ヴェネズエラの離反兵士、マドゥロ政権下の「家族が心配」と BBC単独取材

A group of defectors, with their faces blurred, speaking to the BBC
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隣国コロンビアへと逃れた複数のヴェネズエラ軍兵士がBBCの単独インタビューに応じた

23日に政治経済の混乱が続く南米ヴェネズエラから隣国コロンビアへと逃れたヴェネズエラ軍兵士が、BBCの単独取材に応じ、マドゥロ大政権下のヴェネズエラに残る家族の無事を案じていると語った。

BBCのオルラ・ゲリン記者による単独インタビューで、23歳の男性兵士は、ニコラス・マドゥロ大統領に忠誠を誓うヴェネズエラ軍が「自分の家族に辛く当たる」のではないかと恐れていると述べた。

「しかし、これが自分にとって最善の判断だった」と続けた。

100人以上のヴェネズエラ兵が隣国へ逃れたとされている。兵士の多くは、人道支援物資の搬入をめぐり国境で衝突が起きた23日にコロンビアに入ったという。この衝突では少なくとも2人が死亡

アメリカが提供する食料や医薬品など人道支援をめぐっては、マドゥロ大統領が「軍事介入の口実」だとして受け入れを拒否している。マドゥロ氏はヴェネズエラ軍を派遣し、同国と隣国ブラジルとコロンビア国境を結ぶ道路や橋を封鎖して支援物資の流入を阻止したことから、緊張が高まった。

ヴェネズエラとコロンビアをつなぐ複数の場所で、支援物資を入れようとする人々とヴェネズエラ政府側が激しく衝突している。大勢のボランティアや抗議者がヴェネズエラ軍の前哨基地を燃やしたほか、兵士や機動隊に向けて石を投げつけたため、ヴェネズエラ軍は催涙ガスを発射して応戦した。

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離反兵士たちの主張

匿名を条件にBBCの単独インタビューに応じたヴェネズエラ軍の離反兵士たちは、ヴェネズエラと国境を接するコロンビア・ククタの教会に身を寄せている。兵士たちは、軍を離れた動機を説明した。

29歳の男性兵士は、「離反したい熟練の兵士たちはたくさんいる。今回の動きからドミノ効果につながるだろう。軍に重要な影響をもたらすだろう」と述べた。

さらに「腐敗した将官があまりに多いので、軍は破綻している」と明かし、「職業軍人はくたびれ果てている。我々は奴隷のままでいられない。自分で自分を解放する」と続けた。

女性兵士は、23日の衝突の状況を「緊迫」していたと振り返り、「私には自国民を傷つけることはできないと思った」と明かした。

「私の娘は今もヴェネズエラ国内に留まっている。そのことが一番苦しいが、娘のためを思ってしたことだ。政府が娘に何をするのかが分からないのでつらい」

別の男性兵士は、人道支援物資のために路上で争うヴェネズエラ国民の姿を見るのは心が痛んだという。

「私は無力で役に立たないと感じた。何もかもが辛かった」

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コロンビアとブラジル国境でヴェネズエラの治安部隊と衝突するデモ参加者

最新の状況

死者を出した週末の衝突を受けてマイク・ポンペオ米国務長官は24日、米CNNに対し、マドゥロ大統領の「終わりが迫っている」と述べた。

「具体的な日数を出すのは難しい。私は、ヴェネズエラ国民がマドゥロ氏の終わりが迫っていることを確実にするだろうと確信している」

23日に起きた民間人とヴェネズエラ軍との衝突では、少なくとも2人が死亡した。

アメリカをはじめ50カ国以上から暫定大統領として承認されている野党代表フアン・グアイド国会議長(35は、自ら率いる野党主導の人道支援物資をめぐり衝突が起きたことを受け、マドゥロ氏を追放するためにあらゆる手段を検討するよう各国に求めている。

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ヴェネズエラ警察は、支援物資が同国とコロンビアを結ぶシモン・ボリバル橋を通過することを阻止した

