トランプ氏、連邦政府の一時再開を受け入れ 2月15日まで

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ドナルド・トランプ米大統領は25日、昨年末から続く連邦政府機関の一部閉鎖をいったん中断した。政府閉鎖が史上最長の35日目に入り、公務員の給与未払いが続く中、主要空港の一時閉鎖など様々な影響が出ていた。

トランプ氏は記者団を前に、連邦政府機関に2月15日までのつなぎ予算を確保する予算案に合意したと発表し、「とても誇らしい」と強調した。

昨年12月22日以来、無給だった連邦政府職員80万人を大統領は「素晴らしい愛国者」と呼び、未払いの給与はさかのぼって全額支給すると述べた。

連邦議会の上下両院は同日、政府を一時的に再開するための予算案を満場一致で可決した。

ロイター通信は政権筋の話として、政府予算切れによって連邦捜査局(FBI)などの活動に支障が出ていることから、トランプ氏は政府再開に応じたと伝えている。

24日にはジョン・ケリー前大統領首席補佐官と4人の国土安全保障長官経験者が連名で、大統領と議会に公開書簡を送り、国土安全保障省の予算を復活させるよう呼びかけていた。ケリー氏たちは、同省職員たちが国の安全保障にかかわる職務を無給で続けているのは「良心に反する」ことだと主張し、国家公務員が「家族の食事を確保し生活費を工面するため、人の慈善に頼らなくてはならない」などあってはならないことだと訴えていた。

トランプ氏は大統領選で公約した南側国境の壁の建設費用をめぐり、連邦予算から57億ドルを要求していた。しかし、昨年11月の中間選挙で連邦議会下院を奪還した野党・民主党は、政府予算を使うのは公約違反でそもそも巨大な壁は費用がかかるだけで不法移民防止の効果が期待できないと強硬に反対した。これに対してトランプ氏は、壁の費用が含まれない予算案は承認しないと対抗し、12月22日から約25%の政府機関が予算切れとなった。このため、80万人の政府職員が無給となった。

政府再開を可能にした今回の予算措置に、壁の費用は含まれていない。

この日のトランプ氏は、「非常に強力な代替案」はまだ使うつもりはないと述べた。これは、議会の予算決定権を迂回(うかい)するための国家非常事態宣言のことだと受け止められている。

大統領が非常事態を宣言すれば、軍事予算を壁の建設に回せるかもしれないが、そのような方法を使えば憲法解釈上の大問題となり、無数の訴訟が予想される。

しかし大統領は、「強力な壁か鉄のバリヤーを作るしか、ほかに手はない。議会から公平な案が出てこなければ、政府はまた2月15日に閉じるか、あるいは合衆国の法律と憲法によって自分に与えられた権限を使ってこの危機に対応するか、どちらかだ」と警告した。

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Image caption 民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長(手前)とチャック・シューマー上院院内総務(後方右)

ペロシ下院議長が勝ったのか?

AP通信が24日に発表した世論調査では約6割が、政府閉鎖の責任はトランプ氏にあると答えていた。この調査によると、トランプ氏の支持率は34%で1カ月前の42%から下落している。

また同じ24日には、富豪のウィルバー・ロス商務長官が、給与未払いの連邦職員は銀行ローンを組めば良いのであって、なぜフードバンク(福祉団体による食糧提供支援事業)を使う必要があるのかとテレビで発言し、大勢に非難されていた。ロス長官の発言について、民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、「まるで『だったらお菓子を食べればいいじゃない』的な態度だ」と批判した。

トランプ大統領が壁の建設費を確保できないまま政府再開に応じたことで、民主党の下院議員が「一般教書演説は(大統領ではなく)ペロシ議長がするべき。この国を動かしているのは、明らかに彼女なのだから」とツイートするなど、支持者は諸手を挙げてペロシ氏を称賛している。

保守派の間でもペロシ議長の勝利を認める声が出ており、多くのトランプ支持者がフォローする保守派論客のマイク・サーノヴィッチ氏は、「トランプはもうだめだ。彼はもうおしまいだ」とツイート。大統領は自分ほり上手な「アルファ」な下院議長にしてやられたのだと書いた。

移民受け入れに反対する保守派メディアのドラッジ・リポートやブライトバート・ニュースは、壁の建設費が確保できていないと赤い太文字の絶叫調で非難した。

右派論客のアン・コールター氏は、トランプ氏を「史上最低の弱腰大統領」だとツイートした。

フォード政権(共和党)、カーター政権(民主党)、クリントン政権(同)で労働長官を務めたロバート・ライク氏は、トランプ氏が「うそをつき、恐怖をあおり」「かんしゃくを起こした」ものの、「何も手に入れられず」「それでも勝利宣言した」とツイートした。

