FBI前長官は「規範を逸脱」 米司法省が報告書発表

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Image caption ジェイムズ・コーミー氏

米司法省は14日、昨年5月に電撃解任されたジェイムズ・コーミー前連邦捜査局(FBI)長官についての捜査報告書を発表した。コーミー氏は「不従順」だったが、政治的な偏りはなかったとしている。

マイケル・ホロウィッツ監察官は、コーミー氏が2016年の大統領選で民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の私用メール問題の捜査で「FBIと司法省の規範を大きく逸脱していたと述べた。

クリントン氏は、大統領選に敗退した理由にコーミー氏の捜査があったとしている。

報告書ではまた、コーミー氏がFBIの職務で私用メールを使っていたことが明らかになった。

FBIのクリストファー・レイ長官は報告書の内容を受け入れるとした一方、FBIの政治的な偏りや組織としての正当性の疑義は指摘されていないと述べた。

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報告書でホロウィッツ監察官は、コーミー氏が大統領選の1週間前にクリントン氏の私用メール問題の捜査を始めたと公表したことを批判。透明性確保のためとするコーミー氏の主張を退けた。

同監察官は、コーミー氏の決定は政治的な偏りによるものではないものの、「FBIと司法省の規範から明らかに逸脱した結果であり、司法を公正に扱う両機関に対する認識に悪影響を与えた」と述べている。

500ページにわたる報告書ではこのほか、コーミー氏とロレッタ・リンチ前司法長官の間に「直接的、間接的なコミュニケーションの欠如」があったと指摘した。

報告書はさらに、FBI職員2人のメールのやりとりにも言及した。この2人は後に、ロバート・ムラー特別検察官による2016年米大統領選のロシア関与疑惑を捜査に関わっていた。

この2人は大統領選の際、トランプ氏が大統領になる可能性について話し合っていた際、「いやいや、彼はならない。我々が止める」と書いていた。

報告書はこのやり取りが「偏った認識の表れというだけでなく、より深刻なことに、大統領候補の当選の見通しに、何らかの公的な動きで影響を与えようとしていたことを示している」と述べた。

共和党はこのやりとりを理由に、FBIのトランプ大統領に対する捜査は偏っていると批判している。

レイFBI長官は、この報告書で明らかになった不祥事について、職員は責任をとる必要があると話した。

コーミー氏の私用メール

コーミー氏にとって都合が悪いのは、同氏自身がFBIの職務に私用メールを使っていたことが発覚したことだろう。

これは、コーミー氏がクリントン氏の私用メール問題を捜査していた間にも行われていた。コーミー氏はヒラリー氏のこの行いを「非常にうかつ」だとしていた。

コーミー氏は自身が私用メールを使っていたことについて調査員に「大丈夫だろうと思っていた」と述べていた。

同氏は、私用メールでは機密ではない情報だけを扱い、演説や声明など最終的には公表される内容のやり取りに使っていたとしている。

しかしホロウィッツ監察官は、司法省の規範と「一致しない」としている。

クリントン氏この件について、ツイッターに「私のメールはどうなのか」と皮肉を書いている。

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Image caption コーミー氏は先に、回顧録「A Higher Loyalty: Truth, Lies & Leadership(より高い忠誠――真実と嘘とリーダーシップ)」を出版した

コーミー氏の反応は?

コーミー氏はツイッターとニューヨーク・タイムズへの寄稿で、クリントン氏の捜査をめぐる自身の判断を後悔していないと述べた。

ツイッターでは、「私は司法省の監察局を尊重しており、それがこの調査をお願いした理由だ。結論は、いくつか合意できない部分はあるものの、理にかなっている。善意の人間は、前例のない状況でも違った見方ができる。FBI長官が今後、同じようなことに直面しないことを祈る。監察局の尽力に感謝する」とつづった。

リンチ前長官も声明を発表したが、自身に向けられた批判には触れず、報告書がいかに同氏の「法の支配への忠誠」を認めてくれたかに言及するにとどまった。

一方トランプ大統領はツイッターで、ロシアとの共謀疑惑を「いんちき」で「ごみ」を批判した。

「北朝鮮と素晴らしい結果を残したシンガポールから帰って、悲しいことに魔女狩りについて考える作業に戻らなければならない。うその罪状には共謀も妨害もなかったことを忘れずにいながら」

「民主党はロシアとの共謀といういんちきの罪をでっち上げて、さも本物のように見せるために大金を使い、機密情報を違法にたれ流して(コーミー)、特別検察官が捜査するように仕向けた。そしてこのごみの山が偽ニュースの中で生き生きとなるよう共謀したんだ!」


<解説>党派争いの火に油――アンソニー・ザーカー BBCニュース

ジェイムズ・コーミー氏は、ヒラリー・クリントン氏の私用メールサーバー問題への捜査でFBIの規範から逸脱した。

これがニュースだとは言い切れない。実際のところ、民主党も共和党も、理由こそ違えど同意することなのだ。

今回、司法省の監察官が論争に加わり、クリントン氏の不適切な機密情報の扱いをコーミー氏が起訴しないかったのは妥当だとしつつも、そのことを公にしたのは不適切だったと指摘した。

それだけではない。大統領選の直前にコーミー氏が書簡を議会に送ったのは「深刻な判断間違い」だったと述べた。

クリントン氏を支持する人々はこれに大きくうなづくだろう。

しかし、ことを複雑にしているのは、監察官はFBI内に存在する反トランプの空気を証明するような内容を暴露したことだ。

監察官はクリントン氏に対する捜査には政治的偏りはなかったと結論付けたが、トランプ陣営とロシアのつながりをめぐる疑惑への捜査に影響を及ぼすことは、監察官の任務ではなかった。

トランプ大統領や大統領の支持者たちが、FBIのピーター・ストロザック氏のメールに、トランプ氏の当選を「阻止する」と書かれていたのを盛んに強調し、大統領選の終盤1カ月でクリントン氏よりもトランプ氏への捜査を優先するという偏りがあったのを今回の報告書が示した、と言うだろう。

最終的には、監察官の報告書は党派争いの火に油を注ぐ結果になるだろう。そして、ロバート・ムラー特別検察官が現在するめる捜査に火が燃え移らないにするのは至難の業になるだろう。


(英語記事 Comey broke FBI protocol - watchdog

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