トランプ米大統領、米政府の気候変動報告「信じない」

President Donald Trump answers questions from the press while departing the White House in Washington DC on 26 November 2018

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ドナルド・トランプ米大統領は26日、米政府がまとめた気候変動に関する報告について「信じない」と発言した。米政府の関係省庁がまとめた報告書は、気候変動が米経済と米国民の健康に深刻な損害を与えると警告している。

米政府は23日、気候変動に関する報告書「第4次全米気候評価、第2巻」を発表した。「温室効果ガスの排出増加が歴史的なペースで継続していることを受け、米経済の分野によっては今世紀末までに年間損失額は数千億ドルに達する見通し」など、地球温暖化の悪化が経済活動に与える影響などを詳述している。

ホワイトハウスで記者団に、温暖化対策をとらなければ米経済が大混乱に陥るという報告書の指摘をどう思うか質問されたトランプ氏は、「信じない」と答えた。

トランプ氏は、報告書を「少しは読んだ」と答える一方、諸外国が温室効果ガスの排出量を削減する必要があると強調した。

「中国や日本やアジア全体とかほかの色々な国がやらないと。(報告書は)この国のことだが、現時点でこの国はかつてないほど清潔で、自分にとってそれは大事なことだ。だから清潔な空気、清潔な水が欲しい。とても大事だ」と、大統領は話した。

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気候変動 「1.5度上昇」の上限超える危険とは

トランプ政権は、化石燃料重視の政策を追求し、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」離脱を表明した。今年春には、米航空宇宙局(NASA)の地球温暖化ガス調査活動予算を削減した。

トランプ氏は今年10月、気候変動の危険性を警告する科学者たちには「政治的意図」があると批判。米フォックス・ニュースに、地球の気温上昇は人間活動が原因だという説を自分は受け入れていないと述べた。また2016年の大統領選中には気候変動は「でっち上げ」だと発言したものの、最近のインタビューでは「でっちあげだとは思わない。たぶん変化はあると思う」と発言を修正している。

国際的には、気候変動と気温の極端な上昇や下降は人間活動によるものだという見方が、主流の科学的知見となっている。

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民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏は、「トランプ政権は連邦政府に義務付けられている気候変動研究を感謝祭の後の金曜日に公表することで、注目を避けようとした」と批判。トランプ政権が「国民に知られたくなかったことは次の通り」と、報告書の内容を連続ツイートした。

米政府や国連パネルの警告

第4次全米気候評価、第2巻」は気候変動が米国社会に与えるかもしれない影響について報告している。

「気候変動を地球規模で大々的かつ持続的に低減し、地域規模で対応努力を重ねていかなければ、気候変動によって引き続き米国のインフラや不動産は失われ、今世紀にかけて経済成長の速度を遅らせる」と警告し、気候変動の影響はすでに国内各地で具体的に実感されており、極端な悪天候や気候関連の事態が以前より強力に頻発していると指摘している。

その一方で報告書は、社会が温室効果ガス削減に取り組み、「起きる変化に対応」すれば、将来的な大惨事の予測は変わり得るとも書いている。

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米政府報告書は、気候変動を放置すれば国内の山火事が今以上に頻発すると警告する

これに先立ち国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月、早ければ2030年に産業革命以前に比べて世界の平均気温が1.5度上昇するという特別報告書を発表した。

IPCC報告書は、気候変動を食い止めるには世界全体が抜本的で、費用負担の大きい変化を実施しなくてはならないと警告。地球全体の二酸化炭素排出量を2030年までに2010年比45%減らし、石炭使用をほぼ全て中止し、バイオ燃料作物の生産に700万平方キロを使う必要があるという内容だった。

もし人類が必要な対策をとらなければ、海面や海水温の上昇、海洋酸性化、コメや小麦など穀物の栽培能力低下などによって、人類社会に深刻な影響が生じるとIPCCは警告している。