侮辱? 抗議? 誤解? トランプ帽の白人高校生と米先住民長老に何が

A student from Covington Catholic High School stands in front of Native American Vietnam veteran Nathan Phillips in Washington DC, 18 January 2019 Image copyright Kaya Taitano/Social Media/Reuters
Image caption 赤いトランプ帽をかぶった高校生と太鼓を叩く先住民長老は共に、その場を鎮めようとしていたと話す(18日、ワシントン)

米ワシントンのリンカーン記念碑前で複数の団体がそれぞれの抗議集会を開く中、高校生の集団と米先住民長老が対決するかのように向き合う動画がソーシャルメディアなどで拡散し、何があったのかについて論争になっている。当初は白人の高校生たちが元米兵の先住民長老を取り囲み野次を飛ばして侮辱したと、ソーシャルメディアで強く非難されたが、それに対して高校生は他の団体に侮辱されたのは自分たちの方で、自分たちは長老を侮辱などしていないと反論している。

記念碑前では18日、人工中絶反対のデモ行進に参加したケンタッキー州のコヴィントン・カトリック高校の生徒たちが集まっていた。生徒の大多数は白人で、多くはドナルド・トランプ米大統領が支持者の間に広めた「アメリカをまた偉大にしよう」帽子をかぶっていた。

最初に拡散した動画では、生徒たちが先住民オマハ族のネイサン・フィリップス長老を取り囲み、嘲笑しているかのように見えた。ほほ笑みを浮かべてフィリップスさんの目の前に立ち続ける高校生が、特に無礼だと非難が集まった。

これに対して、現場を撮影した別のビデオが浮上し、周りには他の団体がいたことも判明。また、ほほ笑みを浮かべていた生徒のニック・サンドマンさんは21日に名乗りを上げ、自分は長老を侮辱などしていないとコメントを発表した。

何があったのか

ワシントン記念碑の前には、フィリップス長老のほか多くの米先住民が、先住民の権利尊重を呼びかける行進を終えて集まっていた。

現場にはほかに、「ヘブライ・イスラエル人」を名乗る黒人男性の集団がいた。後から明らかになった動画ではこの集団が、コヴィントン高校の生徒たちを罵倒したり、先住民たちを侮辱したり、その他の人たちにも罵声を浴びせる様子が映っている。

黒人男性たちが怒鳴り続けると、一部の生徒たちがスローガンを一斉に叫び始め、生徒の1人が上半身裸になった。

するとフィリップス長老は歌を歌い太鼓を叩きながら、生徒たちに近づいた。フィリップスさんは、その場を鎮めるための祈りだったと説明している。

すると生徒たちが長老を取り囲んだ。中には歌ったり、スローガンを繰り返し叫ぶ生徒もいた。サンドマンさんはフィリップス長老の目と鼻の先に立ち、ほほ笑み続けた。周りでは生徒たちが笑い、叫び、手拍子を続けた。

サンドマンさんとフィリップス長老が向かい合って立つ様子を移した短い動画がソーシャルメディアで広まると、生徒たちが無礼だと大勢が非難した。付き添いの大人たちにも非難が集まった。

コヴィントン・カトリック高校はフィリップス長老に謝罪した上で、事実関係を調べ「場合によっては退学も含めて適切な対応をする」とコメントした。

カトリック団体「慈善修道女会」も、「先住民への差別に満ちた無礼」な行動だと生徒たちを批判した。

一方で、生徒たちへの批判は不当だと反論する声が上がり、全体状況を映した動画を探す動きが始まった。その結果、「ヘブライ・イスラエル人」が生徒たちに罵声を浴びせる様子や、フィリップス長老が生徒たちに近づく様子をとらえた動画が表面化した。

PR会社を通じて声明を発表したサンドマンさんは、自分と家族について「真っ赤なうそ」が広められており、自分は殺害脅迫も受けたとコメントした。

ほほ笑む高校生の説明

サンドマンさんによると、アフリカ系アメリカ人の集団は自分たち生徒を、「人種差別主義者」で「近親相姦の子供たち」と呼んだのだという。

「公の場で自分たちが大声で攻撃され嘲笑されていたため、生徒の1人が引率の先生に、自分たちに向けられているひどい罵倒に対抗するため、学校の祈りのシュプレヒコールを始めても良いかと許可を求めた」

