ブレグジット合意への「法的助言」全文公開 英下院さらにもめる

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英国の欧州連合(EU)離脱についてメイ英政権がEUと合意した離脱協定について、法務長官が政府に提示していた「法的助言」の全容が5日、公開された。それによると、合意協定に含まれる北アイルランド国境問題の対応法によって「こう着状態」が生まれ、EUと今後長年にわたる交渉が果てしなく続く恐れがあると、法務長官が意見を述べていたことが明らかになった。メイ政権は当初この法的助言の抜粋のみを下院に提示したため、下院は4日に政府が議会を侮辱したと動議を可決していた。

北アイルランド国境が焦点

前日の議会侮辱動議を受けて公表されたジェフリー・コックス法務長官の法的助言全文は、メイ政権がEUと合意した離脱協定における北アイルランド国境対策の問題点を指摘している。

ブレグジット(英国のEU離脱)に際して英国内で唯一EUと地続きの国境となる北アイルランドとアイルランドの国境の扱い方について、英政府とEUの離脱協定は、厳格な国境管理を避けるための「バックストップ」を取り入れている。

離脱協定で英・EUが合意した「バックストップ」は、英・EU通商協定が締結されなければ導入される。北アイルランド紛争の時代を連想させる厳格な国境管理を復活させる代わりに、英国全体が関税同盟に留まり、北アイルランドはEU単一市場の規則に従い続ける。

与党・保守党のEU離脱派は、この「バックストップ」によってブレグジット後も英国は長期間、EUの規則に縛り付けられるのではないか、英国の主権を侵害し、連合王国の一体性を損ねるのではないかと懸念してきた。

この「バックストップ」についてコックス法務長官が内閣に、バックストップが実施された状態、つまり英国が関税同盟に残り、北アイルランドはEU単一市場の規則に従い続ける状態が「無期限」で続き、英国はこの状態からEUの同意なしに出ることができなくなると助言していたことが、今回明らかになった。

11月13日付の文書でコックス長官は、バックストップの「現行文言」には「別途合意がなければ、英国全体の関税同盟から英国が合法的に離脱するための仕組みが含まれていない」と書いている。

「たとえ今後何年も交渉が続き、たとえ当事者同士が交渉は決裂し、将来的な関係取り決めを作る可能性はないと同意したとしても、(英国がバックストップから離脱できないという)状況は変わらない」と長官は指摘していた。

ただし、コックス長官はこの上で、バックストップ問題に巻き込まれる「リスク」は、英国とEUの双方が「将来的関係の恒久的基盤となる、政治的に安定した合意をまとめたいと願う、政治的・経済的な要請」と比較衡量するべきだと提案していた。

下院での議論

スコットランド国民党(SNP)のイアン・ブラックフォード英議会下院院内総務は、「法的助言は明白だ。いわく、バックストップ条項の文言では恒久のものではないと書いているが、国際法上では条項は恒久的に続く。合意を得てブリュッセルから帰国して以来、首相はわざとかどうかはともかく、下院をミスリードしてきた」と批判した。

これに対してメイ首相は、議会に誤解を与えようとした事実はないと反論し、EUとの「一時的」な関税取り決めについて自分が提案してきたことと、法務長官の助言内容に「差はない」と強調した。もしバックストップが発動した場合、英国は確かに一方的に離脱できないものの、そもそも英国もEUもバックストップの発動を求めていないので、通商協定の締結を目指すと首相は力説した。

一方で、メイ内閣と議会で閣外協力してきた北アイルランドの民主統一党(DUP)は下院で、バックストップ導入は英国にとって「壊滅的だ」と批判した。法務長官の法的助言ははっきりと、北アイルランドが英国全体から切り離され、イングランド、ウェールズ、スコットランドとは異なるEUの規制や関税ルールに縛られることになり、イングランド、ウェールズ、スコットランドとの貿易において「別の国」扱いされてしまうと反発している。

下院は11日、ブレグジット合意について議決する。下院が承認しなければ、合意は実施されない。BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長によると、11日にメイ首相は議会で大敗するのではないかとの観測が強まるなか、バックストップについて議会に監視権限を与えるなどの折衷(せっちゅう)案が一部議員の間で検討されているという。

(英語記事 Brexit: Legal advice warns of Irish border 'stalemate'

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