合意なしブレグジット 英ドライバーはEUで違法状態に?

サイモン・リード記者

Cars in Paris

画像提供, Reuters

イギリスの欧州連合(EU)離脱が3月29日、離脱条件についてEUと合意のないまま現実のものとなった場合、EUで運転するイギリスのドライバーはただちに違法状態になる危険がある。

イギリスのEU離脱(ブレグジット)が合意なしで実施された場合、イギリス人は個別にグリーンカードを取得していなければ、EU圏内を無保険で運転していることになる。ここで言うグリーンカードとは、EU圏外で登録された自動車がEU内を自由通行するための自動車損害賠償責任保険の証明書のことだ。

イギリスの一部の北アイルランドから、陸続きの国境を越えてアイルランドに車で乗り入れた際にも、これが必要になる。

英保険協会(ABI)は、グリーンカードが必要となる1カ月前には申請が必要だと念押ししている。

欧州の保険当局は昨年5月、もし合意なしブレグジットとなってもイギリス発行の運転免許をもつドライバーに対して、グリーンカードを免除する用意があると合意した。しかし、EUの政策執行機関、欧州委員会はこれを確認していない。

このため、合意なしブレグジットの場合はEU規則に従い、イギリスのドライバーは自賠責加入の証明としてグリーンカードを持っていなくてはならない。保険証不携行の運転は違法行為にあたる。

どういう場合に影響が

合意なしブレグジットの場合、次のようなドライバーはグリーンカードが必要となる――。

  • 北アイルランド・アイルランド間の国境を運転して越える場合
  • イースター休暇をフランスで過ごすなど、自動車で欧州入りする場合
  • EUに大型トラックなどで貨物を輸送する運送会社

ABIのヒュー・エヴァンズ事務局長は、「合意なしブレグジットになる可能性が高まる情勢なだけに、これが自分にどう影響するのかすべての保険契約者に知ってもらいたい」と話す。

旅行保険については、イギリス人もEU圏内で一定の無料診療が受けられる欧州健康保険カード(EHIC)に代わるものがなかったとしても、保険の適用に大きな変化はないはずだが、「必ず旅行保険の条件を確認するように」とエヴァンズ氏は強調する。

合意なしのブレグジットの場合、イギリス人はEU圏内で国際運転免許証(IDP)が必要になる可能性もある。英政府は2月1日以降、国内2500カ所の郵便局でIDPの発行を開始する。

イギリスから欧州へ運転する人数は

  • 北アイルランド経済省によると、乗用車やバス、大型貨物車などが毎年延べ1億1000万回、北アイルランドとアイルランドの国境を通過している
  • 2017年には英仏海峡トンネルを走るカートレイン、ユーロトンネル・シャトルが延べ160万台のトラックと260万台の乗用車を往復で運んだ
  • 2017年には、グレートブリテン島から欧州に移動した大型貨物車は240万台、グレートブリテン島から北アイルランドに移動した大型貨物車は37万台