合意なしブレグジット、国境で混乱も 英政府機関が代償を警告

カマル・アフメド、経済編集長

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英会計検査院(NAO)は24日、英国が欧州連合(EU)との離脱合意を結ばずにEUを離脱した場合、英国は「代償を払うことになる」と警告した。

NAOは各省庁の活動を精査し下院議員に報告する監督機関で、議員はNAOからの報告を元に政府に質疑を行う。

最新の報告書でNAOは、合意なしのブレグジット(英国のEU離脱)となれば、期日までに複雑な国境での検査体制は整わず、何千もの英輸出業者も新たな国境規制への準備が整えられないだろうとしている。

また、犯罪組織が国境の弱点に付け入る可能性があるほか、国境を越える際に長蛇の列や遅延が発生すると述べている。

英政府は、できる限り「摩擦のない」貿易のためにEUと「良い」協定を結ぶ自信があるとしている。すでに、合意内容の95%が完成しているという。

NAOは、政府が合意無しのEU離脱、いわゆる「ハード」ブレグジットの可能性に備えて準備を進めていると認めている。

NAOの院長を務めるサー・エイミアス・モースは、「政府は2019年3月29日にEUとの合意がない場合、国境規制が次善の策だと公に認めている」と述べた。

「この次善の策が実際に何を指すか、どれくらいの期間続くのかは明らかではない」

「一方で、スムーズな国境管理に左右される企業や個人が、その代償を払うことは確かだ」

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NAOによると、国境をまたぐ貿易は年間4230億ポンド(約61兆7000億円)に上り、その大部分がEU加盟国との貿易か、他の欧州各国を通過して世界各地に運ばれている。

また、毎年2億人以上が英国の国境を越えている。

現時点では英国はEUの単一市場と関税同盟に入っているため、欧州との自由なモノやヒト、サービスの行き来が可能となっている。

EU離脱後には新たな国境管理が必要となる。離脱交渉がまとまり「ソフト」ブレグジットとなれば19カ月間の移行期間が設けられるが、合意なしで離脱した場合、管理はより厳格になってしまう。

NAOは、「合意なし」になって英国が世界貿易機関(WTO)のルールに移行した場合、最大25万社が初めて関税申告書に記入する必要が出てくるかもしれないと指摘した。

また、税関を統括する英歳入税関庁(HMRC)が1年間に処理しなくてはならない関税申告書は、これまでの5500万件からおよそ2億6000万件に増えるとみている。

さらに新しい国境管理体制によって検問所での遅延や、関税に従わない案件が増えるリスクの増加、欧州大陸への経路となっているドーバーやフォークストーンでのトラック渋滞などが発生するとしている。

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Image caption 北アイルランドとアイルランドの国境ではEUと英国が唯一、地続きで接している

報告書ではこのほか、唯一の地続きの国境となる北アイルランドとアイルランド共和国の国境について、EUと合意していない点にも触れている。

NAOはその中で、国境に関して合意なしの離脱に備えるための「重要な」プロジェクト12件のうち11件が「期限内に許容範囲の水準で施行されないリスクに直面している」と指摘した。

モース氏は、「政府はさまざまな業績を達成し、準備への取り組みも勢いを増しているものの、課題の規模を考えると、その進捗(しんちょく)に私が指摘したような差異やリスクがあるのは避けられない」と分析している。

「しかし一方で、現状が各省庁や政府全体にとって普通でないことも理解している」

「さらなる取り組み」

NAOは、正しく管理された国境は「国家の安全、効果的な貿易、観光、管理された移民制度、健全なコミュニティーと環境にとって根本的な重要性を持つ」とした上で、新たな国境管理が間に合わないと高いリスクを背負うことになるとしている。

「管理体制の目に見える弱点に、すぐに犯罪組織などが付け入ってくるだろう」

「英国がEUの安全保障や法の執行、刑事裁判の機構などへのアクセスを失う可能性も含めると、(国境管理体制の不整備は)政府がただちに対応する必要のある安全保障上の弱点を作り出すことになる」

NAOの報告書はまた、国境の脆弱(ぜいじゃく)性を利用して密輸や密入国といった組織犯罪が起きる危険性を指摘した。その一方で、政府が国境管理の手法が変わることのリスクを認識しているとしている。

英政府は、「合意なし」に向けた準備で大きな進展があったと表明している。

政府報道官は、「合意なし(のブレグジット)に向けたさらなる取り組みは過去2年にわたって進められており、我々は離脱当日から国境を運用できる力強い計画を持っている」と話した。

「すでに将来に向けたITシステムやインフラが設置されており、HMRCはこれまで通り、自動化されたリスクベースの手法で関税検査を続ける」

「これにより、検査の増加数は最小限に抑えられる」

「我々は常に、国境を安全に保つために十分なリソースを割いている。国境管理職員を年末までに300人増やすのも、EUを離脱する日に向けておよそ600人増員するのもそのためだ」

(英語記事 UK 'will pay the price' of no-deal Brexit

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