引き離された米移民家族の再会期限が延長 乳幼児の裁判準備に時間必要と

リトゥ・プラサド BBCニュース

手続きを待つ米テキサス州マカレンの移民家族 Image copyright EPA
Image caption 手続きを待つ米テキサス州マカレンの移民家族

米連邦裁判所は9日、ドナルド・トランプ米大統領政権に対し、親と引き離された5歳以下の移民の子供と家族との再会期限を延長する決定を下した。

当初の期限だった10日までに、子供102人のうち半分以上が親の元に戻るかもしれないと政府の弁護士は話していた。決定はこの発言のあとに下された。

親が違法に国境をわたったとして訴追され、移民の子供2300人以上が両親から引き離されている。

移民の親たちは、中米での貧困やギャングによる暴力から逃れてきたと語っている。

米自由人権協会(ACLU)は、政府の保護下にある年齢が5歳より下の移民の子供102人のリストを確認し、7月10日の期限までに「親と再会できるのは半分以下の可能性が高いと思われる」と話した。

しかし、米司法省のサラ・ファビアン弁護士はサンディエゴ連邦裁判所で9日にあった審理で、子供のうち54人は10日までに親の元へ戻れるだろうと述べた。

同裁判所のダナ・サブロー判事は審理で、いくつかの事案で、再開に向けて「追加の時間が必要になる」ことに同意した。

移民担当当局は、移民家族の再会やこれからの予定について、ほとんど情報を明らかにしていない。

移民側の弁護士は、乳幼児の移民が両親が拘束されているために1人での裁判出廷を強制され、審理の間、裁判所の机によじ登っていると話した。

現地で起きていること

米アリゾナ州で拘束された移民の家族に法的支援と社会的支援を提供する非営利団体「フローレンス・プロジェクト」のパメラ・フロリアン弁護士はBBCに対し、家族を引き離す政策が、移民制度に入ってくる「幼い子供の数の大幅な増加」を引き起こしていると話した。

「今や我々は幼児も、赤ちゃんも相手にしている」とフロリアン弁護士は話す。

米政府は先週、以下の情報を公開した――。

  • 子供16人が両親との照合ができていない
  • 親19人が既に米国内に解放された
  • 米移民税関捜査局(ICE)により46人の親が保護観察を受けている
  • 親2人が解放に不適当だと判断された

自分が置かれている状況をしっかりと説明できない幼い子供が、法的手続きに1人で向かわせられているとして、移民支援に取り組む弁護士はツイッターに子供の代理人を務めている経験を共有している。

ローラ・バレラ弁護士は、「私の5歳の顧客は、どの国から来たのかを私に伝えられない。我々はこの顧客の裁判に向けた準備を、ギャングのメンバーが学校の外で待っているかもしれないという絵をクレヨンで描いて行っている。顧客は時々、そんな絵ではなくてアイスクリームのコーンやハートを描きたいと望む。この顧客は本国送還処分の手続きに1人で臨んでいる」とツイートした。

メイラ・サリナス弁護士はバレラ弁護士のツイートを引用し、「この書き込みは、顧客にどこから来たのか聞いて、顧客が(何も無い空間を指差し)『ここ』と答えた時のことを思い出させる。顧客は5歳だった」と投稿した。

フローレンス・プロジェクトの会員、マイテ・ガルシア弁護士は現在、メキシコから来た4歳と6歳の移民の代理人を務めている。2人の母親は保護観察下に置かれ、移民としての受け入れに向けた審理を待っている。

6歳の移民は目が見えないが、ガルシア弁護士に協力している。弟がしゃべれなくなっているためだ。ガルシア氏によるとこの4歳の移民がしゃべれなくなっている「原因の一部は、精神的に傷ついたからだ」という。

「何度も、何度も面会を重ね、顧客はついに自分が本国送還の危機にあることを理解し、今、帰国にこれまでにないほどの恐怖を見せている」

「顧客は、母国での暴力から逃れてきたと私に打ち明けることが出来た。そして、戻りたくないと望んでいる。顧客は、顧客自身の言葉で言うと『悪いことが起きている』のを恐れているのだ」

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Image caption 移民家族はテキサス州の別の移民収容施設に移されている

非営利団体「移民相談サービス(ICS)」に所属する米オレゴン州の弁護士、リサ・ルセイジ氏は、子供たちはしばしば、弁護士がどんな存在かも知らないことがあると明かす。

「幼い子供はよく、あたりをはい回ったり、ペンで遊んだりすることがある」とルセイジ弁護士はBBCに対し自分の裁判での経験を話した。

「精神的に傷ついていない5歳の子供でも、常に自分の住所や親の外見、自分の苗字を述べられるとは限らない。これら全てをする子供なんて想像できるだろうか?」

ICSは現在、国境で親と引き離されたと確認出来ている5人の子供を支援しているが、人数は常に変化しているという。

「子供たちと親が絶対に乗り越えられるなんてことはない」とルセイジ弁護士は語る。「子供たちが国境を渡った際、親が既に本国送還されていたという件を複数知っている」。

「今は恐ろしい状況だ。本当に言葉が無い」

移民の法的な状況

大人の移民と子供の移民で、2つの異なる機関が監督する2つの別々な移民制度が適用されるという事実が、再会をめぐる大きな混乱を引き起こしている。

大人の移民は米国土安全保障省(DHS)の審査を通過しなければならないが、同行者のいない未成年と分類された子供は米保健福祉省の難民再定住室(ORR)の保護下に置かれる。