すると、太鼓を叩いていたフィリップス長老を含めて複数の先住民たちが自分たちに近づいてきたのだという。

「誰も(フィリップスさんの)前にたちはだかったりしていない」

「あちらが僕と目線を合わせて、数センチ先まで近づいてきた。僕の目の前に立ちながらずっと太鼓を叩いていた」

「正直言って、なぜこの人が僕に接近したのか驚いて、混乱していた」

「先住民の抗議者の行く手を自分が阻んでいるとは、感じなかった。僕の周りをよけて通ろうともしなかった(中略)僕はわざと抗議者に向けて変な顔をしたわけではない。僕が一度ほほ笑んだのは、自分は怒ったり怯えたりしないし、挑発されて対立を悪化させるつもりもないと、知ってもらいたかったから」

「この人が抗議し、表現の自由として行動する権利は尊重する(中略)他人の個人的スペースに侵入してくる戦術は再考すべきだと思うが、それはあの方の決めることだ」

「僕は手で合図したり、威圧的に動いたり、何もしていない。まったく身動きせず、落ち着いてふるまえば、あの場の沈静化を助けると思った」

その場いた他の人は何と

サンドマンさんは、自分たち生徒は学校の掛け声を繰り返していただけで、人種差別や憎悪の発言は聞いていないと主張する。

一方で、生徒たちに囲まれた後のフィリップスさんは別のビデオで、動揺した様子で、生徒たちが「あの壁を作れ」と叫ぶのを聞いたと主張した。

Image copyright Reuters
Image caption 先住民の土地へのパイプライン敷設に抗議するフィリップスさん(2017年2月、ノースダコタ)

明らかになっている現場の動画では、生徒たちが「壁を作れ」と叫ぶのは確認できなかった。先住民行進に参加した他の2人と、行進を撮影していた写真記者が米メディアに、「壁を作れ」「トランプ2020」と繰り返し叫ぶ複数の声を聞いたと話している。

フィリップスさんはAP通信に、自分がリンカーン大統領像の前で祈ろうと記念碑に近づこうとしたところ、生徒に行く手を阻まれたと話した。

「生徒たちはお互いに(中略)『うちの州だと、こいつらインディアンはただの酔っ払い集団だ』などと言いあっていた」とフィリップスさんは述べた。

最初に広く拡散した動画を撮ったカヤ・タイタノさんはCNNに、「自分はあの輪の中にいて、身の危険を感じた(中略)生徒たちは(フィリップス長老を)取り囲んで嘲笑していた」と亜hなした。

フィリップスさんに同行していたマーカス・フレジョさんは米紙ニューヨーク・タイムズに、生徒たちが先住民の掛け声を馬鹿にするような音を出していたと話した。生徒たちが歌うのを聞いたとも話している。

米報道によると、生徒たちはハカ(ニュージーランド・マオリ族の民族舞踊)の真似をしたり、トマホーク・チョップのような真似をしていたという。先住民が斧(おの)を振り下ろす動作を真似したトマホーク・チョップは、アメリカではスポーツ応援などによく使われるが、先住民の多くはきわめて侮蔑的だと反発する仕草。

さらに、生徒たちを罵倒する様子が動画に映っていたアフリカ系男性の集団「ヘブライ・イスラエル人」の1人はフェイスブックに投稿した動画で、「先にやった」のは生徒たちだと主張した。

この男性は、生徒たちが「対話をしていた自分たちを馬鹿にした」と批判し、自分たちは確かに声を上げていたが、生徒たちに「近づかなかった」し、体を使った示威行動はしていないと述べた。

なぜここまで対立先鋭化

アメリカとアメリカ政治には近年、深い亀裂が走っている。

先住民たちは、トランプ大統領が民主党上院議員を罵倒する際に先住民の名前を嘲笑に利用していると非難している。トランプ氏はこのほか、メキシコ人や移民、イスラム教徒への極端な発言を批判され、また白人至上主義者の集会に抗議する人が殺害された際には「双方」に責任があると発言して強く非難された。

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トランプ氏、米先住民称える行事で「ポカホンタス」をネタに

「トランプ!」という叫びが人種差別的な合言葉になっているという意見もある。またトランプ氏の相次ぐ発言によって人種差別的発言をしたい人々が勢いづいているという指摘もある。

これに対して、多くのトランプ支持者や保守グループは、左派勢力やマスコミが自分たちを不当に攻撃していると強く反発し、今回の件で高校生たちが非難されたのもその一例だと力説している。

ケンタッキー州選出のトマス・マッシー下院議員(共和党)は、「(マスコミが見せない)全体状況からして、あの子供たちの保護者や先生たちが、子供たちを誇りに思うべきだ。恥じるのではなく。子供たちを代表できて光栄だ」とツイート。生徒たちを擁護したトランプ氏に感謝している。

(英語記事 US teen denies mocking Native American

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