COP24開幕、気候変動で「世界は岐路に立っている」
マット・マグラス環境担当編集委員(ポーランド・カトヴィツェ)

国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が2日、ポーランド南部カトヴィツェで開幕した。正式な開幕に先立ち、気候変動を抑える取り組みで重要な役割を果たしてきた過去のCOP議長4人が異例の基調講演を行い、地球が「岐路に立っている」と警告した。
COP24は、気候変動問題にとって2015年のパリ協定以来の重要な節目となる。
パリで合意した目標値を全世界的に実現するには、二酸化炭素排出量の思い切った削減が必要となるだろうというのが専門家の意見だ。
会議の進捗を確実なものにするとのプレッシャーの中、COP24の交渉官らは正式な開会式より1日前倒しで集まった。
気候変動対策で成果を上げる必要がある各国の交渉担当者は、責務の重要性から開会予定日より早く集まった。
一方で世界銀行は、各国の気候変動対策を支援するため5カ年2000億ドルの拠出を発表した。
今回会議は何が違う
今回の締約国会議(COP)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が10月、地球温暖化の気温上昇を産業革命以前比1.5度に抑える必要性について特別報告書を発表して以来、初めてのものとなる。
IPCCは、気温上昇を1.5度の目標値内に抑えるには、各国政府が温室効果ガスの排出量を2030年までに45%削減しなければならないとしていた。
しかし最近の国連研究によると、4年間横ばいだった二酸化炭素排出量は再び上昇している。
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こうした状況から過去にCOPの議長を務めた4人が2日、声明を発表。迅速な対応を求めた。
声明で元議長らは、「今後2年間の断固とした行動が極めて重要になる」と述べている。
「カトヴィツェのCOP24で各国閣僚や指導者たちがどう発言し行動するかが、今後数年の取り組みを決める手がかりとなる。パリ協定で定めた目標に世界が近づくのか(気候変動の影響を最も受ける対象の保護も含め)、または行動をさらに後回しするのか」
「行動が遅れれば遅れるほど、気候変動への対応は困難になり、費用もかかるようになる」
この声明を発表したのは、フィジーのフランク・バイニマラマ首相(COP23)、モロッコのサラフッディン・メズアール元外相(COP22)、フランスのローラン・ファビウス元外相(COP21)、ペルーのマヌエル・プルガル・ビダル元環境相(COP20)の4人。
一方で、各国が自分たちはこう対策をとっていると言う内容と、実際にどういう対策が必要なのかの落差は、かつてないほど広がっている。
「IPCC報告書は、いかなる気温上昇も問題だと言明している。後発開発途上国ではなおさらだ」と、COP24で後発開発途上国グループの議長を務めるゲブル・ジェンバー・エンダリュー氏は強調する。
「報告書はまた、地球の気温上昇を1.5度に抑えるのはまだ可能だと確認することで、いくらかの希望を与えた。ここカトヴィツェでは、目標を必ず実現できるよう、建設的に協力し合わなくてはならない」
なぜアッテンボロー氏が出席
自然番組などで知られる英国の高名な自然学者、サー・デイヴィッド・アッテンボローは、「ピープルズ・シート」(一般席)と呼ばれる席でCOP24に参加する予定だ。
この一般席は、気候変動の影響を受ける世界中の数百万人を代表する人が座るという位置づけのもの。
開会式では、一般から寄せられた気候変動に関するコメントで構成された演説を、サー・デイヴィッドが政治家たちに向かって読み上げることになる。
開会式には、29カ国の首脳や政府関係者が発言する予定だ。
2015年のパリ会議にはキラ星のごとく大勢の各国首脳が出席したので、それに比べると今回はかなり少ない。しかし恐らくそれは、多くの国が今回の会議を、重要なビッグバン的瞬間というより、問題解決への技術的一段階だと受け止めている表れだろう。
しかし中国や欧州連合(EU)などにとって、今回の会議は非常に重要だ。ドナルド・トランプ米大統領の時代にあっても、国際協力はまだ効果があると示したいところだろう。
世界平均気温の変化 20世紀平均との比較
出典:米海洋大気庁(NOAA)
二酸化炭素排出量の削減が会議の焦点?
二酸化炭素排出量の削減目標をいかに増やすかに時間を費やすのではなく、各国代表団はパリ協定を運用するための技術的なルール固めに注力するだろう。
パリ協定は2016年、記録的な速さで180カ国以上に批准されたが、実際の運用開始は2020年以降だ。
それまでに、温室効果ガス排出量の測定や報告、検証(報告の誤りを防ぐための確認作業)の方法に関する共通のルールや、気候変動ファイナンスの提供法について合意する必要がある。
英気候変動シンクタンクE3Gのカミラ・ボーン氏は、「今年のCOP交渉では、ほとんどの時間がルール作りに費やされることになる」と話した。
「驚く話ではない。パリ協定のルール作りは技術的にも政治的にも複雑な課題なので。けれども、その価値はある」
運用ルール集は現在、数百ページに及んでおり、論争になっている部分を示すカッコ書きは数千か所に上っている。
排出量の制限は?
