トランプ氏弁護士に「ウクライナから支払いあった」 首脳会談設定で=情報筋

ポール・ウッドBBCニュース(キエフ)

ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(左)は昨年6月、ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領と会談した Image copyright Getty Images
Image caption ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(左)は昨年6月、ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領と会談した

ドナルド・トランプ米大統領の私的顧問弁護士のマイケル・コーエン氏が、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領とトランプ氏の首脳会談を設定する報酬として、少なくとも40万ドル(約4400万円)を秘密裏に受け取っていたことが分かった。この件に深く関与したウクライナ政府の情報筋が、BBCに明らかにした。

情報筋によると、ポロシェンコ大統領の代理人が支払いの手はずを整えた。米国の法律は、外国政府の代理を務める際には登録を義務付けているが、コーエン弁護士はウクライナ政府の代理人登録をしていない。

コーエン弁護士は疑惑を否定している。

米ウクライナ首脳会談は昨年6月、ホワイトハウスで行われた。ポロシェンコ大統領が帰国した直後、ウクライナの腐敗防止局は2016年米大統領選でトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート被告(2017年10月に資金洗浄罪などで起訴)に対する調査を打ち切っている。

ポロシェンコ政権の諜報機関高官が、大統領のホワイトハウス訪問前に何があったのかを説明した。

この高官によると、ウクライナ政府の正規ロビイストやワシントンのウクライナ大使館では、十分な「首脳会談」の場が用意できなかったため、コーエン氏が起用された。ポロシェンコ氏とトランプ氏がただ単に一緒に写真を撮るだけではない、「会談した」と言えるような状況を確保する必要があった。

高官によると、ポロシェンコ氏は、トランプ氏に接触するための裏ルートが必要だと判断し、元側近に実現するよう指示した。側近は、忠誠心の高いウクライナの国会議員に助けを求めた。

国会議員は同様に、米ニューヨーク州のユダヤ系慈善団体「チャバド・オブ・ポート・ワシントン」に所属する個人的な知り合いを頼った(同団体の広報担当はBBCに、自分たちの関係者は関与していないと明確に否定している)。

Image copyright Getty Images
Image caption コーエン弁護士(中央)は米国内で刑事捜査の対象になっている

こうした人から人へのリレーが最終的に、トランプ氏の弁護士で信頼の厚い仲介者、マイケル・コーエン氏につながった。コーエン氏は40万ドルを受け取ったという。

トランプ氏がこの支払いを知っていたという情報はない。

ウクライナ政府の別の情報筋も同じ内容を確認した。ただし、この人物によるとコーエン氏に支払われた金額の合計は60万ドルだという。

コーエン氏の資産状況を明らかにした米国人弁護士マイケル・アベナッティ氏も、ウクライナからの支払い情報を裏付ける内容を公表している。アベナッティ弁護士は、トランプ大統領との不倫関係を主張して法的手続きを取っているポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏の代理人。

アベナッティ弁護士によると、コーエン氏の銀行が米財務省に提出した「疑わしい取引報告」(不正取引や違法取引が疑われる場合に金融機関が作成し提出する報告書)に、コーエン氏が「ウクライナの利害関係者」から金銭を受け取ったことが記載されている。


<おすすめ記事>

ポロシェンコ大統領のため裏ルートを開拓したとされるウクライナ人2人も、コーエン氏と同様に疑惑を否定した。

ウクライナ諜報機関の高官によると、元犯罪組織の構成員で有罪判決を受けたことのあるフェリックス・セイター氏が、コーエン氏を援助した。ロシア出身のセイター氏は不動産開発にも携わり、トランプ氏のビジネスパートナーだったこともある。セイター氏の弁護士は疑惑を否定した。

