トランプ氏の元選対本部長、初公判で無罪主張 「嘘をついた」と検察

ロシア疑惑捜査から銀行詐欺罪などで起訴され、初公判に出廷したマナフォート氏の法廷スケッチ(31日、米バージニア州アレキサンドリア) Image copyright Reuters
Image caption ロシア疑惑捜査から銀行詐欺罪などで起訴され、初公判に出廷したマナフォート氏の法廷スケッチ(31日、米バージニア州アレキサンドリア)

ドナルド・トランプ米大統領の選対本部長で、脱税罪などに問われているポール・マナフォート被告(69)の公判が31日、米バージニア州アレクサンドリアの連邦地裁で始まった。検察は被告が「嘘をつき」、「自分は法に従う必要がないと思っていた」と冒頭陳述で主張した。

マナフォート被告は銀行詐欺や脱税など18件の罪に問われており、有罪となれば最長30年の服役刑を言い渡される可能性がある。初公判で被告はすべての罪状について、無罪を主張した。

被告は2016年米大統領選で3カ月にわたり、トランプ陣営の選対本部長を務めた。大統領選へのロシア介入を調べるロバート・ムラー特別検察官の捜査の一貫で、脱税罪などで起訴された。マナフォート被告の罪状はいずれも、ロシア疑惑とは直接関係しない。ムラー検察官率いる捜査チームの弁護士たちは、マナフォート被告の裁判で「ロシア政府との結託に関する証拠や陳述を提出するつもりはない」と表明している。ムラー検察官の捜査は継続中。

マナフォート被告の初公判で検察は、被告が脱税目的で海外3カ国の金融機関30行の口座を使い、数千万ドルもの資産を隠そうとした陳述した。隠し資産は、多数の不動産や自動車、服飾品などの購入資金にあてられたとされる。2万1000ドル(約235万円)相当の腕時計や、1万5000ドル(約170万円)のダチョウ革の上着なども含まれていたという。

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Image caption 2016年7月の共和党全国大会でトランプ氏の後ろに立つマナフォート選対本部長(当時)。トランプ氏が共和党の指名を獲得したこの党大会は、マナフォート被告が取り仕切った

起訴状によると、被告は政治顧問としてウクライナ政界と関わる中で得た「数千万ドルもの収入」を、「米当局から隠蔽する工作に取り組んでいた」。罪状は――、

  • 虚偽の所得申告5件
  • 未申告の海外銀行口座4件(検察は被告が、キプロス、セントビンセント・グレナディーン、セイシェルの金融機関を通じて数百万ドル相当の資産を洗浄したと主張)
  • 銀行詐欺や銀行詐欺の共謀9件(融資調達のため金融機関3行に対し、虚偽の内容、もしくは紛らわしい内容を申告したとされる)

――の合計18件。検察は、トランプ陣営やトランプ政権内の地位の約束と引き換えに、被告に1600万ドルの融資を斡旋(あっせん)したとされる銀行幹部について、証拠を提出する方針を示している。

検察はすでに証拠約500件を裁判所に提出しており、多くて35人の証人を法廷に呼び出す方針。証人の中には、すでに今年2月に共謀罪や偽証罪で罪を認めている実業家リック・ゲイツ被告も含まれる。マナフォート被告の仕事仲間だったゲイツ被告は、マナフォート被告の事件について当局の捜査に協力している。

被告を担当するトマス・ゼンリ弁護士は冒頭陳述で、事件は「税金と信頼」に関するもので、自分の依頼人はゲイツ被告を信頼するという間違いを犯したと述べた。

「ゲイツはクッキー入れに手を突っ込んでいたようなものだ。リックが私腹を肥やしていたなど、ポールはまったく知らなかった」とゼンリ弁護士は主張した。

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Image caption 1985年当時のマナフォート氏(左)。中央は政治コンサルタント仲間で、後に熱烈なトランプ支持者となったロジャー・ストーン氏。右はレーガン政権の補佐官などを歴任した、リー・アトウォーター氏

ムラー捜査との関係

マナフォート被告の公判とムラー特別検察官のロシア疑惑捜査は直接関係しないが、ムラー検察官の捜査を機にマナフォート被告は起訴された。ムラー検察官の捜査ではこれまでに32人と法人3社が起訴されている。

自陣営とロシア当局の間に「結託はなかった」と一貫して主張し、ムラー検察官の捜査を「魔女狩り」と呼び続けているトランプ大統領は、マナフォート被告を「いい奴だ」と言い、起訴されたことに同情を示していた。ただし、「これはポール・マナフォートがトランプ陣営に参加する前の、何年も前のことだ」とツイートするなど、起訴内容とは距離を置いてきた。

今年春からトランプ氏の顧問弁護士となったルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は、もしマナフォート被告が有罪となれば大統領が恩赦を与える可能性もあると発言した。ジュリアーニ氏はロイター通信に対して、トランプ氏には恩赦を検討する「権利がある」、「その権限がある」と述べた。

初公判に先立ち、裁判を担当するT.S.エリス判事は、ムラー検察官の捜査チームがマナフォート被告を利用していると批判していた。

5月の公判前整理手続きで判事は、「あなたたちは、マナフォート氏の銀行詐欺について実はどうでもいいと思っている。本当に大事なのは、トランプ氏に関係する、あるいはトランプ氏の起訴もしくは弾劾につながる情報を、マナフォート氏が提供してくれるかどうかだ」と、ムラー検察官たちを批判した。

マナフォート被告については9月にも、ウクライナでのロビイスト活動に関する罪状で別の公判が開かれる。証人買収の疑いもかけられている。

共和党やウクライナ大統領の顧問

マナフォート被告は、ジェラルド・フォード、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュと、複数の共和党大統領の選対本部で活動した。ロビイストとしては、代弁するのが不可能に近い顧客の代理人を務めることで有名だった。多数の政敵を拷問・誘拐・殺害したとされたフィリピンのフェルディナンド・マルコス元大統領も、マナフォート被告の顧客だった。

2016年5月からトランプ陣営の選対本部長になると、トランプ氏を思慮深い、大統領にふさわしい候補としてイメージを改善しようと取り組んだ。支援者集会で、その場の勢いでアドリブを繰り返すのではなく、練りこまれた戦略にもとづく台本通りに発言するよう、トランプ候補(当時)を導いた。トランプ氏が共和党の指名を獲得した7月の共和党全国大会は、マナフォート氏が仕切った。

一方で、選対本部長に就任以来、ウクライナの親ロシア派大統領(当時)の政治顧問としての活動が民主党などから問題視され、報酬数百万ドルが未申告だと指摘された。この時の全国大会で共和党が綱領から、ウクライナ侵攻についてロシアを非難する文言を削除したのも、マナフォート氏の影響ではないかと注目された。

こうしたなかで被告は同年8月にトランプ陣営を辞任。後任の選対本部長となったのが、スティーブ・バノン氏だった。

マナフォート被告とウクライナとの関係について、今後の審理でさらに詳細が明らかになるとみられている。

(英語記事 Trump ex-campaign chief Manafort lied, court told

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