パリ協定の下では、二酸化炭素排出量の削減について、各国が自国の行動を決めることになっている。風潮の変化や科学の緊急性が行動を促すと考える意見もある。
「COP24では、各国が2020年までにいかにして自国の目標値を引き上げるかを宣言してくれるよう、私たちは期待している。非常に重要な瞬間だ」と、自然保護団体の世界自然保護基金(WWF)のフェルナンダ・カルヴァーリョ氏は話す。
「実現するには2年は短い。各国はすぐに行動を起こさなくては」
なぜ国連手続きには時間がかかる?
カタツムリのような進捗(しんちょく)ペースへの不満は多い。活動家の間では、気温上昇の脅威がいかに深刻か、政治家がきちんと認識していないという意見もあるだけに、不満はなおさらだ。

「各国政府は、自国民を全く守れていない」。気候問題に抜本的な変化を求める社会運動「エクスティンクション・レベリオン」の広報担当者は、こう不満を漏らす。
「代わりに、政府は手っ取り早い利益や大規模な事業を追い求めてきた。これを変えなければいけない。COP24では会議の焦点が、パリ協定のルール集の技術面をできる限りしっかりしたものにするだけでなく、各政府がより大局的な視点を絶対失わないようにしたい」
国連の作業に関わる人の中には、世界が直面する最も複雑な問題の対策は前に進んでいるという意見もある。
「交渉担当者たちがこれまで実用に向けて重ねてきた懸命な努力は、確実に効果を出していると認めなければいけない」と、アヒム・シュタイナー国連開発計画(UNDP)総裁は述べた。
「現在、再生可能エネルギーの経済規模は3000億ドル(約34兆円)だ。決してちっぽけではない。これは、そう、時に厄介な気候の交渉過程によって展開してきた、エネルギー革命だ」
資金の重要性は
発展途上国の多くは、対策前進には資金面の問題解消が重要だと見ている。パリ協定は途上国の温暖化対策に、2020年以降、年間1000億ドル(約11兆3000億円)を約束している。
資金の実際に払うとなると、金持ち諸国がわざと話を引き伸ばしたりごまかしたりしていると、途上国は疑っている。資金面の話を進めることが、今回の会議の進捗のかなめになると交渉担当者たちは言う。
小島嶼国連合(AOSIS)の交渉責任者アムジャド・アブドラ氏は、「先日のIPCC報告書に含まれていた知見だが、注目されていないことがある。つまり、気候変動資金を劇的に増やさなくては、気温上昇を2度(より安全な1.5度目標は言うまでもなく)に抑制するのは、取り返しがつかないほど難しくなっていくという点だ」
開催国は石炭依存国
今回のCOP24開催国ポーランドは、石炭への依存度が高く、電力の80%近くを化石燃料から発電している。さらに、寒い時期を中心に、質の悪い石炭が家庭で暖房として広く使われており、スモッグや呼吸器疾患の原因となっている。
加えて開催都市は、石炭採掘が盛んな地域にあり、EU最大の石炭企業の拠点がある。各国交渉担当者や一般参加者にとって、このことは心配の種になっている。
しかしポーランド政府は石炭の使用を続ける方針を表明し、同国南部のシレジアに新しい炭鉱を建設するため、来年投資する計画だと発表している。
こうした強気な取り組みを糾弾する声も上がっている。
国際環境法センターのセバスチャン・ドゥイク上席弁護士は、「ポーランド政府はぜひこの機会に、誰も置き去りにすることなくエネルギー・システムの転換を保証するジャスト・トランジション(公平な移行)を受け入れて、促進してほしい」と話した。
「残念なことにポーランドのクリティカ議長は今週、COPの後援団体に石炭企業が含まれると発表した。COPがまだ始まってもいないのに非常に心配な話だ」
トランプ米大統領と米国は?
米国はパリ協定からの離脱を表明したものの、実際には2020年までは離脱できない。そのため代表団はCOP24に先駆けた一連の会議に参加しており、進捗を妨げてもいない。COP24にも参加するとみられている。
しかしながら、トランプ大統領が石炭好きで知られていることからも、ホワイトハウスは再び、化石燃料を宣伝するイベントを企画するだろうと報じられている。前回のCOPでも米国は類似のイベントを開催しており、多くの代表者から激しい怒りが上がっていた。
(英語記事 Climate change: 'World at crossroads' warning as key talks begin)