米全国移民判事協会(NAIJ)の代表を務めるアシュリー・タバドー判事は、ロサンゼルスで何年も子供の移民案件に無償で取り組んできた。タバドー判事はBBCに対し、今起こっている移民危機は、子供移民の案件を扱う上で既にある問題を悪化させていると話した。

「移民危機は、弁護士と裁判所にとって、基礎的な公平性を確保することをさらに難しくしている。子供の利益を十分に守るため、適切な大人の確保が必要になるからだ」とタバドー判事は言う。

同判事は、「彼らは同行者のいない子供ではない」と話す。

「子供たちは引き離され、同行者のいない子供になったのだ」

タバドー判事は、多くの親が今、「子供を取り戻すためなら政府のどんな要求にも同意している」と付け加えた。

移民に関するデュー・プロセス(法に基づく適正な手続き)

ドナルド・トランプ米大統領は6月、「裁判官や裁判所抜きでの」移民の強制送還を求めた。

トランプ氏はツイッターに、「我々の国が侵略されるのを許してはいけない。誰かが入ってきたら、裁判官や裁判所抜きで、すぐに元いた場所に帰さなきゃならない。今のシステムは良い移民政策と法の支配を笑いものにしている。沢山の子供たちが親なしでやってきている。世界中から笑いものにされているこの移民政策は、合法的にシステムを通過した人たち、何年も順番待ちをしている人たちにとってとても不公平だ!  移民は利益に基づいていなきゃならない。米国を再び強くするのを助けてくれる人を求めている!」と投稿した。

サラ・サンダース報道官もその後、トランプ氏の発言に同調した。

「単純に、裁判官との面会を経ないということは、適切な法的手続きを受けないという意味ではないからだ」とサンダース氏は述べた。

タバドー判事は、NAIJがこの発言に「謹んで反対する」と述べた。

「適切な法的手続きと現在の状況では、独立した決定権者に対してそれぞれの案件を説明する人間が求められる」とタバドー判事は言う。

「実際にここに来て、本国送還への恐れを伝えて初めて、その人たちは移民審査を受ける資格を持つ」

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Image caption 拘束されていたエルサルバドル出身の移民男性は先月、10歳の息子と再会を果たした

ガルシア氏は、適切な法的手続きの保護に対するどんな緩和も、「間違った方向への一歩」だと述べた。

ガルシア氏は、「引き離された移民家族の再会は非常に大事だ。我々はこれらの家族が一緒に解放されることを支持する。家族一緒に収容されるのではなく」と述べた。

「しかし、適切な法的手続きを経ず、弁護士の接見も無しに、家族が本国送還されないことが何より重要だ」

移民案件や民事案件については、弁護士の接見は無条件で用意されない。

移民たちにとって、非営利団体の支援なしで法的な代理人を見つけることは不可能も同然といえる。

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Image caption ホンジュラス出身の母親と2歳の娘は、米国への入国を拒否され、国境のメキシコ側で待機している

これから起こる可能性があること

タバドー判事は、もし子供移民の案件が家族との再会より先に進められれば、親は気づかぬうちに子供の法的な親権を失う可能性があると話す。

「子供たちが最終的に特別な子供向け移民ビザを取得し、里親による公的な後見人制度を受けざるを得なくなれば、育児放棄、虐待、無視のどれかを証明しなければならない。もし裁判所がこれを認めれば、親と子供の関係性は断ち切られる。少なくとも移民のためにはそうせざるを得ない」

しかし、フローレンス・プロジェクトの職員はBBCに対し、裁判所の決定を恐れるのはまだ早すぎると指摘した。

今のところ、移民家族を確実に弁護士と接見させるようにすることと、移民が受けた精神的な傷の治療が1番の懸案だ。

移民をめぐる主要な法的問題のタイムライン

4月6日: セッションズ司法長官が、米国メキシコ間の国境における「ゼロ寛容」政策を発表

6月15日: 米国土安全保障省がついに親と引き離された移民の子供の数を明かす。4月後半から5月31日までで約2000人

6月20日: トランプ大統領が家族の引き離しを終結させる大統領令に署名

6月21日: 米上院議員が移民制度の関係各省庁部局に対し、移民の子供と家族に関する監査を要求

6月26日: カリフォルニア連邦地裁が当局に対し、拘束している家族の引き離しを止めるよう要求。また、政府に対し、5歳より下の子供を14日以内に家族と再会させるよう期限を設定

6月27日: 米国の17州が、家族の再会を命じる裁判所命令を求めてトランプ政権を提訴

6月29日: 複数の法律団体が、収容所にいる子供の移民を虐待したとして米保健福祉省を提訴

6月30日: セッションズ司法長官が、家族を一緒に収容している限り、「フローレス合意」が定める、移民の子供の収容を20日とする期限に違反することはないとする声明を発表

7月2日: 複数の州知事が、米国土安全保障省と米保健福祉省に移民家族の再会に関する最新情報を要求

7月10日: 連邦裁判所が、5歳より下の移民の子供を家族と再会させる期限について、いくつかの案件で延長を許可

7月26日: 全ての移民家族が再会する期限日

(英語記事 Deadline to reunite US migrants extended as babies face court

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