英内閣、合意なしブレグジットの準備を開始 20億ポンド振り向け

Theresa May Image copyright EPA

イギリスのテリーザ・メイ内閣は18日、離脱条件で合意せずに欧州連合(EU)から離脱するいわゆる「合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)」に向けた準備を進めることを決定した。

メイ首相は11月にEUと離脱協定を取りまとめたものの、イギリス議会での承認が得られるかどうか不確定な状態が続いている。

内閣は今回、下院議員がいかなる離脱協定も受け入れないまま来年3月29日の離脱期日を迎えた場合に備え、政府機関に合計20億ポンド(約2850億円)の準備予算を計上する。

また、国内企業14万社に合意なしブレグジットに向けて備えるべき点を示した書簡を送るほか、政府機関の支援に向け、軍部が3500人の兵士を手配することが決まった。

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ブレグジットまで100日となり、1月に下院で採決予定の離脱協定に多くの議員が反対する中、この日の閣議は通常より長い2時間半にわたり行われた。

この閣議でメイ内閣は、企業がそれぞれ適切と思われる合意なしブレグジットに向けた緊急時対応計画を実施すべきだという点で一致した。

今週末には、国境で今後必要になる変更点について示した最新の歳入関税資料が企業に送られることになっている。

また消費者に対しては、今夏に発表された合意なしブレグジット対策に慣れておくよう指示が出された。これは航空券の予約からクレジットカード利用までを網羅したものだが、向こう数週間でさらに詳細な内容が示されるという。

財務省によると、準備予算20億ポンドのうち4億8000万ポンドは内務省に割り当てられ、入国管理職員の増員や安全保障の強化に充てられる。

環境・食糧・農村地域省は4億1000万ポンドを受け取り、魚介類や食品、化学製品の貿易が阻害されないよう準備を進める。

歳入関税庁には、関税業務の増加に向けて3000人を増員するほか、国境管理の新技術に投資するため、3億7500万ポンドが振り向けられた。

また、ビジネス・エネルギー・産業戦略省には1億9000万ポンド、国際貿易省には1億2800万ポンドが割り当てられた。

これとは別にギャヴィン・ウィリアムソン国防相は、物資調達員やエンジニア、歩兵隊を含む兵士3500人が、必要に応じて出動の用意をしていると明らかにした。

スティーヴン・バークリーEU離脱担当相は、内閣は「政府の中では合意なしブレグジットへの準備は実務的な優先事項だが、全体としての最優先事項は離脱協定をまとめること」という点で一致したと話した。

また、合意なしブレグジットへの準備は「企業の方がより優先すべき問題」であり、3月29日までの14週間の間に企業向けの案内が「非常に多く」発表されるだろうと述べた。

特に合意なしブレグジットの影響を受ける可能性の高い8万社には、数日内に政府から電子メールが配信されるという。

その他の動きは以下の通り――。

  • メイ首相は、1月に行われる下院での離脱協定の審議・採決の場に、代替案を提示する意向を示していると伝えられた
  • イギリス政府が推し進めていた、移民流入数を年間10万人以下にするという目標が、最新の移民システム案から除外された
  • 最大野党・労働党が提出したメイ首相に対する不信任案は、1月まで審議されない見込み
  • イギリスの企業経営者53人は17日、メイ首相に「離脱協定を国民に届ける」よう求める公開書簡を英紙デイリー・テレグラフに掲載した。

2017年の秋季予算発表で、財務省は2018~2020年に合意なしブレグジットへの準備予算として30億ポンドを計上した。

フィリップ・ハモンド財務相は今年3月、このうち半分は20の政府機関に割り当てられ、内務省や運輸省、環境省、ビジネス省などの取り分が多くなると説明した。

18日の閣議では、政府機関が2019/20年度に受け取る新たな割り当て分と、今年度の未使用分について承認された。これらの予算は国境管理と安全保障、国際貿易といった分野に優先的に分配される。

マット・ハンコック保健相は17日、BBCの報道番組「ニュースナイト」に出演し、すでにイギリスの国民保険制度(NHS)に合意なしブレグジットに向けた十分な準備をするよう指示したと話した。

しかし、欧州議会で離脱交渉を担当するヒー・フェルホフスタット氏はツイッターで、「ジェレミー・ハント英外相のような、合意なしブレグジットを美化する人々は全く無責任だ。国民をより貧しくし、機会を奪い、権利や生活を不安定なものにすることが政治家の仕事ではない。『管理された合意なしブレグジット』などというものは存在しない」と批判した。

労働党は、合意なしブレグジットは「実行不可能」で、他党と協力してこれを阻止する姿勢を示した。

同党のジェニー・チャップマン影のEU離脱相は、「議会や多くの閣僚が反対した合意なしブレグジットに対して、政府が何十億ポンドもの税金を投じて準備しようとしているのは、メイ首相がブレグジット交渉に失敗したことの何よりの証拠だ」と述べた。

EU離脱をめぐる2度目の国民投票を求めている自由民主党は、政府が合意なしブレグジットになるという脅しで議員や企業、国民を「怖がらせようとしている」と指摘した。

ケーブル党首は、「メイ首相は無責任に時間稼ぎをして、自分の離脱協定を支持するしかない状況を作り出そうしている」と話した。

(英語記事 Cabinet 'ramps up' no-deal Brexit planning

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