メイ英政権、19票差で信任獲得 ブレグジット協定代替案の協議へ
不信任を逃れたメイ英首相、「建設的な協力」呼びかけ
イギリスの欧州連合(EU)離脱をめぐり、政府の離脱協定を歴史的大差で否決したばかりの英下院は16日夜、テリーザ・メイ首相に対する内閣不信任案を賛成306、反対325の19票差で否決した。
メイ政権がEUとまとめたブレグジット(イギリスのEU離脱)協定に前日、反対した与党・保守党の造反議員や、メイ政権に閣外協力しながら離脱協定には反対した北アイルランドの民主統一党(DUP)の議員10人は、メイ首相の留任を支持した。DUPがメイ首相続投に反対していたら、内閣不信任案は1票差で可決されていた。
最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首が提出した内閣不信任案には、スコットランド国民党(SNP)や自由民主党を含め、全野党が賛成した。
不信任を免れたメイ首相は下院に対して、「この院はこの政府を信任しました。私はブレグジット実現のためこの院のあらゆる議員と協力し、この院が英国民の信任を維持するよう努めます」と表明し、「国民投票の結果を実現し欧州連合を離脱すると、国民に真剣に約束しました。その約束実現のため努力を続けます」と述べた。
内閣不信任案に反対多数の結果が読み上げられ、下院議長が否決を宣言した
その上で首相は、野党各党の議会幹部に、ブレグジットの進め方を協議するため個別に会談したいと求めた。ただし、その会談には「建設的な心持ち」で臨むよう呼びかけた。
「交渉可能で、この下院から十分な支持が得られる解決策を見つけなくてはなりません」と首相は述べた。
首相はさらに、前日に否決された離脱協定に代わる代替案を、21日に下院に提出するとあらためて約束した。
「ブレグジット実現の義務」
メイ首相は不信任案否決後、ダウニング街の首相官邸前で演説し、「ここウエストミンスターではない場所で日々を送っている方たちは、この24時間の出来事に不安を抱いたことでしょう。分かります。英国民の圧倒多数は、私たちにさっさとブレグジットを実現するよう求めているし、自分たちに大事な他の課題に取り組むよう求めています」と述べた。
首相はさらに、「欧州連合を離脱しなさいと英国民が指示する内容を実現するのが、自分の義務だと私は考えていますし、そうするつもりです」とあらためて表明した。
<関連記事>
首相はこの演説に先立ち、スコットランド国民党(SNP)や自由民主党、プライド・カムリ(ウェールズ党)の幹部と会談したが、労働党のコービン党首はダウニング街の首相官邸を訪れていない。
首相官邸前で演説したメイ首相は首相官邸前の演説で、野党幹部との協議は今のところ「建設的」で、「労働党の党首が今のところ協議に参加しようとしないのは残念ですが、私たちの扉は開いています」と述べた。また今後数日の間に、自分や他の政府幹部が複数の下院議員と会談し、「議会内の幅広い意見を出来る限り」聞き取るようにする方針を示した。
EUは「イギリスがどうしたいのか知りたい」 ブレグジット協定否決
労働党のコービン党首は、「前向きな協議」実施の前提条件として、まず首相が「合意なしブレグジット」の可能性をきっぱり排除する必要があると主張している。
コービン党首は採決に先立ち、メイ首相の「ゾンビ的」政権は、政権運営の資格を失ったと批判していた。不信任案が否決されると、コービン氏は「前向きな協議」を実現するには、まず首相が「合意なしブレグジット」はあり得ないと言明すべきだと求めた。
「政府はきっぱりと、破局的な合意なしEU離脱の展望と、それによって起きるあらゆる混沌(こんとん)の懸念を取り除かなくてはならない」とコービン氏は求めた。
コービン氏の広報担当は後に、首相官邸から会談について接触があったが、コービン氏が16日の間に首相官邸に向かうことはないと明らかにした。
コービン氏に対しては労働党や他の野党から、2度目の国民投票を支持するよう圧力が高まっている。
EU残留を支持するSNPのイアン・ブラックフォード院内総務は、首相との会談後に、「誠意をはっきり示してもらいたい」と首相に書簡を書き送った。
ブラックフォード議員は、ブレグジット手続きを発動したリスボン条約50条の一時停止と、2度目の国民投票の可能性が、今後の協議継続の前提条件となると述べた。
ブラックフォード議員は他の野党首脳と共にコービン労働党党首にも書簡を送り、労働党として正式に2度目の国民投票実施を支持するよう求めた。
プライド・カムリのリズ・サヴィル・ロバーツ院内総務は、首脳会談には建設的に臨んだものの、首相には「会談のための会談になってはならない」と伝えたという。
「大混乱したブレグジット騒ぎに本物の解決法をなんとしても見つける。それには、合意なしブレグジットの可能性を排除して、この国の欧州での未来のため国民の投票を実施することだ」と、サヴィル・ロバーツ氏は述べた。