空港も一時閉鎖

25日は政府部分閉鎖から2度目の給料日だったが、国家公務員約80万人がまたしても給与を受け取れなかった。

無給状態で働き続けていた多くの航空管制官が25日朝、病気を理由に欠勤したため、米国各地の空港で数百便がキャンセル、もしくは遅延した。

連邦航空局(FAA)はニューヨークの主要空港のひとつ、ラ・ガーディア空港の着陸受け入れを1時間ほど停止していた。FAAによると、ほかにニュージャージのニューアーク・リバティ国際空港やフィラデルフィア国際空港でも、職員不足のため発着に遅れが出た。

空港警備を所管する米運輸保安庁(TSA)は、業務レベルに影響はないと主張していたが、政府閉鎖の長期化に伴い現場の担当官たちの「病欠」や退職が相次いでいた。

アメリカでの1日のフライト数は4万3000便だが、勤務可能な有資格者の航空管制官が激減し、1人あたりの勤務時間が長くなるなど、しわ寄せが出ていた。

23日には全米の管制官と操縦士と客室乗務員の団体が、「現在のリスクがいかに深刻か計算さえできないし、どの時点でシステム全体が破綻するか予測できない。前例がない」と共同声明を出した。全米客室乗務員連合のサラ・ネルソン会長は、政府閉鎖を終わらせるため、全国的なゼネストの実施を呼びかけていた。

航空への影響以外でも、無給のままで職場復帰を命令された内国歳入庁(IRS)職員1万4000人が25日、一斉欠勤したと米紙ワシントン・ポストが伝えた。

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米連邦政府閉鎖で給与未払い…子供が生活のため絵を売ると

犯罪捜査や沿岸警備にも影響

犯罪捜査への影響については、全米各地の連邦捜査局(FBI)支局が、予算枯渇のため業務破綻寸前だと報告していた。

FBI捜査官協会のトマス・オコナー氏は、「FBI捜査官の仕事を支えるために必要なリソースは破綻寸前のギリギリな状態で、日に日になくなりつつある」と声明を出していた。

同協会の報告によると、政府閉鎖によって犯罪捜査、対テロおよび諜報活動に影響が出ており、デリケートな捜査が遅滞し、日々の基本業務にも影響が出ていたという。

FBIのクリストファー・レイ長官は25日、職員あてのビデオメッセージで、「自分がこれほど腹を立てるのは、本当に久しぶりだ」と述べ、政府閉鎖がFBIに与えた影響は「頭がくらくらするほどで、目先のことしか見えていないし、不公平だ」と憤っていた。

沿岸警備隊のカール・シュルツ長官は、「日々の暮らしを乗り切るために沿岸警備隊の隊員が食糧配給や寄付に頼らなくてはならないなど、受け入れがたい」、「軍の一員の諸君がこのような負担を強いられるなど、あってはならない」とツイートした。

ワシントン州選出のデレック・キルマー下院議員(民主党)は23日、米紙「ヒル」に対して、自分の選挙区の沿岸警備隊用に設けられた食糧配給所はすでに食糧の備蓄が底をついたと話していた。

沿岸警備隊は今月初め、文民職員に「一時帰休中のやりくり」アドバイス集を配布。自宅でフリーマーケットを開いたり、趣味を実益に変えるなどの助言が並んでいる。

米紙ワシントン・ポストによると、沿岸警備隊の職員は給与未払いに加え、不動産価格の高い海沿いに住むための住宅費補助も受け取れずにいた。

このほか、多数の政府系公式サイトで、セキュリティー証明書が有効期限を過ぎたままだった。司法省、控訴裁判所、航空宇宙局(NASA)などの公式サイトが影響を受けている。

インターネットの公開サーバなどを調べる英ネットクラフトによると、米連邦政府サイトのドメイン「.gov」を使う80以上のサイトで、セキュリティー証明書が失効していた。

食品安全やハリケーン対策にも

食品医薬品局(FDA)は、不可欠な業務以外は中断していた。このため、ほとんどの食品検査が中止され、危険な食品への懸念が国内に広がっていた。

FDAのスコット・ゴットリーブ長官は23日、「まったく通常通りではないし、通常業務の一部が行えていない」と米NBCニュースに話していた

移民申請手続きも中断した。米シラキュース大学によると、11日現在で移民申請4万2000件以上の審理が中断された。調査によると、中断件数は毎週2万件ずつ増え続ける見通し。現時点ですでに80万件が審理されないまま、山積みされている。

移民審査判事協会のデイナ・リー・マークス判事は公共放送PBSに対して、移民裁判所の受理件数はただでさえ増加しており、審理の無期限延長は「壊滅的な影響」をもたらすと述べた。

昨年夏のアメリカは相次ぐハリケーンで甚大な被害が出たが、海洋大気庁(NOAA)は今年のハリケーン対策を先延ばしする羽目になった。

予報モデルの更新、非常事態訓練、屋外実験などはすべて中断された。

国立ハリケーンセンターの研究者、エリック・ブレイクさんはツイッターで「ハリケーンの季節はまだまだ先だから大丈夫だとみんな言うが、それは大間違いだ」と書いていた。

(英語記事 Trump accepts deal for temporary end to painful shutdown

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