た構造体2つ Image copyright Nicolas Rivron
Image caption 研究室で科学者たちにより育てられた、胚に似た構造体2つ

オランダの科学者チームが、精子と卵子ではないネズミの幹細胞から「合成」胚を作製した。研究結果は5月2日、専門誌に発表された。

科学誌ネイチャー・ジャーナルに掲載されたこの画期的な幹細胞の研究は、ヒトや動物のクローンを作ることではなく、受精卵の着床という初期段階で多くの妊娠が失敗する理由を理解することを目的に行われた。

実験皿の中で作られたこの合成胚を、研究者らは生きている雌のネズミの子宮内膜に付着させた。合成胚は数日間成長した。

この過程の研究が人間の生殖医療の向上につながる可能性があると専門家は話している。

初期の流産

多くの流産が、女性が妊娠したことに気づく前にも、受精卵が子宮内膜に定着しないことで発生している。

この現象は胚の成長異常に関係する可能性が高いとされていたものの、専門家はなぜ初期の流産が発生するのか完全には理解していない。

初期の胚がどのように発達するかを研究することは、倫理的にも技術的にも注意を要する。

胚の模型を作製するのに精子や卵子ではなく幹細胞を使うことは、科学研究の要求に豊かな供給をもたらした。

Image copyright Nicolas Rivron
Image caption 合成胚を図示したもの

「大量」

幹細胞は未成熟な細胞で、生命の初期段階や成長過程で多くの異なる体の部分に変化することができる。

マーストリヒト大学技術誘発再生医療研究所(MERLN)のニコラス・リブロン博士と研究チームは、ネズミから作り出した2種類の肝細胞を混ぜ合わせ、胚に似た構造体を作製した。

顕微鏡で見ると、この構造体は、胎盤や体を作り出す役割を通常果たす同形の球体状の細胞など、本物の初期段階の胚や胚盤胞と全く同じに見える。

研究者たちは、この構造体がネズミに定着するのを観察することができた。他の科学者は研究のため幹細胞で胚を作ることはできていたものの、この観察はそれまでされたことがなかった。

リブロン博士はBBCに、「我々は現在、これらの合成胚を極めて大量に作製し、詳細に研究できるようになった。このことは、なぜいくらかの胚が定着に失敗するのかを理解し、生殖能力を補助するかもしれない薬を試験することの助けになりうる」と述べた。

リブロン氏は、人間の幹細胞で同じ結果を求める実験は計画していないとした。人間の幹細胞を用いた実験には承認が必要となる。

英フランシス・クリック研究所に所属する専門家のロビン・ラベル=バッジ教授は、この方法で人間の胚に似た構造物を生み出すことの見通しは今のところ「かなり遠い」と述べた。

「基礎研究にとっては、これは残念なことだ。正常な胚を作るために必要な、関連する細胞同士の相互作用を理解したり、胚の子宮内膜への定着の仕組みを研究するには、胚盤胞のような段階の人間の胚の無制限な供給を手に入れることが非常に有益だからだ」

「しかし、女性の体で着床させるのは違法で、英国では明確に禁じられてはいるが、着床が可能な、人間の胚と遺伝学的に同じ構造物を大量に作製するのは実行可能ではないということに、安心する人もいるだろう」

MRCロンドン医学研究所の研究チームを率い、インペリアル・コレッジ・ロンドンで名誉医学講師を務めるハリー・リース博士は、幹細胞群から初期の胚を作製する試みとしては最も成功した例だと話す。

キングズ・コレッジ・ロンドンで肝細胞を研究するダスコ・イリック博士は、「分子レベルでの着床メカニズムに光を当てることに研究者たちが初めて成功した例で、知見は不妊の一部の側面について理解を深めるのを助け、介助出産の成功率を高める可能性がある」と指摘した。

(英語記事 Scientists build 'synthetic embryos'

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