グアイド氏はまた、マドゥロ氏から渡航禁止を命じられているが、25日にコロンビア・ボゴタで開催される中南米諸国の大半との会議に参加するつもりだと述べた。同会議には、マイク・ペンス米副大統領も参加する。

ロイター通信によると、米ホワイトハウス幹部は24日、この会議でペンス氏がヴェネズエラの危機に関する「具体的な道筋」と、「対策」の発表を計画していると述べたという。

一方、コロンビアとブラジルは、マドゥロ氏に権力を放棄させるよう圧力を強化する意向だと述べた。ドナルド・トランプ米大統領はヴェネズエラの危機への武力対応の可能性を否定していない。

仏AFP通信によると、23日にアメリカからの支援物資を乗せた船がプエルトリコからヴェネズエラへ向かっていたところ、ヴェネズエラ海軍に妨害され、カリブ海のオランダ領・キュラソー島での停泊を強いられたという。

この船には食料と医薬品が入った9つの貨物コンテナが積まれていたと報じられている。

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アメリカからの人道支援物資を載せた船舶はヴェネズエラ海軍の妨害に遭い、キュラソー島での停泊を強いられた

自分こそがヴェネズエラの正当な大統領だと主張するマドゥロ氏は、ロシア、キューバ、中国など主な経済友好国に支持されている。マドゥロ氏は、国外からの支援受け入れはアメリカの軍事介入の道を開くとして警告している。

一方のグアイド氏は、2018年大統領選挙の不正疑惑のため、マドゥロ氏の地位はもはや違法だと主張している。

国境での衝突

反マドゥロ派は、ブラジルとコロンビアからヴェネズエラ国内へ平和的な人道支援物資の搬入を試みた。グアイド氏は23日に支援物資が国内に搬入されると誓ったが、マドゥロ政権は国境を部分的に封鎖して応戦した。

ヴェネズエラの一般市民たちは大量の食料や医薬品を手に入れようと国境を越えようとしたが、すぐに血みどろの暴力と化した。

兵士たちは民間人に向けて実弾とゴム弾を発射した。

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ヴェネズエラとコロンビア国境での激しい衝突

映像には、亡命しようとするヴェネズエラ軍兵士が、コロンビア国境に装甲車で突入する様子が確認できる。

ソーシャルメディアに投稿された別のビデオには、マドゥロ大統領を非難し、グアイド氏への支持を表明する4人の兵士が映っている。

グアイド氏は、「歴史の正しい側」に加わるのであれば、離反兵士たちに恩赦を約束するという。

背景

コロンビアとブラジル国内に備蓄された人道支援物資はこう着状態のマドゥロ氏とグアイド氏の板ばさみになっている。事の発端は、2018年大統領選でのマドゥロ氏の再選だ。

近年のヴェネズエラは、政治的および経済的危機に直面してきた。

ハイパーインフレで物価が急上昇し、多くのベネズエラ人は日用品を購入する余裕さえない。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、近年では300万人以上のヴェネズエラ人が国外へ避難しているという。

<解説>ボコボコにされ、傷だらけに―― オルラ・ゲリン、BBC特派員

私たちが、男女両方のヴェネズエラ軍兵士たちと面会したのは、彼らが武器を捨て持ち場を離れた翌日だった。避難したカトリック教会の外では、数人が目に付かないよう警備に立っていた。

数人は、ヴェネズエラ軍が国民に催涙ガスやゴム弾を発射した、週末の暴力的な光景にショックを受けているようだった。

兵士たちを受け入れた小教区の司祭は、たどり着いた兵士の多くは痛めつけられ傷だらけだったと明かした。大切な人と電話で話し若い兵士は、人目をはばからず泣いていた。

私たちが面会した兵士のほとんどは、歩兵だった。兵士たちによると、腐敗した軍幹部はいまだマドゥロ大統領と結びつきが強く、マドゥロ氏は権力維持のために争う可能性があるものの、下士官や一般兵はグアイド氏を支持しているという。