米アップル、フェイスブックのウェブ追跡ツールを妨害へ

A man takes a photo before the start of Apple"s Worldwide Developer Conference (WWDC) at the San Jose Convention Centerin San Jose, California on June 4, 2018. Image copyright AFP

米アップルは4日、米カリフォルニア州サンノゼで開発者向け年次会議「ワールドワイド・ディベロッパーズ・カンファレンス(WWDC)」を開催した。アップルは、スマートフォン「iPhone」やタブレット「iPad」向けの基本ソフト「iOS」と同社製パーソナルコンピュータ「Mac」向け基本ソフト「Mac OS」の次期バージョンで、フェイスブックが用いているウェブ利用者の自動追跡ツールを妨害する予定だと明らかにした。

「我々はあれ(追跡ツール)を遮断する」。アップルのソフトウェアチーフ、クレイグ・フェデリーニ氏は会議でそう宣言した。

フェデリーニ氏は、フェイスブックに利用者のウェブ上での行動を監視を許可する前に、利用者自身の承認を求める機能を、アップル社開発のウェブブラウザ「Safari」に組み込むとも付け加えた。

この措置はアップルとフェイスブック間の緊張を高める可能性が高い。

アップルのティム・クックCEOは以前から、フェイスブックの施策を「プライバシーの侵害」だとしてきた。フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏は後にこの意見を「軽薄だ」と非難した

フェデリーニ氏はWWDCで、フェイスブックは人々が気づかないかもしれないやり方で人を監視し続けていると述べた。

「いいねボタン、シェアボタン、コメント欄。これらは全て見られている」

「クリックしたかしないかにかかわらず、結局それらはあなたを追跡するのに使われる可能性がある」

フェデリーニ氏は、「あなたはフェイスブックを表示中、Facebook.comにクッキー(ブラウザに保存された利用情報ファイル)や使用可能なデータを使うことを許可しますか?」とたずねる警告文をスクリーンに表示させ、「あなたは自分の情報を個人的なものにとどめておくよう決められるようになる」と語った。

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Image caption アップルは同社主催のイベントで、フェイスブックの名前を出して機能を説明した

サイバーセキュリティの専門家ケビン・ボーモント氏は、アップルが導入する措置を称賛する。同氏は、「アップルはブラウザの動作の核心部分を変更している。より良いプライバシー保護を可能にする、驚くほど大きな変更だ」と述べた。

「企業がプライバシーに関して行う変更は大体が小さく漸進的で、市場を大きく揺るがすことはない。それに対しアップルは、ウェブサイト上で追跡機能が有効にされる際に利用者が確認できるようにした。実際に視覚的に分かるようにしたのだ。新たな地平を開く試みだ」

ボーモント氏は、大量の警告文を表示させようというアップルの試みは、利用者にとってわずらわしいものになる危険性もあると指摘する。

「もしかすると、アップルは利用者が自らの機器を追跡する許可を繰り返し与えるよりも、ウェブサイトが追跡を抑制する方に賭けているのではないか」と同氏は付け加えた。

アップルは、MacOSの次期バージョン「Mojave」では、広告主がクッキーを消去した利用者を追跡しようとする「フィンガープリンティング」と呼ばれる技術に対抗するとも発表した。

この手法は、フォントやプラグインなど、他の詳細設定と共にインストールされるファイルを使ってコンピューターを識別する。

フィンガープリンティングに対応するため、アップルはより少ない接続元のコンピューターに関する詳細情報しか持たないウェブページを提示した。

「結果として、あなたのMacと他の皆のMacとの見分けがよりつきづらくなるので、データ会社にとってはあなたの機器を個別に識別するのが劇的に難しくなる」とフェデリーニ氏は説明した。

シンクタンク「テックピニオンズ」のベン・ベイジャリン氏はツイッターに、「今日のWWDCでの主要な点。それは、アップルが広告ビジネスモデルの無料サービスを本当に嫌っているということだ」と投稿した。

音声アシスタント「Siri」の強化

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Image caption アップルのティム・クックCEOは、2000万人の開発者がアップル製品のためのソフトウェア開発に従事していると述べた

アップルは、仮想音声アシスタント「Siri」も、サードパーティー・アプリ(アップルでない第三者企業が製作したアプリ)を利用者が機器を手に持っていなくても操作できるようにする見直しを行った。

新たなショートカット機能では、機器の所有者は自分が決めた言葉でコンピューターへの異なる命令に設定できるようになる。

これに加え、一つの命令、たとえば「家に戻る」という命令で、複数の動作を実行するよう設定することもできる。

アップルはスマートアシスタントを最も早く提供したテクノロジー企業の一つだったが、Siriはここ数年、競合サービスに遅れをとっていると広くみなされている。

米グーグルが提供する基本ソフト「アンドロイド」は、同社提供の音声アシスタント「グーグル・アシスタント」の機能を最大限に発揮するため、個人情報の共有を利用者に求める。Siriの新機能は、個人情報の共有のようなことを求めずに性能を拡張する試みとなる。

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Image caption 利用者はさまざまな機能のサードパーティー・アプリを使うのに自分で決めた指示を設定できるようになる

コンサルティング会社カナリーズのアナリスト、ベン・スタントン氏は、「Siriのような音声アシスタントは重要だ。なぜなら、音声アシスタントは、他のサービスを呼び出す手段になるからだ」と指摘した。

「タクシーを予約したり、食べ物を注文したり、ソーシャルメディアを利用したりを考えると、音声は最終的に現在のアプリストアをひっくり返すような潜在性を持つ」

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Image caption 親は、子供のアプリ使用時間をアプリ別に確認できるようになる

