トランプ氏、著名記者の政権暴露本を「国民への詐欺」と非難

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Image caption トランプ氏はウッドワード記者(左)の新著について「駄目な本がまた出ただけだ」と批判

米ウォーターゲート事件の調査報道などで高名なボブ・ウッドワード記者によるトランプ政権についての本を、ドナルド・トランプ米大統領は5日、「国民への詐欺」と非難した。

9月11日発売予定の「Fear: Trump in the White House(恐怖:ホワイトハウスのトランプ)」では、ジョン・ケリー首席補佐官やジェイムズ・マティス国防長官がトランプ大統領を「ばか者」、「外交について小学生なみの理解」などと手厳しく呼んでいたと書かれている。トランプ氏はこれについて、首席補佐官や国防長官がそれぞれ本を「情けない」、「作り事」と批判する反論を、自らツイートした。

出版前に米紙ワシントン・ポストが公開した抜粋によると、本にはトランプ大統領が署名しないよう重要書類を側近が隠していたことなどが書かれている。

ウッドワード記者はさらに、トランプ政権が混乱状態にあり、「行政権がノイローゼ状態」だと書いている。

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ウッドワード氏は、1970年代のウォーターゲート事件に当時のリチャード・ニクソン大統領自身が関与していたことを明らかにした調査報道を押し進めた1人。広く尊敬されるベテラン記者で、米政界に多くの情報源を持つ。

大統領の反応は

トランプ氏はツイッターで「ウッドワードの本はすでに、ジェイムズ・マティス将軍(国防長官)とジョン・ケリー将軍(首席補佐官)が反論し、信ぴょう性を否定した。引用されている2人の発言はでっちあげの偽もの、国民に対する詐欺だ。ほかの逸話やコメントも同様だ。ウッドワードは民主党の手先? タイミングに気づいた?」と書き、マティス氏とケリー氏、さらに「不満のある元職員」による「でっちあげ」だと批判したサラ・サンダース大統領報道官の発言を次々とツイートした。

トランプ氏はさらに、「あまりにたくさんの嘘と偽の情報源」を使ったこの本は、「すでに信ぴょう性がないと言われている」と書いた。加えて、自分がジェフ・セッションズ司法長官を「知恵遅れ」の「馬鹿な南部の人間」と呼んでいたという本の描写を否定した。

そのほかトランプ氏は、「人が完全な作り話で記事や本を書いて、事実とまさに正反対の人物像を描いておきながら、それで何の罰も受けず弁償もしないで済むなんて、なんて残念な話だ。ワシントンの政治家がどうして名誉毀損の法律を変えないのか分からないよ?」とツイートした。

マティス国防長官は声明で、問題の本を「誰かの豊かな想像力の産物」と呼び、「ウッドワードの本で大統領について私が使ったとされる、侮蔑的な表現は、私自身が使ったこともなければ、私がいる場で誰かが口にしたこともない」と述べた。

ウッドワード記者は、マティス長官が大統領は「5、6年生なみ」にしか外交政策を理解できていないと側近に話したと書いている。

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Image caption マティス長官は、ウッドワード記者の「情報源はどれも匿名で信用に値しない」と批判した

ケリー首席補佐官は声明で、「私が大統領を一度でも『ばか者』と呼んだなど、事実ではない(中略)大統領は常に私の意見を承知しているし、大統領も私もこの話が完全なでまかせだと承知している。(中略)これはみっともない方法で、トランプ大統領に近い者たちを中傷しようとしているだけだ」と批判した。

サンダース報道官は、本は「でっちあげのお話に過ぎない。その多くは、大統領の評判を落とすような話をするよう言われた、不満を抱えた元職員によるものだ」と述べた。

トランプ氏は米国の保守系ニュースサイト、デイリー・コーラーの取材の最中に、「駄目な本がまた出ただけだ」と述べ、ウッドワード氏の「信頼性には色々問題がある」と付け加えていた。

本の政権批判は

ウッドワード氏は繰り返し、トランプ政権の現職や元職の側近たちが、大統領が署名しないよう重要書類を隠したり、大統領の要求とは異なる行動をとったと書いている。

これは「政権内の行政的クーデターにほかならない」とウッドワード氏は指摘している。

ウッドワード氏は、トランプ大統領が国防総省にシリアのバシャール・アル・アサド大統領の暗殺を命じ、マティス長官に「やつらを(放送禁止用語)かたっぱしからぶち殺そう」と言ったと書いた。

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Image caption シリアのアサド大統領をトランプ氏は「(放送禁止用語)ぶち殺そう」と言ったと書かれている

ウッドワード記者によると、マティス氏はその場ではトランプ氏の指示を受け入れたものの、会話後に自分の部下に「あれは一切」やらないと伝えた。

ボブ・ウッドワード氏の信頼性は

トランプ氏はウッドワード記者の信頼性を問題視する発言をしたが、ウッドワード氏は記者として非常に高く信頼されている。ワシントン・ポストで当時の同僚、カール・バーンスティーン記者と共に進めたウォーターゲート事件の調査報道が、ニクソン大統領辞任の一因となった。その後も、ジョージ・W・ブッシュ元大統領やバラク・オバマ前大統領など、複数の国家指導者について、記事や著作を発表してきた。

米政界の分析においてウッドワード氏は紛れもなく、内情に詳しい専門家の1人として尊敬され、信頼されている。

BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、ウッドワード氏ほど米政界の中枢にとことん食い込んでいる記者はほかにいないと評価する。ワシントン政界関係者の間では、自分が話さないとしても、自分の同僚は(そして政敵も)ウッドワード氏に話をしているはずなので、ウッドワード氏には話さないよりは話した方がいいという意見が一般的だという。

2013年にウッドワード記者とオバマ政権が争っていた際には、トランプ氏自身が、「ボブ・ウッドワードを攻撃してそれで済むのはオバマのホワイトハウスくらいだ」とツイートしていた。

大統領はウッドワード記者に話をしたのか

ワシントン・ポストは8月初めに大統領がウッドワード氏にかけた電話の録音と聞き取り内容を公表した。その中で大統領は、近く出版されるウッドワード氏の本について知らされていないし、一度も連絡を受けていないと述べるが、ウッドワード氏はこれを否定する。

会話の記録からは、ケリーアン・コンウェイ顧問を含む大統領側近が、ウッドワード記者による大統領取材の依頼を承知していたことがうかがえる。

大統領は電話でウッドワード氏に、「誰も教えてくれなかった。ぜひとも君と話がしたかった。君には何でも話す。それはそっちも知っているだろう。君はいつも公平だったと思うから」と言い、「大統領として自分ほどいい仕事をしている人間はいない。それは本当だ」と話したという。

これに対してウッドワード氏は、取材を通じて「たくさんの知見と資料を手にした」と言い、本は「世界とあなたの政権とあなた自身を厳しく見つめる」内容だと告げている。

すると大統領は、「ということは、否定的な本になるという意味だな。また悪い本が出るのか。だったらどうした」と答える。

会話の最後にウッドワード氏は、「私はこの国を信じています。あなたはこの国の大統領なので、幸運を祈ります」と結んでいる。

(英語記事 Donald Trump condemns Bob Woodward book as 'con'

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