前外相の弟の英閣僚、ブレグジット交渉に反発し辞任 閣僚6人目

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Image caption 運輸相を辞任したジョー・ジョンソン氏

英国のジョー・ジョンソン運輸担当閣外相が9日、辞任を表明した。翌10日にはBBCのラジオ番組で、英国は欧州連合(EU)からの離脱について「後戻りのできない愚行」をおかす前に「立ち止まって熟考する」べきだと話した。

BBCラジオ4の番組「トゥデイ」に出演したジョンソン氏は、ブレグジット(英国のEU離脱)について当初約束されていたことに対して、英政府の実際の提案は「目を見張るほど中身が及ばない」と述べ、新たな国民投票が必要だと改めて訴えた。

その上で、もし新たな国民投票が行われなければそれは「民主主義にとってとんでもない欺瞞(ぎまん)だ」と指摘した。

一方で、自分の辞任はテリーザ・メイ英首相に対するクーデターも同然だという指摘は否定した。

ジョンソン氏はケント州オーピントン選出の下院議員。7月に外相を辞任した離脱推進派ボリス・ジョンソン氏の弟だが、ブレグジットの是非を問う2016年の国民投票では残留に投票していた。

メイ首相は近く、EU側と取りまとめようとしている合意内容を閣僚に公開する予定。

ジョンソン氏は、英国はメイ首相の提案による「隷属」と合意なしの離脱による「混沌」という選択を迫られると警告した。

また、閣僚の座を退くことを「喜んで決断した」と話すとともに、他の閣僚も辞任すると思うかと言う質問には、もしそれが正しい道だと思うのなら「それはいいことだ」と答えた。

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閣僚らは今週、EUからの離脱合意草案を見るために招集されている。

メイ首相は、離脱合意は95%出来上がっていると説明している。しかし、英国・北アイルランドとアイルランドの間で国境管理を行わない保証をどのようにつけるのかについてはまとまっていない。

英首相官邸は、「どんな状況でも」2度目の国民投票は行わないとしている。

一方、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、ジョンソン前閣外相に同意するかと質問され、「同意しない。国民投票はもう済んだ。現在の問題はどうやって経済や権利の原則の元で、国民をまとめるかだ」と話した。

コービン氏はまた、労働党は下院に提出されるあらゆるブレグジット協定について政府の責任を問い、反対票を投じる可能性もあると述べた。

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Image caption メイ首相は離脱合意は95%出来上がっているとしている

ジョンソン氏は9日の辞任表明で、英国は第2次世界大戦以降で「最悪の危機に直面」しており、現在提案されていることは「何一つ、事前に約束されていたものと違う」と述べた。

「トゥデイ」に出演した際には、「私の見解では、(現在の離脱合意は)喧伝されていた内容と全く違う。もし政府が国民のところへ戻り、本当に、この尋常でなく絶望的な制度に基づいてEUを離脱したいかと聞かないのであれば、それは完全なまがい物だ」と話した。

2016年の国民投票で兄のボリス・ジョンソン氏が有権者に嘘をついていたのかという質問には、「国民投票への運動の中で、達成不可能な約束がされたのは確かだ。この点に反論の余地はない」と答えた。

「偽物の事業計画、幻想の約束ばかりだった。私たちは今、その現実に直面している。首相が間もなく議会に提出する合意案という形で」

さらに、閣外大臣として政権に参加する中で、合意なしの離脱となった場合の影響について「深い懸念」を覚えるようになったと話している。

離脱推進派のジェイコブ・リース=モグ下院議員や、デイミアン・グリーン前筆頭国務相は、2度目の国民投票の可能性を否定している。

グリーン氏はトゥデイに対し、国民投票は「決め手になるかもしれないし、ならないかもしれない」と述べ、全ての証拠が、英国が「多かれ少なかれ真っ二つに割れている」ことを示していると話した。

一方でリース=モグ議員は、ジョンソン氏は「EU離脱を阻止するため、『恐怖プロジェクト』を暖め直している」と批判した。

ジョンソン氏の退任により、ブレグジットをめぐってメイ政権を去った閣僚は6人目となった。


<解説>「ジョンソン氏は大勢がつぶやく不満を口にした」 ――ベン・ライトBBC政治担当編集委員

ジョー・ジョンソン氏の辞任は非常に大きな出来事のように思える。

残留派だった保守党閣僚が、ブレグジットについて大勢がぶつぶつぼやいていた内容を、公然と言明したのだ。

ジョンソン氏は政府の交渉を手厳しく批判し、2度目の国民投票の実施を要請した。メイ首相にとって懸念材料となる新しい横穴をまたひとつ、保守党に開けたことになる。

与党・保守党の幹事らは、多くの離脱派議員が(40人、50人、あるいはもっと?)メイ首相がEUから持ち帰るあらゆる合意案に反対するだろうと承知している。EUとの合意案では、英国とEUの関係は強くなりすぎると思っているからだ。

同時に党幹事たちは、ブレグジットの負担は大きすぎると恐れる残留派議員が、全てをひっくり返してしまう可能性も、警戒しなくてはならない。

保守党は与党だが、下院で過半数議席を持たない。それだけに、首相官邸の任務は難しくなるばかりだ。

ジョンソン氏の辞任によって、党派に関わらず2度目の国民投票が必要だと主張する人たちが勢いづいた。官邸はこれについて、あらためてきっぱり否定した。

しかし第1次世界大戦の終戦記念日の最中の辞任劇だっただけに、首相としてはジョンソン氏の辞任が他の閣僚の辞任を誘発しなかったことに胸をなでおろしているだろう。

ドミノ倒し現象は起きていない。今のところは。

しかし、首相が閣僚に提示するブレグジットの最終的な青写真を英政界が待ち受ける間、熱いやりとりの日々が続くだろう。


(英語記事 'Travesty' not to have new Brexit vote

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