ホンダ、英工場を閉鎖へ 3500人が失職の見通し

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ホンダは19日、2021年に英イングランド・ウィルトシャー州スウィンドンの生産工場を閉鎖すると発表した。世界の自動車産業を取り巻く急激な環境変化と、電動化の加速に対応する生産体制の適正化の必要があると説明している。これにより、3500人が失職する見通し。

工場閉鎖については英スカイニュースが18日に報じ、イギリス国内に衝撃が走っていた。

スウィンドンの工場では昨年、「シビック」を16万台生産したが、その90%は欧州連合(EU)に輸出された。

ホンダ欧州法人のイアン・ハウエルズ上級副社長はBBCの取材に対し、「我々は世界規模でこれまでにない業界の変化に直面している。顧客の需要と規制を受け、速やかに車両の電動化を行わなければならない」と話した。

また、「これはブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)問題とは関係なく、グローバルな変化についての決定だ」と述べた。

「我々はブレグジットを常に克服すべき問題と捉えてきたが、世界規模の変化は対応しなくてはならないものだ。スウィンドンのコミュニティーに与える影響については残念に思っている」

ホンダは、この日付で労使間での協議を開始したことも明らかにした。

ホンダのスウィンドン工場とは

スウィンドン工場の敷地は元々、飛行場だった。

ホンダは1985年にこの敷地を購入し、欧州拠点として操業を開始。最初は納入前の乗用車の検査をしていた。

1989年にはエンジン製造を始め、1992年には自動車の製造ラインが加わった。これまでに「アコード」、「ジャズ(日本名:シティ)」、「CR-V」、「シビック」などを生産してきた。

2001年には工場を拡大し、年間の生産能力を25万台まで引き上げている。

イギリス国内の反応

ホンダの正式発表前、イギリス最大労組のユナイトは、もし正式に発表されればこのニュースは「衝撃的なボディーブローだ」と述べた。

ユナイトのデズ・クイン氏は、「イギリスの自動車産業は過去20年間、製造業の中でも最も重要な位置を占めていた。だが今は、メイ首相の融通の利かない方針が作り出したブレグジット(イギリスのEU離脱)の混乱と先行き不透明感に貶められてしまっている」と話した。

また、従業員とその家族に「甚大な」影響が出るだけでなく、「イギリス全土に広がるサプライチェーンに関わる何千人もの雇用にも影響する」と指摘した。

リアム・フォックス国際貿易相は、欧州全土で新しいディーゼル排出規制が施行されて以降、乗用車の需要は落ち込んでいると指摘し、「消費者からの大きな需要減退がメーカーにも影響を及ぼしている」と話した。

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ブレグジットが原因?

発表前にホンダ側と話したというスウィンドン選出のジャスティン・トムリンソン下院議員(保守党)はツイッターで、「ホンダは、この決定は世界的な業況に基づいたもので、ブレグジットが原因ではないと明言している。欧州市場向けの生産は全て、2021年に日本に集約される」と述べた。

自動車業界はこのところ、中国での需要減退やディーゼル車の低迷に悩まされている。

ホンダのスウィンドン工場では、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方を生産している。

しかしスカイニュースは、ホンダはブレグジット後に新たな関税が課されることを懸念しており、ブレグジットも工場閉鎖の要因のひとつだ伝えている。

ブレグジットをめぐっては、自動車メーカー各社から関税や製造、輸出面について懸念の声が挙がっている。

1月には英ジャガー・ランドローバーが人員整理を発表し、米フォードも2021年までにイギリスでの人員を減らすと報じられた。

2月には日産自動車が、ブレグジットの不透明感で「将来の見通しを立てられない」ため英サンダーランド工場での「エクストレイル」の次期モデル製造を撤回。トヨタ自動車も、合意なしブレグジットになった場合は人員整理の可能性があると述べている。

高級車の独ポルシェは先に、ブレグジット後にイギリスでの販売価格に最大10%の関税を上乗せする可能性があると発表した。

ホンダも合意なしブレグジットを懸念

ホンダは昨秋、ブレグジット交渉の結果に関わらずイギリスでの生産に注力すると話していたばかり。

しかし今年1月には、ブレグジット後の混乱に対処するため、スウィンドン工場を4月に6日間閉鎖する可能性があると発表した。

これは「物流や国境管理に関するあらゆる結果」に対処できるようにするための措置だという。

また、もし部品が国境で立ち往生した場合は、それによって減った生産の回復を助けるとしている。

ハウエルズ上級副社長は昨年、合意なしブレグジットとなった場合、ホンダは何千万ポンドもの追加コストを追うことになると警告。BBCの取材はあ、合意なしブレグジットでは、ホンダの欧州での競争力に影響が出ると話していた。

日本とEUの経済連携協定(EPA)の影響か

日本とEUのEPAが2月1日に発効した。これにより、双方で輸入車の関税が撤廃される。

英業界誌「オートカー」のジェイムズ・アトウッド副編集長は、これがホンダの決定の決め手になったのではと話した。

「EPAにより、ホンダは製造拠点の大半がある日本国内で車を製造し、これまで支払っていた輸入関税を払わずにEU加盟国へ輸送することができる。イギリスに工場を置く理由が一つ減った格好だ」

BBCのサイモン・ジャック・ビジネス編集長も、EPAによって「EU域内に製造拠点を置く根拠が薄れている」と指摘した。

「スウィンドン工場での生産台数はここ数年減っており、現在は生産能力の半分しか使われていない。EPAは、工場にとってはさらなる打撃だ。それでもやはり、日本企業は長期的な投資家だ」

「ソニーもパナソニックも、欧州本部をEU域内に移した。どちらもその理由は少しずつ違う。しかし日本人の多くは、イギリスがブレグジットに確実性をもたらせなかったことが、両国のつながりを弱くしてしまったと感じている」

(英語記事 Honda set to close Swindon car plant

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