米上院、サウジへの軍事支援停止を決議 イエメン内戦めぐり

A bomb strike in Yemen in March Image copyright Getty Images

アメリカの上院本会議は13日、イエメン内戦に介入するサウジアラビアへのアメリカの軍事支援停止を求める決議案を採択した。また、サウジ政府によるジャマル・カショジ記者殺害について、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子に責任があるとする非難決議案も採択された。

サウジアラビアへの軍事支援停止を求める決議案には野党・民主党が賛成票を投じたほか、ドナルド・トランプ米大統領が率いる与党・共和党からも一部が造反。賛成56、反対41で採択された。ムハンマド皇太子への非難決議案の採択は全会一致だった。

1973年に制定された戦争制限法に基づき、軍事紛争から米軍を撤退させるよう求める決議案が米連邦議会で採択されたのは初めてで、歴史的な採択となった。

ただし、この決議案は象徴的な意味合いが大きく、法制化の可能性は低いとみられている。

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上院の決議内容

法的拘束力のない「戦争制限決議」は、イエメンでの戦争行為に関与する米軍を、イスラム過激派と戦闘している部隊を除いて全て撤退させるよう、トランプ大統領に求めるもの。

上院はその後、10月にあった米紙ワシントン・ポストの寄稿者カショジ氏殺害について、サウジアラビアのムハンマド皇太子に責任があり、サウジ政府は説明責任を果たすべきだとする非難決議案を全会一致で採択した。

米政府は先月、サウジ戦闘機への燃料補給停止を決めた。決議案が最終的に法制化された場合、給油再開は禁止されることになる。

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Image caption サウジアラビアとのビジネスや軍事上の関係を、トランプ大統領は一貫して擁護している

上院議員の発言

ユタ州選出のマイク・リー上院議員(共和党)と共同で決議案を提出した、ヴァーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員(無所属)は、投票結果を歓迎した。

「我々は今日、サウジアラビアの独裁的な政府に対し、サウジの軍事的冒険にアメリカは参加しないと伝える」とサンダース議員は述べた。

サンダース氏は決議案を、「アメリカ合衆国は、地球上で起きている最悪の人道危機の一部であり続けないという、世界への」合図だと説明した。

テネシー州選出のボブ・コーカー上院議員(共和党)は米MSNBCに対し、「ムハンマド皇太子が陪審員の前に立ったなら、30分で有罪評決を受けるはずだ」と話した。

この決議は法制化するのか

トランプ大統領は決議案に拒否権を行使すると明言しており、今のところ同決議案が下院を通過する可能性も低い。下院は12日、この問題に対する採決実施を否決した。

しかし、11月の米中間選挙で勝利したため、下院は来年1月下旬から民主党が多数党となる。サンダース議員は、それ以降にこの決議案が採択されるだろうと予測している。

イエメンでは、イランが支援する反政府勢力のフーシ派と、サウジ主導の連合軍が戦闘を続けており、アメリカは連合軍を支援している。決議案はこの軍事支援の価値を低下させると、トランプ政権は主張している。

ホワイトハウスの当局者は、サウジアラビアとアメリカとの経済的な結びつきを強調している。米メディアによると、トランプ氏の義理の息子で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏は、ムハンマド皇太子との関係強化を続けているという。

イエメンの最新状況

13日の決議案採択前、連合とフーシ派はスウェーデンで協議し、港湾都市フダイダでの停戦に合意した。フダイダは援助物資や輸入食品の主要な搬入経路になっている。

停戦が合意に達した後、両陣営の交渉担当者は拍手の中で握手を交わしたが、その後は両陣営とも停戦実現に懐疑的な見方を示した。

この合意が4年近く続く内戦を終了させる出発点になることを期待すると、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は話した。

国連によると、2014年に戦闘行為が始まって以降、市民数千人が殺害され、約1400万人が餓死寸前に追い込まれているという。

サウジアラビアは兵器の大部分をアメリカ、イギリス、フランスから購入している。

Image caption イエメンの勢力図。オレンジが反政府勢力フーシ派、緑がハディ政権の支配地域

<解説>もはや受け入れられない現状維持――バーバラ・プレットBBC米国務省担当特派員

米上院議員の半数以上が、サウジアラビアとの関係の現状維持をもはや受け入れられないと考えている。これが2つの決議案を通じた、強いメッセージだ。

上院議員の多くが、戦略的関係の価値を認めつつも、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指導力に大きな不安を抱いている。皇太子の対外介入に、米上院の多数派は懸念を募らせてきた。特に、イエメン内戦での人的損失についての懸念は大きい。

イエメン内戦で戦うサウジ主導の連合軍に対するアメリカの支援停止を求める決議案は、今年3月に1度否決されている。しかし、ジャマル・カショジ記者の陰惨な殺害が、状況を変えた。同盟国サウジアラビアは、アメリカは自分たちを非難しないだろうとタカをくくり、あまりにあからさまでひどすぎる行為に及んだと、多くの上院議員が受け止めている。

さらに、記者殺害を指示したのはおそらくムハンマド皇太子だと米中央情報局(CIA)が結論したにも関わらず、政権がこれを非難もせず皇太子支持の姿勢を堅持していることに、多くの議員が失望した。上院は政府がサウジに対して、格上のパートナーとして接し、越えてはならない一線を守らせるよう期待している。

トランプ政権の政策は、価値と利益のバランスを欠いているという認識が、上院での超党派の行動の多くに火をつけている。共和党幹部のボブ・コーカー上院議員は最近このように指摘した。

(英語記事 Senators vote to end US backing for Saudi war on Yemen

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