【軍艦拿捕】 ロシア拘束のウクライナ乗務員、ロシアのテレビに 

拘束された乗組員のうち、声明を発表した3人の1人アンドリイ・ドラチ氏は、ウクライナ保安庁の職員と説明された Image copyright Getty Images
Image caption 拘束された乗組員のうち、声明を発表した3人の1人アンドリイ・ドラチ氏は、ウクライナ保安庁の職員と説明された

ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島近海でロシア連邦保安局(FSB)がウクライナ海軍艦3隻を拿捕(だほ)した問題で、FSBは27日、拘束されたウクライナ乗組員のうち3人の声明を発表した。

3人の1人、ヴォロディミル・リソヴィ氏は、ウクライナ海軍艦による行動の「挑発的な性質」に気づいていたと述べた。

ウクライナ海軍の司令官は、3人が嘘の発言を強制されていたと反発した。

一方でクリミア半島の裁判所は、25日に拘束されたウクライナ人のうち12人について、60日間の勾留を命令した。

残る乗組員は28日に出廷する予定。

西側諸国は、ロシアの武力行使を非難している。ロシアは4年前の2014年、ウクライナ南部のクリミア半島を併合した。

拿捕の危険性

今回の拿捕は近年初めての、ウクライナとロシアの真っ向からの武力衝突だった。ただし、親ロシア派の分離主義勢力とロシア軍「志願兵」は、ウクライナ東部の2州でウクライナ軍と戦闘を続けている。

<関連記事>

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
ロシアとウクライナ、海上で衝突 なぜこれほど緊迫

アゾフ海の唯一の出入り口であるケルチ海峡に今年5月、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ橋をロシアが開通させたことで、緊張は高まった。アゾフ海北岸にはウクライナの大港湾都市が2つある。また、2003年にロシアとウクライナが結んだ協定は、この海域における両国船団の自由航行を保証していた。

ウクライナ海軍の小型砲艦2隻と曳航艇1隻が、ケルチ海峡を航行中にロシア領海に侵入したと、ロシアは艦船団を非難している。しかしウクライナは、拿捕されたのは自由航行が可能な海域だったと述べている。

ウクライナはなぜ戒厳令を発令したのか

ウクライナ議会は26日夜の議決で、ロシア国境に近い10州に11月26日から30日間、戒厳令を発令するというペトロ・ポロシェンコ大統領の決定を支持した。

Image caption 戒厳令の対象地域を示した図。濃い黄色が対象地域。赤く示されているのは、ウクライナと国境を接し、モルドヴァ共和国からの分離独立を宣言している親露派勢力支配地域の「沿ドニエストル共和国」

ポロシェンコ大統領は27日、ロシアとの「全面戦争」の恐れがあると述べた。

「我々の国境に近い(ロシア)基地に配備されている戦車の数が、3倍に増えている」とポロシェンコ氏は話した。

戒厳令の発令対象となった10州のうち、5州にはロシアとの国境がある。また、2州はモルドヴァ共和国から分離独立を宣言している親ロシア派分離主義勢力の支配地域「沿ドニエストル共和国」と地続き。「沿ドニエストル共和国」にはロシア軍が駐留している。残りの3州は、クリミア半島に近い黒海もしくはアゾフ海に面している。

Image copyright Ukrainian Navy
Image caption ウクライナ海軍は、ロシアの銃撃で損傷した軍艦の写真を公開した

2014年4月以降、ロシアと国境を接するウクライナ東部の2州、ルガンスク州とドネツク州で、ウクライナ軍と親ロシア派分離主義勢力との戦闘が続いている。

ウクライナの戒厳令発令は今回が初めて。戒厳令により、軍当局は抗議運動やストライキを禁止する権限を得る。市民の兵役への動員も可能だが、確定はしていない。

乗組員の主張は

複数のウクライナ人乗組員が25日、ロシアに拘束された。少なくとも3人が負傷した。

FSBは26日深夜、乗組員3人の動画を公開した――。

  • アンドリイ・ドラチ氏は、オデッサからマリウポリへの航行命令を受け、小型砲艦「ニコポリ」に乗務していたと話した。「我々はロシア連邦の国境管理当局から、我々がロシア法に違反しているとの警告を受けていた。ロシア連邦の領海から去るよう、当局は我々に繰り返し要求した」とドラチ氏は述べた
  • セルゲイ・ツィビゾフ氏は、自分もニコポリに乗っていたと述べた
  • ヴォロディミル・リソヴィ氏は、自分は部隊長で、海軍特別部隊の一員でもあると述べた。「超短波帯を介した要請を、私は故意に無視した」とリソヴィ氏は述べた。また、船にはマシンガンや小型兵器があったと付け加えた
Image copyright Rossiya 24
Image caption ロシアに拘束された乗組員のうち声明を発表した3人について、ウクライナ海軍のイゴール・ヴォロンチェンコ司令官は「無理強いされていた」と評した。写真は声明を発表した1人のヴォロディミル・リソヴィ氏

ウクライナ海軍のイゴール・ヴォロンチェンコ司令官はウクライナのテレビ局に対し、3人は間違った声明の発表を無理強いされたのだと述べた。

「私はニコポリに乗っていたこの乗組員たちを知っている。仕事において、彼らはいつも誠実なプロフェッショナルだ。だから、今彼らが話している内容は真実でない」とヴォロンチェンコ司令官は話した。

ウクライナ保安庁(SBU)のヴァシリー・フリツァク長官は、艦艇に同庁の職員数名が乗っていたとのロシア報道を認めた。ただ、これは「定例の防諜任務」に類するもので、ロシア海軍も定期的に実施しているとした。

西側諸国の反応は

複数の西側諸国が26日、ロシアの対応を非難した。国連安全保障理事会はロシア提案の議案を認めず、代わりにウクライナの提案に基づきこの問題を議論した。

マイク・ポンペオ米国務長官は、ウクライナ軍艦の拿捕は「緊張を高める危険なもので、国際法違反」だと述べた。ドナルド・トランプ米大統領は、「この事態を歓迎しない。どちらにしてもこの事態は好ましくないし、(当事者同士による)問題解決を望んでいる」と話した。

Image caption 拿捕されたウクライナ軍艦が進んでいた経路。軍艦はオデッサを出てマリウポリに向かっていた

英国はロシアの「地域を不安定化する振る舞いと、今起きているウクライナの領土主権のロシアによる侵害」を非難した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相との電話会談で、ウクライナ側が「ロシア連邦領海における平和的航行を定めた規則をわざと無視した」と主張したと、ロシア政府が明かした。

メルケル首相の報道官によると、同首相は「緊張緩和と対話の必要性を強調した」という。

(英語記事 Ukraine-Russia sea clash: Captured sailors shown on Russia TV

関連トピックス

この話題についてさらに読む