ソユーズ宇宙船の打ち上げ失敗、ロシア当局が原因調査開始

Soyuz rocket takes off at Baikonur on 11 October 2018 Image copyright AFP

ロシア当局は11日、発射直後に緊急着陸したソユーズ宇宙船について、ロケットブースターが問題を起こした原因を調査していると発表した。

当局によるとソユーズ宇宙船の乗組員2人、ロシアのアレクセイ・オフチニン宇宙飛行士と米国のニック・ヘイグ宇宙飛行士は、共に健康状態は良好という。

2人は国際宇宙ステーション(ISS)での6カ月の任務に向かっていたが、宇宙船は打ち上げに失敗した。

2人の乗った脱出カプセルは分離され、発射地点から約400キロ離れた場所に着陸した。

飛行中に何が起こったのか

打ち上げは順調に進んでいるかにみえたが、米航空宇宙局(NASA)は発射から約90秒後、1段目のロケット切り離しと2段目のロケット切り離しの間に問題が発生したと報告した。

宇宙飛行士2人を撮影した生の動画には、機器異常による振動で2人が激しく揺さぶられる様子が映っている。

打ち上げから約114秒後、緊急避難システムが作動し、乗組員を乗せたカプセルがロケットから切り離された。

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Image caption 着陸地点には救助隊が駆けつけた

カプセルはその後、通常の着陸よりも乗組員にかかる重力加速度(G)が大きい着陸、NASAの用語でいう「弾道的下降」を始めた。重力加速度とは、航空機やロケットなどに乗っている際、急な加減速で体にかかる力を指す。

NASAによると、しばらくしてパラシュートを開いた脱出カプセルは、切り離しから34分後にカザフスタンの草原地帯に到達した。カプセルは発射地点のバイコヌール宇宙基地から数百キロ北東に着陸した。

Image caption 打ち上げ失敗の経緯を示した図。発射から約114秒後に緊急避難システムが作動し、飛行士の乗った脱出カプセルが切り離された

乗組員2人の状況は

NASAとロシアの宇宙機関ロスコスモスによると、問題発生後すぐに救出作戦が開始された。

救助隊は荒れ地対応の車両と折りたたみ式自転車を使い、カザフスタンのジェスカスガン近郊のカプセル落下地点に急行した。

その後すぐ、NASAとロスコスモスは共に、宇宙飛行士の健康状態は良好だと発表した。心拍数と血圧の計器をつけられた宇宙飛行士の男性2人が、笑顔でソファに座っている写真が公開された。

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Image caption ニック・ヘイグ宇宙飛行士(左)とアレクセイ・オフチニン宇宙飛行士

将来のソユーズ計画に与える影響は

ロシアのユーリ・ボリソフ副首相は、「状況全体が安全を保証していると我々が考えるまで」有人飛行計画は実施しないと述べた。

有人飛行の中止が対米関係を傷つけるのではとの意見について副首相は、米国はこの中止を「リスクに関わるハイテク産業」の問題だと認識していると述べ、これによる関係悪化を否定した。ただボリソフ氏は、「もちろん問題の原因を隠したりしない。こういう状況で、そんなことは普通はない」と付け加えた。

米ロ関係に緊張が高まる中でも、宇宙分野での協力関係は続いてきた。NASAは自分たちのスペースシャトル計画を2011年に終了して以降、米国の宇宙飛行士をISSに運ぶため、ソユーズ宇宙船の座席確保に資金を投じている。

ロシアのタス通信は匿名の情報源の話として、ISSには十分な物資があるため、既にISSに滞在している乗組員は11日の打ち上げ失敗に影響を受けないと報じた。

しかしロシアのインタファクス通信は、ドイツ、ロシア、米国からそれぞれ派遣されてISS滞在中の宇宙飛行士3人が、打ち上げ失敗により来年もISSに留まらなくてはならなくなるかもしれないとする情報筋の発言を伝えた。