ウクライナ大統領府は当初コメントを拒否していたが、現地ジャーナリストに回答を求められ、一連の疑惑を「あからさまな嘘と中傷でフェイクだ」とする声明を発表した。

昨年6月に広く報道されたように、ポロシェンコ氏はワシントンに向かう機内でさえ、トランプ氏とどれだけ会えるのか分からない状態だった。

ホワイトハウスの日程表には、ポロシェンコ氏はトランプ氏が職員と会議中に大統領執務室へ「立ち寄る」予定があるとしか、書かれていなかった。

この予定は公式ルートを通じて合意されたものだが、ウクライナ高官によると、わずか数分の短い会話や握手だけではポロシェンコ氏の顔が立たないため、それ以上のものを確保するため、コーエン氏に口利き代が支払われた。しかし、会談実現のための交渉は、訪問当日の早朝まで続いた。

自分にはできそうにないことをできると言って、コーエン氏は「数十万ドル」を受け取ったと、ウクライナ側は怒っていた。消息筋の高官はこう話す。

ポロシェンコ大統領は自分が恥をかかされるのかどうか、会談の直前まで分からずにいた。

「ポロシェンコ氏の側近は、(コーエン氏との)一連のやりとりがあまりに薄汚いと、ショックを受けていた」と消息筋は話す。

ポロシェンコ氏はトランプ氏と会おうと必死だった。2016年米大統領選での出来事のせいだった。

Image copyright Reuters
Image caption 2016年米大統領選でトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート被告は、潔白を主張している

2016年8月、米紙ニューヨーク・タイムズはトランプ陣営のマナフォート選対本部長がウクライナの親ロシア勢力から数百万ドルを得ていたと示す書類を公表した。親ロシアのウクライナ政党「地域党」が関与した、「黒い帳簿」の1ページだ。

地域党はマナフォート被告がウクライナで政治コンサルティング会社を経営していた当時、同氏を起用していた。

記事で紹介された帳簿の出所は、マナフォート被告を調べていたウクライナの国立腐敗防止局のようだった。

この記事が理由で、マナフォート被告は選対本部長を辞任するしかなかった。

ウクライナの複数情報筋によると、帳簿のリークを認めたのはポロシェンコ大統領で、ヒラリー・クリントン氏の勝利を確信していたからだという。

もし事実ならば、それはとんでもない間違いだった。ウクライナは米大統領選で敗北する候補を支援していたのだ。情報漏えいの経緯はどうであれ、帳簿の報道は最終的に勝ったトランプ氏にとって痛手となった。

ウクライナは当時も今も、ロシアやロシアが背後にいる分離主義者と戦争状態にある。新しい米大統領を敵に回していいはずがなかった。

だからこそ、ホワイトハウスの大統領執務室で満面の笑みを浮かべ、トランプ大統領を称賛していた時のポロシェンコ大統領は、ホッとしている様子だったのだ。

ポロシェンコ氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領より先にトランプ大統領に会ったと自慢した。ポロシェンコ氏は会談を「中身のある訪問」と呼び、ホワイトハウスの北玄関前で大喜びの記者会見を開いた。

ポロシェンコ氏がキエフに帰国した1週間後、ウクライナの国立腐敗防止局はマナフォート氏の調査を打ち切ったと発表した。

発表の場で当局者は私に、マナフォート被告は金銭の受け取りを認める「黒い帳簿」に署名していないからだと説明した。さらに、いずれにしてもマナフォート被告は米国人で、腐敗防止局は国内法に基づき、ウクライナ人しか調査できないのだと続けた。


マナフォート被告に対する米司法当局の訴追内容

  • 米国に反する共謀、マネーロンダリングの共謀、海外資産の公開義務不履行。いずれもマナフォート被告のウクライナでの仕事に関連し、ロバート・ムラー米特別検察官が2017年10月に提訴した。マナフォート被告は無罪を主張
  • 米バージニア州での税金詐欺と銀行詐欺も、2018年2月にムラー氏が提訴。こちらについても、マナフォート被告は否認

ウクライナはマナフォート被告の調査を完全に終えたわけではなかった。資料は腐敗防止局から検察庁に渡り、そこで放置された。

担当検察官のセリー・ホルバチュク氏はキエフで先週、「マナフォート捜査を中止するよう直接的な指示があったことはないが、捜査の進み方からして、我々の上司が妨害しようとしているのは明らかだ」と私に語った。

