【元ロシア・スパイ】毒殺未遂事件の容疑者を公表 英政府

Alexander Petrov and Ruslan Boshirov

今年3月に英南部ソールズベリーでロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏(66)と娘のユリアさん(33)が有毒の神経剤「ノビチョク」による毒殺未遂に遭った事件をめぐり、英当局は5日、殺人未遂容疑でロシア人の男2人の名前を公表した。

テリーザ・メイ英首相によると、容疑者らはアレクサンデル・ペトロフとルスラン・ボシロフという名前を使っており、共にロシア軍情報機関の職員と考えられている。

ロンドン警視庁と検察庁は、2人を訴追するのに十分な証拠がそろったとしている。

スクリパリ氏とユリアさんは3月4日、ソールズベリーにあるショッピングセンターの外のベンチで倒れているところを発見された。2人を真っ先に助けようとしたニック・ベイリー刑事巡査部長も被害を受けた。

6月30日には、ソールズベリーから12キロ離れたウィルトシャー・エイムズベリーの住宅でドーン・スタージェスさん(44)とチャーリー・ロウリーさん(45)がやはりノビチョクを浴びて意識不明となった。警察はこの2つの事件を関連付けている。

スタージェスさんは7月8日に亡くなり、ロウリーさんは7月20日に退院している。

ロウリーさんは5日にITVニュースの取材に応じ、容疑者が「裁かれる」のを見たいと話した。

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英下院でメイ首相は、英政府は情報機関が提出した情報から、容疑者らはロシアの連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の一員だと結論付けたと説明した。

その上で、毒殺未遂は「ならず者の犯行」ではなく、「ほとんど確実に」ロシアの高官によって指示されたものだと述べた。

容疑者2人は偽名を使っているもよう。ロシアのパスポートを使っており、年齢は40歳前後だという。

BBCのゴードン・コレラ安全保障担当編集委員によると、英当局は「かなり前」からこの2人を容疑者と特定しており、「本名も把握している可能性」がある。これまでは、この情報を伏せることで、容疑者たちが移動した際に確保しようとしていたという。

コレラ編集委員は、2人が英国で裁判にかけられる可能性は低いものの、証拠を公開することで「ロシアが似たような行動を再び起こさないよう」圧力をかけていると説明した。

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メイ首相は「我々は今こそ、特にGRUに対するまとまった対応を強化しなくてはならない」と話した。

首相は「卑劣な攻撃」を激しく非難し、「国家安全保障に関わる組織全体のあらゆる手段」を使ってロシアの「脅威に立ち向かう」ことを約束した。

これに対し在英ロシア大使館は声明を発表し、英政府に「政治目的による表立った非難を止めるよう」訴えた。

この声明でロシア大使館は、英当局が同大使館とやりとりしようとせず、パスポート番号など容疑者らの追加情報の提供に応じなかったと批判している。

ロシアは自国民の引き渡しに応じないため、英検察庁はこの容疑者2人の身柄引き渡しを要求していない。

しかし、2人が欧州連合(EU)域内を移動する場合に備え、域内で有効な欧州逮捕状がすでに発行されている。

ウラジーミル・プーチン露大統領のユーリ・ウシャコフ政策顧問は記者団に対し、容疑者2人の名前に「何の覚えもない」と話している。

国連は6日にも、安全保障理事会でこの事件について協議する予定。

メイ首相はさらに、EU加盟国に対しロシアに新たな制裁を課すよう求めていくとみられる。

しかしBBCのジェイムズ・ランデール外交担当編集委員は、欧州各国は貿易とエネルギー資源を失うのを怖れて「ロシアへの締め付けを強めるのに消極的」になるだろうと指摘している。

Image caption スクリパリ親子は、自宅の玄関ドアに吹き付けられたノビチョクに接触し、意識不明に陥った

英検察庁で法務サービスを統括するスー・ヘミング氏は、「現実的に有罪判決へ導ける」だけの十分な証拠があり、訴追は「明らかに公共の利益になる」と話した。

容疑には、セルゲイ・スクリパリ氏の殺害計画、スクリパリ氏とユリアさんおよびロウリーさんに対する殺人未遂、ノビチョクの所持および使用による化学兵器法違反、ユリアさんとベイリー刑事巡査部長に対する故意による重大な傷害が含まれる。

ロンドン警視庁で英国のテロ対策を統括するニール・バス警視監補によると、ベイリー刑事巡査部長は「快方に向かっているが今も休職している」という。

Image caption 容疑者2人の移動経路。1.ガトウィック空港、2.ビクトリア駅、3.ウォータールー駅、4.シティ・ステイ・ホテル、5.ソールズベリー、6.ウィルトン・ロード、7.ヒースロー空港

ロンドン警視庁は、2人の容疑者は3月2日にモスクワからロンドン・ガトウィック空港に到着し、ロンドン東部ボウ・ロードのシティ・ステイ・ホテルに宿泊したと説明した。

3月3日と4日にソールズベリーを訪れ、スクリパリ氏の自宅玄関ドアをノビチョクに汚染させた。

警察は、ノビチョクは改造された香水スプレーで扉に吹き付けられたとみている。

2日は4日のうちにヒースロー空港からモスクワに移動している。

ノビチョクの形跡はシティ・ステイ・ホテルの部屋からも検出されたが、当時宿泊していたほかの客への影響はないという。

警察は現在、3月4日~5月4日に同ホテルに宿泊した客からの情報を集めている。

サディク・カーン・ロンドン市長は、ロンドン市内の公衆衛生に危険はないと再確認している。

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Image caption 容疑者2人が滞在していたホテル

スタージェスさんとロウリーさんは、仏ニナ・リッチの香水「プレミア・ジュール」のラベルの付いた容器に触れてノビチョクに汚染された。

ロウリーさんは警察に対し、寄付品を入れる箱から、小さなボトルと吹きつけ器具の入った箱を見つけたと話した。これらは後に、どれも模造品だと確認された。

ロウリーさんは2つの部品を組み合わせた後、内容物を自分に吹き付けた。スタージェスさんも手首に内容物を吹き付け、その後、意識不明に陥った。

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Image caption ロウリーさんの家から見つかった偽装された香水ボトル

ロンドン警視庁によると、改造された吹きつけ口のついたこの香水ボトルには「大量の」ノビチョクが入っていたという。

バス警視監補は「我々はまだ、(スクリパリ氏の自宅の)扉に吹き付けたノビチョクを容疑者がどこに捨てたのか、スタージェスさんとロウリーさんがどこで香水ボトルを拾ったのか、両方の事件で同じボトルが使われたのか、知らない」と話した。

しかし、改造されたボトルとその外装は「この国に兵器を密輸入し、スクリパリ氏の自宅の扉に攻撃を仕掛けるには完璧な方法だ」と付け加えた。

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Image caption ドーン・スタージェスさんとパートナーのチャーリー・ロウリーさん

バス警視監補は、2つの事件は関係していると認めている。

「現在は1つの捜査になっている。スタージェスさんとロウリーさんは故意に標的にされたとは考えられないが、これほど有毒な神経剤を遺棄するなどという無謀な行為の被害者になった」

(英語記事 Novichok attack Russian 'agents' named

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