ラオス・ダム決壊 死者は公式発表よりも多い可能性=NGOや地元住民

Image caption パクソンの避難所には十分な設備が備わっていない

ラオス南東部アッタプー県で23日に起きたダム決壊による洪水で、公式発表された死者数27人は少な過ぎるとの指摘がNGO団体や地元住民から出ている。

外国メディアによる現地の取材は許されておらず、ラオス当局は救助活動の詳細について多くを公表していないが、BBCの取材チームは、わずかの間現地を訪れ、生存者たちから話を聞くことができた。

被災地に最も近い町アッタプーにある、負傷者や救助された人々が手当てを受けている町の最も大きな病院で、取材チームはラさん、アウンさん夫婦に出合った。

ラさんは2人の娘が水に流された当時の状況を語った。ラさんは1歳の娘をボートに乗せて避難しようとしたものの、強い流れにボートをつかんでいられなくなってしまったという。

「娘と妻をボートに乗せました。ボートを離さないようにしていたけれど、水流はとても強かった。これ以上つかんでいられなくなって、ボートは転覆し、娘は水に投げ出された」

Image caption ラさんとアウンさん夫妻は、2人の娘が濁流に流されてしまったとBBCに語った

ラさんとアウンさんの2人が娘を必死に探していたときに、4歳の長女も急流にのみ込まれた。

「私たちは娘を探そうとしましたが、見つけられなかった。すべて私の目の前で起きた。とてもショックです。誰にこの怒りをぶつけたらいいのか。ただ子供たちが恋しい」

「東南アジアの電池」になるはずが……

23日に決壊したダムは、セピアン・セナムノイ水力発電計画の下で建設中だったダムの一部で、建設にかかわっている韓国企業は、22日にダムの一部が損傷しているのが見つかったと述べている。

大規模な救助活動が現在展開されているが、ラオスの共産党政権は詳細の多くを明らかにしていない。当局の秘密主義的傾向や被災地が遠隔地にあることが背景にある。被災地へのアクセスが限られているため救助活動も難航している。

一方で、水力発電事業に力を入れ、近隣国への売電でラオスを東南アジアの「電池」にする考えだった同国政府にとって、ダム決壊は非常に不面目な事態でもある。

なぜ新しいダムが決壊し水田や村々に鉄砲水被害が及ぶことになったのか、また付近の住民に十分な警告があったのか、ラオス政府の対応を疑問視する声も出ている。

政府の統計では、ダム決壊による洪水の死者は27人、行方不明者は131人となっているが、複数の援助団体は、政府が災害規模を控え目に見せようとしていると考えており、最終的な犠牲者数は公式発表を相当上回る可能性があると指摘する。

地元住民はBBCに対し、死者は300人に上る可能性があると語った。

一方、泥水の水位が家の屋根近くまで達している被災地で、最大3000人が依然として避難できずにいるとの情報がある。

Image caption 決壊したダム(subsidiary dam)と被災地(villages flooded)の位置関係。矢印は鉄砲水が流れた方向

7つの村が洪水被害に遭っており、特に2つの村で被害が大きかった。ラオスの医療当局者はロイター通信に対し、ある地域では元々200軒あったが、わずか10軒しか残っていないと話した。

当局者は、「きょうは遺体1体が見つかった。水がひいて道が通りやすくなれば、もっと見つかるのではないか」と語った。

当局者によると、ダム決壊の3、4時間前に村々に警報が出されたが、水位がここまで上昇するとは多くの人が予想していなかったという。

救助活動はどの程度進んでいるのか

アッタプーから車で3時間ほど行ったパクソンには、何百人もの被災者たちが当座しのぎの避難所に身を寄せ合って生活している。医薬品や毛布が配られ、ご飯やスープの炊き出しが行われている。

しかし、被災者たちは洪水で全てを失っている。孫がいるある女性はBBCに対し、激流があっという間に家を押し流してしまったと話した。

ラオス軍と文民の両方が協力して救助活動に当たっており、インスタント麺や新鮮な水をボートに乗せ搬送している。中国から医療チームが到着しており、タイも支援に加わる予定。

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Image caption ラオス軍兵士らが被災地の村々に向かった

しかし、国連の人道支援機関によると、最も被害が大きかった地域では道路や橋が破損しているため、ボートとヘリコプターが唯一の交通手段になっている。また、学校が避難所として使われており、約1300世帯がテントを必要としているという。

さらに、洪水の影響を受けたカンボジア北部で、約1300世帯が高い土地に避難したという。

ダムについて分かっていること

総工費12億ドル(約1330億円)のセピアン・セナムノイ水力発電所は、2つの主ダムと5つのサドルダム(副ダム)からなり、ラオスやタイ、韓国の企業が建設に参加している。

建設は9割が完了していて、商業運転が来年始まる予定だった。

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Image caption ラオス政府は海外や民間から投資を受けて、さらにダムを建設する計画だ

計画の主要な参加企業、韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクションは、モンスーン・シーズンによる豪雨がダム決壊の理由だと述べた。

同社幹部は、危険な状態だと分かった後、すぐに12の村に避難命令を出したとしている。

地元紙ビエンチャン・タイムズによると、ラオスのカンマニー・インシラス・エネルギー鉱業相は災害補償の責任は建設会社がすべて負うと語った。

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ラオス・ダム決壊、屋根の上に取り残された住民たち

(英語記事 Laos dam collapse: Survivors and NGOs query official toll

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