ロスコスモスはこの問題に関する捜査委員会の設置を命じた。犯罪捜査も予定されている。

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同様の問題は過去にも

11日の打ち上げ失敗は、ソユーズ計画としては1983年の発射台事故以来だとされる。1983年の事故では、発射の直前にロケットで異常が発生し、脱出システムが作動して乗組員を救った。

ロシアの宇宙計画は近年、技術的失敗が重なっている。その数は2010年以降で13回におよぶ。

昨年には、ソユーズ宇宙船の「フレガート」と呼ばれる上段ロケットが通信不能となった。フレガートは新しい気象衛星と、小型衛星18機を積んでいた。

同年7月には、ソユーズ2.1ロケットに搭載されていた小型衛星73機のうち少なくとも9機の機器部分が、ロケットとの切り離しのあと「着陸時の機能停止か大幅な機能低下」を起こしたと報告された。

また今年8月、既にISSとドッキング済みだったソユーズ宇宙船内に穴が見つかり、ISS内部の空気圧をわずかに低下させ、補修が必要となった。この問題についてロシア当局は、穴が「意図的に」空けられた可能性があると述べた

死者は出なかったものの最も深刻な問題が起きたのは、1970年に実施された月飛行計画、米国の宇宙船アポロ13号だった。打ち上げから2日後に船内で酸素タンクが爆発し、電力不足を引き起こし計画は中止となった。乗組員は宇宙船の一部修理を成功させ、打ち上げから6日後に地球へと帰還した。

宇宙計画は技術的問題にたびたび見舞われるものの、死者が出た例は比較的めずらしい。宇宙計画における死亡事故は以下の通り――。

  • 2003年 宇宙船コロンビア号が地球大気圏への再突入時に空中分解し、宇宙飛行士7人が死亡した。耐熱タイルの損傷が原因
  • 1986年 宇宙船チャレンジャー号が打ち上げ後に空中分解し、宇宙飛行士7人が死亡した。発射用ロケットの接続不良が原因
  • 1971年 宇宙船ソユーズ11号に搭乗していた乗組員3人が窒息死した。宇宙ステーションのサリュート1号と分離した後に空気漏れが起こったのが原因。3人は、着陸後に再突入カプセル内で死んでいるのが発見された
  • 1967年 宇宙船ソユーズ1号が地上に衝突し、宇宙飛行士1名が死亡した。大気圏への再突入時に、下降速度を落とすために展開予定だったパラシュートが絡まり開かなかったことが原因
  • 1967年 宇宙船アポロ1号の乗組員3人が死亡。発射台上での予行演習中、操縦室内で発生した火災が原因
Image caption 打ち上げ失敗したソユーズの着陸地点。発射地点バイコヌールの約400キロ北東、カザフスタン中部のジェスカスガン付近に着陸した

<解説>地球への不快な帰還 ジョナサン・エイモスBBC科学担当編集委員

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ソユーズ宇宙船の設計は最も古いものの1つだが、最も安全なものの1つでもある。異常は「切り離し」と呼ばれる、上昇する宇宙船が空になった燃料を積んだ部分を切り離す過程で発生したとみられる。

搭乗していた宇宙飛行士は、何かがおかしいと確実に気づいていた。本来なら座席に押し付けられるように感じる場面で、重さを感じなかったと報告したからだ。脱出システムは試験され、まさにこのような不測の事態に備えて準備されていた。それでも、今回の問題は地球への不快な帰還になっただろう。乗組員は帰還時、非常に急激な加速と減速を経験したはずだ。

ロシアの宇宙産業の現状や、往年の水準を保つ能力があるのかについては、既に多くの議論がある。調査の結果がどうあれ、今回の問題はロシアの宇宙産業に対する懸念を高めるほかないだろうし、特に米国に対しては、新たな有人宇宙船システムの必要性が強調される結果になるだろう。民間企業のボーイングとスペースXが製造した有人宇宙船の、初めての打ち上げ実験は、来年に予定されている。

(英語記事 Investigation starts into dramatic Soyuz rocket breakdown

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