記者死亡は「殺人」……サウジ外相が認める 皇太子の指示は否定

画像提供, AFP/Getty
サウジアラビアのアベル・アル・ジュベイル外相は21日、米フォックス・ニュースでカショジ記者が殺害されたと認めた
サウジアラビア政府高官は21日、ジャマル・カショジ記者が在イスタンブール総領事館内で殺害されたことを認め、「勝手な(殺害)計画」を非難した。
米フォックス・ニュースのインタビューに応じたサウジのアデル・アル・ジュベイル外相は、計画は「大きな過ち」だったと認めた一方、国政に影響力のあるムハンマド皇太子の指示ではないと述べた。
サウジアラビアは、今月2日に総領事館を訪れたカショジ記者が行方不明になった事件について、説明責任を追及されていた。当初は記者が生きて総領事館を出たと発表していた。
<関連記事>
トルコ当局は、サウジ政府が派遣した殺人部隊が記者を総領事館内で殺害したと主張している。
サウジアラビアは当初、カショジ記者は無傷で総領事館を出たと説明していたが、19日に初めて、記者が殴り合いの末に死亡したと説明した。
しかし、この説明にも疑問の声が多くあがった。
サウジアラビアの現時点の主張
アル・ジュベイル外相はインタビューの中で、事件を殺人と表現した。
「我々は必ず、すべての事実を明らかする。この殺人の責任を負う者を罰するつもりだ」
「実行者たちは、自分の権限の範囲を超えてこれを行った。ひどいミスがあったのは明らかだが、隠蔽しようとしたせいでさらにひどいことになってしまった」
サウジ政府を批判すると次々と消える 王子でさえも
外相はまた、サウジ当局は遺体がどこにあるか知らないとした上で、サウジで最も影響力が強いとされるムハンマド・ビン・サルマン皇太子が殺害を命令したわけではないと強調した。
アル・ジュベイル外相は犯行を「勝手な計画」と呼び、「情報当局の高官ですらこの計画を知らなかった」と述べた。
サウジアラビアはこの事件を受けて上級顧問2人を解任し、18人を逮捕したと発表した。また、ムハンマド皇太子の指揮下で情報機関の改革に当たる作業部会を設置した。
国際社会の反応は?
ドナルド・トランプ米大統領はこれまで、サウジの説明は信頼できると言っていたが、20日付の米紙ワシントン・ポストに掲載されたインタビューでは、サウジ側の説明に「ごまかし」や「うそ」があると述べた。
また、ムハンマド皇太子が関わっていないと「ぜひとも思いたい」と話した。サウジ制裁については可能性を示唆したものの、武器取引停止は「向こうより我々に打撃を与える」だろうと述べた。
英国とフランス、ドイツは共同声明を発表し、カショジ記者の死に衝撃を受けており、十全な説明を求めると表明した。
「この殺人はいっさい正当化できない。我々は最大級の表現で非難する」
一方、中東地域におけるサウジアラビアの友好国は、同国を支持すると表明した。
クウェートは事件に対するサルマン国王の対応を称賛。エジプトやバーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)なども同様の声明を発表した。
21日にはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、23日に同国議会でこの件に関する「赤裸々な真実」を明らかにすると述べている。
今後の調査は?
トルコは今のところ、記者殺害でサウジアラビア政府を公式に追及するに至っていないが、捜査当局はカショジ記者が総領事館内でサウジ当局の職員に殺害されたことを示す音声と映像の証拠を入手しているという。
警察は、遺体が運ばれた可能性のあるイスタンブール近郊のベルグラードの森を捜索している。遺体がどうなったか「近いうちに」判明すると期待していると、当局の1人は話した。
画像提供, AFP
警察はイスタンブール近郊のベルグラードの森を捜索している
トルコ警察は、総領事館ならびに総領事公邸も家宅捜索した。
ロイター通信は21日、サウジ当局関係者の話として、サウジアラビアへの強制送還に抵抗した記者が、もみ合いとなった拍子に首を絞められて死亡したと報じた。遺体はじゅうたんに巻かれ、地元の「協力者」の手で処理されたという。
その後、実行部隊の一人がカショジ氏の服を着て変装し、総領事館を出たと伝えられている。
またこの職員は、サウジ側の説明が二転三転したのは「内部で偽の情報が出回っていたから」と話した。