【軍艦拿捕】プーチン氏、問題はウクライナ大統領が仕組んだと非難

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ロシアとウクライナ、海上で衝突 なぜこれほど緊迫

ロシアが25日にクリミア半島沖でウクライナ艦艇を拿捕(だほ)したことについて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は28日、問題はウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領が仕組んだものだと非難した。プーチン氏は2019年に大統領選を控えるポロシェンコ氏が、支持率上昇のために事態を引き起こしたと主張している。

国境警備を担うロシア連邦保安局(FSB)は25日、ウクライナ海軍の小型砲艦2隻と曳航艇1隻に発砲。3隻を拿捕し、乗組員を拘束した。

プーチン氏は28日、モスクワで開かれた国際投資フォーラムで、「状況を今より緊迫させるため、ポロシェンコ大統領は何かする必要があったのだ」と述べた。

ウクライナは拿捕を、ロシアによる「攻撃行為」だと非難している。

欧州連合(EU)は、「緊張の危険な高まりについて、重大な懸念」を表明。ロシアの武力行使は「受け入れられない」と述べた。ただ、新制裁については何も言及しなかった。

クリミア半島近海で起きたこと

25日にケルチ海峡付近で起きた軍艦拿捕で、ウクライナ人乗組員少なくとも3人が負傷。ロシアとウクライナの緊張は高まった。ケルチ海峡はクリミア半島近海にあり、黒海とアゾフ海を結んでいる。

ウクライナ南部のクリミア半島は2014年、武装勢力によって占拠され、その直後にロシアに併合された。

Image caption 拿捕されたウクライナ艦船団の航行経路。出典:ウクライナ国家安全保障・国防会議、ウクライナ海軍、ウクライナ紙「ウクレインスカ・プラウダ・コメルサント」

ウクライナ軍艦3隻は、ウクライナ南部オデッサから、アゾフ海にあるウクライナの主要港湾都市マリウポリに向けて航行中、ロシアFSBの監視船4隻に拿捕された。

2国は2003年、この海域を共有する協定に合意した。しかし今年になってロシアが、ケルチ海峡を結ぶ橋を開通させたため、緊張が高まっていた。

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露とクリミアを結ぶ橋が開通 プーチン氏が自ら先導

船舶のケルチ海峡通過を妨害することで、マリウポリとウクライナ領のもう1つの主要港湾都市ベルジャンスクをロシアは故意に封鎖していると、ウクライナは主張している。

クリミアの裁判所は、ウクライナ軍艦の乗組員24人全員について、2カ月の公判前勾留を命令した。

プーチン氏の発言

プーチン大統領は問題について、「間違いなく挑発だ」とし、計画したのはウクライナ政権と「2019年3月に大統領選を控える現職大統領だと思う」と語った。

ポロシェンコ大統領の支持率は低迷している。今月の世論調査では、来年の大統領選でポロシェンコ氏に投票するつもりの有権者は約10%で、何があってもポロシェンコ氏には投票しないと答えた人が50%近くいたと、ウクライナ紙キエフ・ポストは報じた。

プーチン大統領は、単なる「国境での騒ぎ」を理由にポロシェンコ大統領は戒厳令を発令したが、そのような反応は2014年にウクライナ東部で親ロシア派分離主義勢力が起こした紛争の全盛期にもなかったと指摘した。

ウクライナ側がロシアの領海に「不法侵入」したのだから、ロシアの軍事的対応は適切だったとプーチン氏は断言し、拿捕のあった海域はクリミア併合前からロシアの領海だったとも主張した。

一方のウクライナ当局は28日、ウクライナ軍艦3隻は拿捕の当時、クリミア半島領海のすぐ外に位置していたとする海図を公表した

地対空ミサイルシステム「S-400」1基を、来月クリミア半島に配備するとロシアが発表した数時間後、「このつまらない政治的騒動は次第におさまるだろう」とプーチン氏は示唆した。ロシアは今年、既に同システム3基をクリミア半島に配備している。

ウクライナの反応は

軍艦拿捕の事態にウクライナは、ロシア国境に近い複数州に30日間の戒厳令を発令した。

議会の支持を得たこの決定は、国境付近の10州が対象。ポロシェンコ大統領はテレビ局のインタビューで、ウクライナが「ロシアとの全面戦争」の脅威に直面しているとの考えを明らかにした。

ウクライナの国境警備当局は、当局が完全な戦闘準備体制に入っており、多くの新規制が発令される可能性があると述べた。

ポロシェンコ氏は当初、60日間の戒厳令を要求していたが、2019年3月の大統領選投票を遅らせようとしているのではないかとする国内の批判を受け、期間を半分に短縮。こうすれば「選挙運動開始日に戒厳令が重ならなくなる」とした。

西側各国はウクライナの主張を支持している。ドナルド・トランプ米大統領は、今月後半にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる主要20か国・地域(GG20)首脳会議にあわせて予定されていたプーチン氏との会談を中止する可能性かもしれないと述べた。

トランプ氏は米紙ワシントン・ポストに対し、「(プーチン大統領と)会談さえしないかもしれない。あの攻撃行為は好きじゃない。ああいう攻撃行為はまったく不要だ」と語った。

Image caption 戒厳令の対象地域を示した図。濃い黄色が対象地域。赤く示されているのは、ウクライナと国境を接し、モルドヴァ共和国からの分離独立を宣言している親露派勢力支配地域の「沿ドニエストル共和国」

<分析>法はプーチン氏に味方しない――ジョナサン・マーカス BBC安全保障および外交担当編集委員

ロシア政府にとって、この問題は言論合戦であると同時に、ケルチ海峡に接近する警備艇同士の物理的衝突でもある。

ロシアはウクライナが単に挑発したのだと主張している。しかし、ウクライナが発表し、西側各国の当局者が検討した、問題に関する主張の細部は、大きく異なる筋書きを示している。

11月25日の早朝にあった拿捕の数時間前、ウクライナの小型砲艦1隻がロシア当局に電話をかけ、アゾフ海に入る航行計画を通知したところからこの問題は始まった。

その約ウクライナの艦船団は銃撃を受け、さらに約18時間後、ケルチ海峡通過の計画を諦め、オデッサに戻ろうとしたところを拿捕された。

ロシアは法律が自分たち側に有利と主張する。しかし、ロシアが併合したクリミア半島近海は、いまだに国際法上ウクライナ領海だ。またロシアとウクライナは、アゾフ海の通行権を2国ともに与える協定を、長期にわたって維持している。

<現地報告>ポロシェンコ氏はなぜ臨戦体制を取っているのか――ジョナ・フィッシャー(キエフ)

ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、戦争の可能性を明言している。

国内外のテレビ局相手の複数インタビューでポロシェンコ大統領は、「ロシアが攻撃を準備しているので、ウクライナは備えなければならない」という明白なメッセージを発した。

この主張によってポロシェンコ氏が不利になる可能性はまずない。戦争が始まれば、開戦を見通せていたことになるし、始まらなければ、自分の行動が戦争を防いだのだと主張できる。

ロシアに最も近い一部地域で戒厳令が発令されている。戒厳令発令は強いメッセージとなったが、実際のところ、現場の変化はほとんどなさそうだ。少なくとも今のところ、国境地帯は開かれたままで、生活は通常通り続いている。

(英語記事 Ukraine-Russia sea clash staged, says Putin

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