英内閣、ブレグジット合意案を承認 EU離脱相は辞任表明

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
「連合王国にとって最善」 メイ首相、ブレグジット合意の閣議承認を発表

テリーザ・メイ英首相は14日夜、13日に英国と欧州連合(EU)が合意したブレグジット(英国のEU離脱)をめぐる合意案を、内閣が承認したと発表した。一方、ドミニク・ラーブEU離脱担当相は15日朝、辞任すると発表した。

5時間にわたる14日の閣議後にメイ首相は「長く詳しい、白熱した議論」だったと説明。合意案の閣議承認は「決定的な一歩」で、合意の最終決定に寄与するだろうとも述べた。

その翌朝になって、ラーブEU離脱担当相は15日朝、内閣を離れると発表した。

ラーブ氏はツイッターで、「本日、私は離脱相を辞任する。私はEUと取りまとめた合意案の内容を、良心から支持することができない」と述べ、メイ首相に宛てた書簡を公開。

ラーブ氏は、北アイルランドに関する取り決めが英国の連合王国としてのあり方を危険にさらすこと、アイルランドと北アイルランドの出入国・通関手続きを復活させないための「バックストップ(防御策)」に賛成できないことを理由に挙げた。

その上で、「提出された合意案と、前回の総選挙で我々がマニフェストを通じて国民に公約した内容を、一致させることができない。これは核心的な、国民の信用の問題だ」と書いている。

<関連記事>

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、「内閣は全体としての立場を決めたが、もちろん全会一致ではなかった。9人の閣僚が草案に反対したと聞いている」とツイートしていた。

前夜のメイ首相は

14日夜に首相官邸前で報道陣を前にしたメイ首相は、合意案は「英政府担当者による何千時間にもの厳しい交渉の成果」だと語った。

また、この合意が「英国全体にとって最も利益となる決定的な選択」だと信じていると話し、「詳細を取り除けば、我々の目の前にある選択肢は明確だ」と述べた。

「この合意は国民投票の結果を実現し、自分たちの金と法律、国境を自分たちで決める権利を取り返し、自由な移動を終わらせ、雇用と安全保障、そしてこの国の連合を守るものだ。(選択肢は)この合意か、合意なしでの離脱か、ブレグジットをやめるかだった」

閣議承認を受け、英政府は585ページにおよぶ離脱合意草案のほか、英国とEUの将来の関係についての概要を公表した。

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
ブレグジット交渉、これでもう決着? それともまだ何か

合意案の内容は?

合意案では、離脱をめぐる諸問題への対処が示された。これにはまず、在英EU市民と在EU英国市民の居住や雇用、学問の権利保障などが含まれる。

また、2019年3月の離脱移行に設けられる21カ月の移行期間や、英国がEUに支払う350億~390億ポンド(約5兆1600億~5兆7500億円)の「清算金」についても言及がある。

交渉で最も難航したのは、アイルランドと英国・北アイルランドの出入国・通関手続きを復活させないための「バックストップ(防御策)」だった。バックストップは、今後協議される英・EU通商協定でこの問題が決着しなかった場合に適用される。

英国とEUは今回、別の対策案が出てきた場合はバックストップは使わないことで一致した。

バルニエ首席交渉官は記者会見で、もし2020年7月までにこの問題が決着しなければ移行期間を延長する可能性があると説明。それでも解決しなかった場合には、バックストップが「適用される」と述べた。

バックストップでは、英・EUの共同「単一関税区域」を設けることで、国境での税関を不要とするという。

バルニエ氏は、北アイルランドがEUの単一市場のルールに則することは「厳しい国境管理を避けるのに必須」だとした上で、このバックストップ案は英国の提案を基にしていると付け加えた。

英国内の反応は?

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、「英国全土の要求を満たしていない」として、合意案が国益にかなっているとは思えないと話した。

労働党は、15日の議会で合意草案への賛否を発表するとしている。

与党・保守党内からも、英国がブレグジット後もEUのルールに縛られてしまうとの怒りの声があがっている。

ある保守党幹部はBBCに対し、15日にもメイ首相に対する不信任案を提出する可能性があると話した。

一方、リース=モグ下院議員はBBCラジオ5に出演し、合意案は英国をEUの関税同盟にとどめ、国内を「分裂」させる「腐敗した取引」だと批判した。リース=モグ氏は先に、議員らに草案に反対票を投じるよう訴える書簡を提出している。

メイ首相は内閣の承認を取り付けたものの、次は議会でこの合意案を可決させる必要がある。

メイ政権と閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)は、野党と共に合意案を批判する立場を取っている。

DUPの幹部は合意案の内容が公表されたあと、首相官邸で1時間にわたって協議を行った。

また、スコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は、「この草案はスコットランドにとって良くないものだ。英国の8倍もの規模の単一市場から引き離され、雇用や投資、生活す準を脅かす」と話した。

スタージョン氏はツイッターに、「首相と電話で会談した。首相はスコットランド『特有』の利益は守られたと言おうとしていた。私は、合意はスコットランドについて一言も触れていないし、我々の利益を軽視して、スコットランドを競争面で圧倒的な不利な立場に置いたと指摘した」と投稿した。

今後の展開は?

メイ首相は15日の議会で確実に、議員から厳しい質問攻めに遭うだろう。

一方、EU側は交渉で「決定的な進歩」があったとしている。

英内閣での承認は、11月末にも開催される予定のEU加盟国の特別首脳会議(サミット)で離脱合意を承認するための試金石だった。

EUサミットでの承認後、英政府は合意案を下院に持ち帰り、年内にも投票によって可否を問う。否決された場合、政府は代替案を示すために21日間の猶予が与えられる。

一方、合意案が可決されれば、これを元にした「EU離脱合意法案」が策定され、再び議会で可否が問われる。

可決されると合意案は欧州議会と理事会に送られる。それぞれでの承認を経て晴れて合意が最終決定され、ブレグジットを迎えることができる。

一方、英国議会で合意案や法案が否決された場合には、そのまま合意なしの離脱となるか、再交渉に入る可能性がある。また、メイ首相が辞任した上での総選挙や、2度目の国民投票が行われることも考えられる。

(英語記事 Cabinet backs draft Brexit agreement

この話題についてさらに読む