寿命の長期化「初の延び止まり」 英国

アレックス・テリエン BBCニュース健康担当記者

Image of a woman both young and old Image copyright Yuri_Arcurs/Getty

英国家統計局(ONS)は25日、寿命に関する最新統計を発表し、統計を開始した1982年以降で初めて、英国民の寿命が延び止まりを見せたことが明らかになった。

2015~2017年の統計から算出したデータでは、英国女性の平均寿命は82.9歳、男性は79.2歳だった。

英国の一部では、寿命が短くなった地域もあった。

スコットランドとウェールズでは、男性と女性の両方で1カ月以上寿命が短くなった。北アイルランドの男性でも同じ傾向が見られた。

一方、北アイルランドの女性とイングランドの男女の寿命には変化がなかった。

寿命の延び止まりについてONSは、この期間に死者数が特に多かったことと関連していると述べた。英国では2015~2017年にインフルエンザの流行があったほか、冬の死者も多かった。

寿命延び止まりの理由や、この傾向が将来的にどう変化するかについては「多くの議論が進行中」としている。

何が起こったのか

寿命が延び止まり傾向になった要因は明らかになっていないが、一部の学者は、イングランドでの社会福祉予算の削減など政府の緊縮財政政策が、その一部に違いないと主張している。

関係閣僚は緊縮政策の影響は一切証明されていないとしているが、イングランド公衆衛生局(PHE)には寿命傾向を再評価するよう指示が出された。

英マンチェスター大学で社会調査法と統計の上級講師を務めるキングスレー・パーダム博士は、この統計は「衝撃的だ」と語った。

「貧困、緊縮財政、公共事業の削減が、英国民の寿命に影響している」とパーダム氏は述べた。

「我々は皆、自分の健康に気を配る必要がある。しかし、最も弱い層の住民を含めた国民の多くが必要としている援助を行う公共事業が削減されていると、証拠は示している」

「寿命の損失は、個々人だけでなく、パートナーや子供、孫といった後に残される人々にも影響する」

Image caption 英国における1年ごとの寿命の変化(単位:週)。2011年には前年より20週以上寿命が延びていた
Image caption 新生児が90歳まで生きる確率。2015年から2017年までに生まれた新生児について計算

しかし、英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院薬剤疫学部のスティーブン・エバンズ教授は、寿命の延び止まりを説明できる要因は他にもあると指摘する。

「この統計では、どの程度がインフルエンザ流行による直接的な健康への影響による結果か、どの程度が社会要因や経済要因か、どの程度が禁煙促進や他の早死防止対策の失敗によるものか、その内訳はまだわかっていない」とエバンズ氏は述べた。

統計データは、スイスや日本、フランス、オランダ、スペイン、イタリアといった他の長寿国に英国が遅れをとっていることも示している。

ONSが英国と比較した国のうち、男性が最も長寿なのはスイスだった。女性の寿命が最も長いのは日本だった。

スイス男性の寿命は81.5年。日本女性の寿命は87年と推計されている。

傾向の変化

20世紀の間、英国の寿命は一貫して延びており、人口増と高齢化をもたらした。

このことは、健康的な生活習慣が国民に定着した結果と考えられてきた。喫煙率の削減、感染症や心臓病などの症状に対する治療の改善によるものだ。

しかし近年、寿命の延びは鈍化した。そして最新のデータで、延びは止まった。

90歳人口は変わらず増加しているものの、それは何十年も続いてきた過去の長寿命化によるものだ。

2016年と2017年の間で、100歳以上の人口数はわずかに減った。これは第一次世界大戦中の低い出生児数を反映している。

ただONSは、寿命は2019年から再び延びるとの予測を明かした。

英保健省の報道官は、「英国の寿命と死亡率に関する最近の傾向は、欧州や北米、オーストラリアの各国でも同様に見られる」と述べた。

「健康事業についての長期計画の一部として、国民がより長く健康な人生を送るのを助けるよう我々は行動している。がん生存率は最高記録で、喫煙率は史上最低だ。2023年度までに年間205億ポンド(約3兆320億円)の追加予算も予定されている。この予算は、がんや他の慢性疾患への対策を変化させるだろう」


<解説>ロバート・カッフェ BBCニュース統計部長

英国民の寿命は1980年代以来、最大で毎年約2カ月ずつ延びてきた。喫煙や心臓疾患を原因とする志望者は減少した。

しかし2011年以降、寿命の延び率は鈍化している。

毎年寿命が延び続けるのは難しいのも理由だろう。厳しい冬、あるいはインフルエンザ流行期の困難も理由になる。しかし、この傾向を引き起こしたはっきりとした原因はわかっていない。

そのため、このデータが実際に伝えているのは、英国の過去3年における死亡率だ。

そして、死亡率の実態が現実のものであることは、我々にもわかる。

自分たちがONSが予測する通りに長生きできると、どれぐらい思えるだろうか?

大して思えないだろう。ONSが提供しているのは、人がどれぐらい生きられるかを決定する未来の出来事についての正確な予測ではない。

次の80年に起こる医療の飛躍的発展、疫病の流行、戦争を予測するのは不可能なのだ。


(英語記事 Life expectancy progress in UK 'stops for first time'

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