EU離脱協定承認で「窮地を脱せる」 メイ英首相、新年の声明で結束訴え

Theresa May

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イギリスのテリーザ・メイ首相は1日、議会が欧州連合(EU)離脱協定を承認すればイギリスは「窮地を脱し」、「意見の違いを棚上げにできるようになる」と新年のあいさつで話した。

イギリスは3月29日にブレグジット(イギリスのEU離脱)を控えている。メイ首相は昨年11月にEUと離脱条件をまとめたが、発効にはイギリス議会の承認が必要となる。

採決は昨年末に行われる予定だったが、協定の内容に対する与野党議員からの反発が強く、メイ首相は採決を延期した経緯がある。

英下院は、今月半ばに離脱協定の採決を行う予定だ。

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メイ首相は新年の声明で、「2019年にイギリスは新たな章に突入します。私がEUと交渉した離脱協定は、英国民が国民投票で決定したことを実現するものです。議会がこの協定を承認すれば、イギリスは窮地を脱することができます」と述べた。

「2016年の国民投票で世論は分断されました。けれども私たちは全員、イギリスにとって最善を尽くしたいと考えているし、2019年は互いの意見の違いを棚上げし、共に前進し、世界中と貿易する国として、欧州の近隣諸国や世界各国と新たな強い関係を築く、そういう年になる可能性があります」

首相はさらに、合意に基づく秩序だったブレグジットが実現すれば、イギリスは住宅不足や技術教育の改善、国民保健制度(NHS)の追加予算確保といった、ブレグジット以外の課題に「エネルギーを注力」できるようになと説明した。

メイ首相は、雇用が史上最高を記録し、公的債務が縮小している中、イギリス経済の土台は強固だと述べた一方、「あらゆるコミュニティーのあらゆる国民が恩恵を感じる」ためには、なおやるべきことがあると話した。

首相官邸は、離脱協定に懐疑的な与党・保守党議員の説得など、「まだやるべきことがある」としている。

またメイ首相は、欧州各国の首脳から離脱協定のいくつかの条件についてさらなる確証を得ていく方針。これには英・北アイルランドとアイルランドの間に国境管理を設けないための「バックストップ(防御策)」などが含まれる。

野党の反応は?

最大野党の労働党は、ブレグジットの不透明感はイギリスを危機的状態に陥れており、メイ首相の離脱協定はEU離脱派も残留派も満足させないと批判している。

労働党は、1月後半の採決で離脱協定が否決された場合、政府に対する不信任案を提出して早期総選挙へ持ち込もうとしている。

一方でジェレミー・コービン党首は、ブレグジットそのものを覆すことはできないと主張してきた。

新年の声明でコービン氏は、メイ首相が「悪い協定を押し通す」のを許してはならないと発言。労働党が政権をとれば、EUと再交渉してより良い離脱条件を引き出す道を模索すると話した。

一方、野党・自由民主党の党首サー・ヴィンス・ケーブルは、ブレグジットは止められると話し、EU離脱をめぐる2度目の国民投票実施に向けて支持者に「戦い続ける」よう訴えた。