同性愛の女性2人に公開つえ打ち刑 マレーシア

An Acehnese woman is lashed by a hooded local government officer during a public caning at a square in Aceh province, on June 12, 2015.

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インドネシアでも公開のつえ打ち刑が加えられることがある(資料写真)

マレーシア東部トレンガヌ州で3日、広場に停めた車内で性行為をしようとしていたマレーシア人女性2人が、公開の場でつえで打たれる刑を受けた。イスラム教のシャリア法にもとづく宗教裁判所が、処罰を命じた。

州政府関係者によると、22歳と32歳のムスリム(イスラム教徒)女性はそれぞれ6回、つえで打たれた。同州で同性愛を理由に有罪となるのは2人が初めてで、公開つえ打ち刑の実施も今回が初めてという。

地元紙スターによると、100人以上が公開の処罰を見物した。

マレーシアの女性人権団体はロイター通信に、「深刻な人権侵害を恐ろしく思う」と話した。

多くの人権団体が強く反発しているが、マレーシアではシャリア法だけでなく世俗の刑法も同性愛行為を違法と定めている。

トレンガヌ州議会のサティーフル・バーリ・ママト議員はロイター通信に、つえ打ち刑は「拷問したり傷つけたり」するためのものではなく、「社会への戒め」として公開の場で行われるのだと説明した。

「痛みを与える目的ではない」

刑を受けた2人の名前は公表されていない。今年4月にトレンガヌ州の広場に停めた車内にいるところを、宗教警察に見つかり逮捕された。

2人は8月にイスラム法違反で有罪を認め、つえ打ち刑と罰金3300リンギット(約9万円)を言い渡された。

スター紙によると、イスラム法によるつえ打ちの刑は、世俗の刑法にもとづくつえ打ち刑とは異なり、痛みを与えることを目的としていない。

一方で、マレーシアの女性支援組織は、「成人2人の同意にもとづく性行為を、犯罪扱いすべきではない。まして、鞭(むち)で打って罰するなどもってのほかだ」と批判している。

人口の大半をムスリムが占めるマレーシアは、イスラム教国の中では穏健的とされてきたが、近年では宗教感情の高まりがしばしば見られる。

8月初めには、性的少数者(LGBT)活動家の肖像画を公共の場所から外すよう、政府幹部が命じた。

マレーシアの法体系は、シャリア法と世俗法との二重になっている。ムスリムは、結婚や親権など家族や個人の生活に関する部分についてはシャリア法に従う。他の宗教の信者は世俗の法律に従う。