Image copyright Getty Images
Image caption ウクライナのキエフでは今年に入ってもロシアに抗議する集会が続く

消息筋の誰も、トランプ氏がホワイトハウスでポロシェンコ氏に対して、マナフォート被告への調査打ち切りを要請したとは言っていない。しかし、もし裏ルートがあったのなら、コーエン氏はそれを使って、ウクライナ側に米国側の期待を伝えたのだろうか。

もしかしたら、その必要はなかったかもしれない。

ウクライナ政府関係者によると、ポロシェンコ氏はトランプ氏に「ある贈り物」をしたのだという。つまりウクライナは、大統領選でトランプ陣営がロシアと「共謀」したかどうかについて、米当局の捜査にこれ以上の証拠を提供しないという保証だ。

そうしなければ「トランプ氏の顔につばを吐くようなものだ」と、ポロシェンコ氏は十分承知していたと、別の消息筋も話す。

欧米情報機関関係者がまとめた報告書によると、ポロシェンコ氏のスタッフは自分たちがトランプ氏と「不可侵条約」を締結したと認識しているのだという。

「情報を知り得る立場にある」ウクライナ政府高官の話として、この報告書は一連の出来事を次のように書いている――。

  • トランプ氏が大統領に選ばれるとすぐ、ウクライナは「自発的に」マナフォート被告の調査を中止した。
  • 米政府との調整役は国立腐敗防止局から政権内の側近高官に代わった。
  • ポロシェンコ氏はワシントンから帰国した後、2017年8月か9月に、マナフォート被告を調べている米機関との協力を完全に終了すると決定した。ただし、2017年11月まで、この結締の実行を支持しなかった。
  • 米政府がこの命令を知ったのは、ポロシェンコ氏の側近高官がムラー氏や米中央情報局(CIA)長官に会うために2011年11月と12月に予定されていた訪米が中止になった時だった。
  • ポロシェンコ氏とトランプ氏の間に「相互理解」が成立しているため、ウクライナ米国産石炭の輸入に合意し、米国製ディーゼル列車購入の10億ドル規模の契約に署名した。どちらも、ポロシェンコ氏が米国の支援を金で買ったことの表れとしてしか、理解できない。
  • トランプ政権は3月、対戦車ミサイル「ジャベリン」210発をウクライナに売却すると発表した。象徴的な意味合いの強い取引だった。

オバマ前政権の当時でさえ、米国はウクライナに武器を売らなかった。ウクライナ政府内では有名な元政府関係者は私に、マナフォート調査のてんまつは気に入らないが、ウクライナは国として生き延びるために戦っていたのだと話した。

この人物は「私は法の支配を望むが、同時に私は愛国者でもある」と述べた。

さらにこの人物は、かつての部下とは連絡を取り合っており、「コーエンの裏ルート」について詳細を多く聞いたという。

Image copyright Getty Images
Image caption 2016年、ドナルド・トランプ氏に会うため米ニューヨークのトランプ・タワーを訪れるマイケル・コーエン氏

この元高官は、マナフォート被告をめぐり不正取引があったとウクライナ国民が信じるようになれば、「このせいで米国への支持は駄目になるかもしれない」と語った。

ウクライナの情報機関ウクライナ保安庁(SBU)は、マナフォート被告について独自の(秘密)報告書を作成した。

この報告書によると、「黒い帳簿」は1つではなく3つあり、公表されているより数百万ドル多い額がウクライナから支払われたという。マナフォー被告は全ての不正を否定している。

この情報は、報告書を読んだウクライナ警察の幹部級の人物が、私に知らせてくれた。SBUの報告書は米国には渡っていないという。

米国取材:スザンヌ・キアンプール

(英語記事 Trump lawyer 'paid by Ukraine' to arrange White House talks

この話題についてさらに読む