「それは大きな可能性であり、音声アシスタントに大量の資金が投資されている理由でもある」

Siriの新機能は、アップルが昨年買収した業務自動化ツール「Workflow」でも利用可能になる。

iOSの次期バージョン「iOS 12」への主要な機能追加としてもう一つ発表されたのが「Time Limit」だ。この機能は利用者に、アプリごとに適切な使用時間をあらかじめ設定し、制限時間に達すると画面全体に警告が表示される。

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Image caption アップルはiOS12が画面の利用時間を減少させる手法を説明するウェブページにフェイスブックのサービス名を登場させて強調した

大人は制限時間を延長できる。また、子供が制限時間を延長しようとするのを大人が防ぐこともできる。

米ブルームバーグのブラッド・ストーン記者は、「アップルの新しい親向け監視ツールは素晴らしい。これについて子供たちと絶え間ない戦いを始めるのが待ち切れない」とツイートした。

子供がそれぞれのアプリをどれくらいの時間使っているのかの分析結果を見たり、1日のうち特定の時間帯はスマートフォンやアプリを使用不能にしたり、未成年がアクセス可能なコンテンツの種類を制限したりすることも、新機能によって親はできるようになる。

テクノロジーコンサルティング会社ストラテジー・アナリティクスのニール・モウストン氏は、「人々がジャンクフードを食べすぎなのを分かっていても食べ続けるのをほとんど同じように、人はスマートフォンに時間を浪費してはいけないと分かっているけども、変わらず浪費を続けている」と語る。

「なので、機器メーカーとアプリの提供者は、消費者が製品やサービスの中毒にならないようにする責任がある」

グーグルは先月、類似するツールを同社主催の開発者会議「Google I/O」で公開した。

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Image caption 利用者は異なる機器で拡張現実の体験を共有できるようになる。デモはレゴで作った模型を用いて行われた

iOS 12に関する他の発表は以下の通り――。

  • 機種の所有者に似せて作ることができる動く絵文字「ミーモジ」が追加。韓国のサムスンが販売するスマートフォン「Galaxy S9」に搭載された拡張現実(AR)絵文字機能と非常に似ている
  • ビデオ通話のFacetimeにグループ会話機能追加。最大で32人が1つの音声通話もしくはビデオ通話に参加できる
  • AR内での経験共有機能。複数の機種で同時に、現実世界上に映像が混ざっている様子を、異なる視点から見ることができる
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Image caption 数十人の人々が同時に、アプリ「フェイスタイム」による動画チャットに参加できるようになった。アニメ化された顔の「エモジ」での参加も可能だ

アップル社が提供するスマートウォッチ「Apple Watch」向けの基本ソフト「Watch OS」の次期バージョンにも、新機能が追加されるという。

新機能には、運動を始めたら自動的に検知する機能も含まれる。この機能により、もし利用者がスタートボタンを押すのを何分間か忘れていても、行った全ての運動を記録できる。

アップルはワンプッシュで通話が可能になるApple Watch向けアプリ「ウォーキー・トーキー」の公開も約束した。このアプリでは、2人のユーザーが4Gもしくはwi-fi回線で通話できる。

技術コンサルティング会社CCSインサイトのアナリスト、ベン・ウッド氏はツイッターで、「Apple Watch向けアプリのウォーキー・トーキーは、売り上げの漸増、特に家族に対する販売を促進させる素晴らしい手段だ」と述べた。

このアプリが最初に発表されたのは2014年9月だったが、今までは忘れられていた。

スマートテレビ「Apple TV」にも、以前から予告された機能が追加されると発表された。ドルビー・アトモス機能は、Apple TVと互換性のあるオーディオ機器で、天井に音を反射させて改善された音響を提供する。

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Image caption アップルは、新たなダークモード(黒基調の画面モード)は画像を「ポップ」に見せる助けになるとした

Mac OSの次期バージョンでは、新たなダーク(暗色)モードも使用可能になる。黒い色が好きな人向けの機能だ。

「何人かの人は、ただかっこいいからという理由でダークモードに設定するだろう。絵文字も素晴らしく見える」とフェデリーニ氏は語った。

コンサルティング会社クリエイティブ・ストラテジーズのカロリナ・ミラネージ氏は「Macのダークモードは飛行機の上やベッドの中で遅くに仕事をするときに良い。哀れな人生だって分かってますけど!」とツイートした。

デザイナーのイーライ・シフ氏はツイッターに「予測:43人のデザイナーが既に、ダークモードがいかに革命的かについての記事を書いている(現実には、ダークモードは不必要な複雑性を増しているし、アップル製品のユーザーインターフェースはどれもまぶしいくらいの白だからというのが唯一の存在意義なのだが)」と投稿した。

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<解説>デイブ・リー BBC北米テクノロジー担当記者

アップルの、利用者がインターネット上を回遊する際のデータ追跡を妨害する試みは、利益を生む上で個人情報に依存している企業に真の影響を与えるかもしれない。

そしてもちろん、アップルがすることは、他社も頻繁に追従する。なので、今回の発表が流行を作るとすれば、フェイスブックには悩みの種になるかもしれない。

新たな機能を紹介するデモ全てで、利用者が止めたい、あるいは少なくとも制限したいと望むものの例としてフェイスブックとインスタグラムが使われていた。2つともフェイスブック社が所有しているサービスだ。

現在の疑問は、フェイスブックや他の広告テクノロジー企業がアップルを出し抜くことを狙って、利用者のインターネット上での行動を追跡する新たな方法を見つけようととするのかどうかだ。

(英語記事 Apple jams Facebook's web-tracking tools

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