米政府の一部閉鎖、年明けまで続く見込み 国境の壁めぐる議論終わらず

A sign is displayed at the National Archives building that is closed because of a US government shutdown in Washington, DC, on December 22, 2018

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国立公文書記録管理局の前には、政府閉鎖による閉館を知らせる看板が立てられた

ドナルド・トランプ米大統領が提案しているメキシコ国境の壁建設費用に関する議論が行き詰まる中、一部の連邦政府機関の閉鎖は来週になっても続く見込みだ。

連邦議会の上下両院は27日、6日前から続くに政府閉鎖を終わらせることなく数分で閉会した。多くの議員がワシントンに戻らず、この日の審議を欠席した。

与野党は壁の建設費用を連邦政府予算に含めるかどうかで対立しており、これが予算案の承認を止めている。与野党は共に、この問題は2019年まで持ち越すと受け入れたようだ。

政府機関閉鎖を受け、数十万人の連邦職員が無給休暇か、次の給与支払いのめどが立たない状態で放置されている。

何が問題なのか

トランプ大統領は、違法移民対策として米・メキシコ国境に壁を建設する方針で、この予算要求について妥協しないと述べている。

壁の建設費用が含まれない、つなぎ予算案への署名をトランプ氏が拒否したため、政府機関の大半が閉鎖に追い込まれた。

一方、1月から下院を支配する野党・民主党のほか、一部の与党・共和党議員も、トランプ氏の求める建設費用50億ドルを認めるつもりはないと力説している。

トランプ大統領はツイッターで、「南の国境に国境管理の壁が本当に必要だと、民主党はついに気づいたのか。ドラッグを、人身売買を、ギャングや犯罪者を、我々の国に入れてはいけない。(政府閉鎖で)給料がもらえていない人のほとんどが民主党支持者だって、民主党は気付いているのか?」と野党を批判した。

これに対し野党側は、大統領が政治的利益のために移民問題を誇張しており、壁よりも良い国境管理の方法があると指摘した。

ディック・ダービン上院議員(イリノイ州選出、民主党)は、「大統領による政府閉鎖には終わりが見えない。大統領は、50億ドルもする無駄で効果のない国境の壁というとんでもない要求をして、そのために政府を人質にとっている」と非難した。

政府閉鎖によって2019年の米経済見通しへの懸念も高まっており、株式市場はここ数日、乱高下を繰り返している。

なぜトランプ氏は予算を通過させられないのか

与党・共和党は現在、連邦議会の上下両院で過半数を占めており、下院は20日、壁の費用57億ドルを計上したつなぎ予算案を217対185の賛成多数で可決した。

一方、上院(定数100)で予算を通過させるには60票の賛成が必要だが、共和党の議席数は51議席。そのため、トランプ氏は民主党からの支持も必要だった。

政府機関の現在の状況は?

15ある連邦政府機関のうち、国務省、国土安全保障省、運輸省、農務省、司法省など9機関が米東部時間22日午前0時1分(日本時間22日午後2時1分)に予算切れとなり、一部閉鎖に追い込まれた。

連邦職員数千人が無給で勤務を続けるか、一時休職の扱いとなる。

実務的な影響は以下の通り。

  • 入国審査の職員は勤務を続けるが、給与支払いは遅れる見込み。空港も運営を続ける
  • 国立公園の職員の8割が自宅待機となり、公園も閉鎖される。一部の公園は職員数と稼動施設を限定して営業する
  • 住宅都市開発省の職員の9割は無給休暇扱いとなるため、住宅ローンの承認などが遅れる可能性がある
  • 歳入庁(IRS)の職員も大半が無給休暇扱いとなる。これには納税者の窓口となっている職員も含まれる
  • 食品医薬品局は通常の検査業務を停止するが、「重要な業務は継続する」としている

一方、政府機関の75%は2019年9月まで予算が残っているため、国防総省や退役軍人省、労働省、教育省は影響を受けない。

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1980年以降、予算切れのため連邦政府閉鎖が続いた日数。今回はすでに3番目の長さ(出典:米議会調査局)