米ユダヤ教礼拝所への銃撃、ホワイトハウスはトランプ氏発言のせいではないと

A woman reacts at a makeshift memorial outside the Tree of Life synagogue following Saturday's shooting

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「生命の木」シナゴーグの前に犠牲者の追悼碑が急きょ作られた

米ペンシルベニア州ピッツバーグでユダヤ教礼拝所(シナゴーグ)が乱射被害に遭い、11人が死亡した事件について、米政府は29日、ドナルド・トランプ米大統領による数々の発言は無関係だと主張した。

27日に白人男性が「生命の木」シナゴーグに押し入り、半自動式小銃などを乱射事件について、サラ・サンダース大統領報道官は29日の定例記者会見で、トランプ大統領の一連の発言と事件を結びつけるなど「とんでもないこと」だと強く反論した。

トランプ大統領の一連の激しい言動が、礼拝所銃撃や、トランプ氏に批判的な民主党関係者に郵便爆弾が相次いで送りつけられた最近の事件に関係しているとは思わないかと、記者が質問すると、「こうした行為は大統領の責任ではない」とサンダース報道官は繰り返した。

「こうした凶悪な行為について、大統領やその政権の関係者のせいにするなど、無責任だと思う」と報道官は反論し、大統領はユダヤ系米国人が「大好きだ」と強調する際には感極まった様子で声が揺れた。トランプ氏の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏はユダヤ教徒で、トランプ氏の長女イバンカさんも結婚の際にユダヤ教に改宗している。

シナゴーグで警官隊との銃撃戦で負傷し逮捕されたロバート・バワーズ容疑者(46)は、トランプ氏の支持者ではなく、ユダヤ人が「はびこる」のを阻止するため何もしていないとソーシャルメディアで非難していた。

トランプ氏は乱射事件を非難し、ユダヤ人差別は容認できないと強調している。

大統領夫妻は30日に、ペンシルベニアを訪れる予定という。

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米ユダヤ人社会に賛否

社会正義を掲げる進歩派ユダヤ人団体「ベンド・ザ・アーク」は、トランプ大統領が白人至上主義者を擁護し、移民やイスラム教徒を繰り返し非難してきたのが、今回の事件につながっていると公開書簡で批判した。

「トランプ大統領は、白人国家主義を全面的に非難するまで、あなたをピッツバーグに歓迎しない」というこの書簡には、4万3000人以上が署名した。

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シナゴーグ乱射犠牲者の通夜に地域の人たちが集まった

一方で、事件のあったシナゴーグで集会を主導するジェフリー・マイヤーズ師は、大統領をいつでも歓迎すると述べた。

マイヤーズ師は米ABCニュースに対して、「私は市民で、あの人は私の大統領。もちろん歓迎します」と話した。

銃撃犯はユダヤ人を罵倒しながら乱射を続けたという。しかし、警察との銃撃戦で負傷した容疑者を搬送先の病院で治療したのは、ユダヤ系の医療関係者だった。

アレゲニー総合病院のジェフリー・コーエン院長は地元テレビに対して、「うちの病院に運ばれてきて、まだ『ユダヤ人は全員殺してやる!』と叫んでいた。その男を最初に手当てした3人は全員ユダヤ人だった。なんてことだと思いませんか」と話した。

容疑者はソーシャルメディアに頻繁に反ユダヤ人的内容を書き込んでいた。事件当日には、ユダヤ系の難民支援団体「HIAS」が「侵略者」を米国に連れ込んでいると激しく非難していた。

HIASのマーク・ヘットフィールド会長は29日、「トランプ大統領はその点に触れなかった。憎しみの言葉は常に、憎しみの行動につながる。今回のことがまさにそうだ。言葉は大事だ。特にその言葉が、合衆国大統領から出てくるときは」と指摘した。

事件のあったピッツバーグのイスラム教徒団体は、遺族支援のため募金を募り、すでに15万ドル以上を集めた。事件直後に募金を立ち上げた際の当初の目標額は2万5000ドルだったが、わずか6時間でそれ以上を集めたという。ピッツバーグ・イスラム・センターの代表は記者会見で、「何が必要か教えてください。もし次の礼拝の時に皆さんを守る人間が必要なら、教えてください。私たちがそこに行くので」と、シナゴーグの人たちに呼びかけた。

車椅子につながれ出廷

警官隊との銃撃戦で負傷したバワーズ容疑者は29日、手錠などで車椅子につながれた状態で出廷した。

トラック運転手の容疑者は、人定質問に答え、罪状を認め、自分では弁護費用を払えないと裁判官に述べた。

連邦捜査(FBI)によると、容疑者はグロック製の拳銃3丁と、半自動小銃「AR15」1丁を持ち、シナゴーグを襲った。いずれの銃も合法的に所持していたという。

暗い押入れに隠れていて助かったというバリー・ワーバーさん(76)は、「この世の嫌なことのすべてがユダヤ人のせいだなんて、なぜあの男がそう思うのか分からないが、そう思うのは彼が最初でも最後でもない」とAP通信に話した。「残念ながら、私たちはそういうものを背負わされる運命なんだ。悲しくて仕方がない」。