JR西日本、新幹線の風速体感研修を中止 至近距離で通過「恐かった」

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日本は世界で最も信頼性の高い鉄道網を持つ国の1つで、高速鉄道「新幹線」でも知られる
JR西日本は10月24日、トンネル内に社員を座らせ、最高時速300キロで通過する新幹線の風速を「体感」させる研修を中止すると発表した。
2016年に始まったこの研修について、JR西は安全意識の向上が狙いだったとしているが、労働組合の一部が中止を申し入れていた。
研修で参加者は、トンネル内の線路間にある通路にうずくまり、至近距離で通過する新幹線を観察した。
JR西日本の広報担当者はBBCの取材に対して、通路は深さ、幅共に約1メートルだったと話した。通路内に座った社員は、高速で通過する新幹線が生む風圧を「体感」したという。
1回の研修は最長で20分ほどで、これまでに約240人が参加した。
体感研修は、2015年に福岡県内のトンネルで起きた新幹線の部品落下事故を受け、2016年に始まった。事故はボルトのゆるみが原因だったと考えられており、乗客1人がけがをした。
JR西日本は、事故を受けて「車両検査に従事する技術者の技能や安全意識の向上」を意図していたと説明した。
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ただし、この研修については、労働組合の一部が中止を求めていた。
JR西日本労働組合(JR西労)はBBCに対して、昨年から8度にわたり研修の中止を申し入れていたと話した。
研修に参加した社員の一部からは、線路内の石などが飛んできてけがをしないか心配した、粉塵(ふんじん)が体にかかって大変だった、などの声があがっていた。
社員の1人は労組に対して、「バラス(線路を支えるために敷かれた小石や砂)が飛んでこないかハラハラした」と話したという。
労組の聞き取りに対し「なぜこんな研修をするのか理解できない」と語った参加者もいたという。
日本メディアによると、研修を「怖かった」「見せしめのようだ」と語る参加者もいた。
毎日新聞は「風圧がものすごく、ドンと押さえつけられるようで怖かった。研修に何の意味があるのか」との参加者の声を伝えた。
ただJR西は、研修中止の決定は外部からの圧力が直接の原因ではないとした。
同社は社員の観察位置を変更した上で、体感研修を再開する計画。参加者は今後、トンネル外の線路脇にある柵の外から新幹線を観察するという。
広報担当者は新たな実施位置について、「研修の効果がより高まる」と述べた。
取材:坪井遥(BBCニュース、東京)