英下院、政府のEU離脱協定をまた否決 合意なしブレグジットの是非を採決へ

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メイ英首相、声を枯らして 下院の判断は「非常に残念」と

イギリスの下院(定数650)は12日夜(日本時間13日未明)、イギリスの欧州連合(EU)離脱について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、391対242の大差でこれを否決した。1月に続く2度目の否決で、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の行方はさらに不透明となった。

メイ首相は採決に先駆けて、この「改善された協定」を議員が支持しなかった場合、EUとの合意のないまま3月29日に離脱するいわゆる「合意なしブレグジット」の危険性が高まると警告していた。

大差で否決されたメイ首相は、13日に合意なしブレグジットを行うかを採決すると発表した。さらにこれが否決された場合には、14日にEU基本条約(リスボン条約)第50条に定められた2年間の離脱交渉期間を延長し、EU離脱を3月29日以降に遅らせるかどうかを採決する。

メイ首相は13日の採決について与党・保守党の議員を党議拘束しない方針を示し、「これはこの国の将来にとって非常に深刻な問題だ」と強調した。

「(2016年の)国民投票のときと同じで、賛否双方に強固で同じくらい正当な意見があります。そのため、与党では党議拘束を行わないことを確認する」と首相は述べた。

また、イギリスが直面している選択肢は「好ましいものではない」が、離脱協定が否決された以上、「直面しなくてはならない」と述べた。

下院はすでに1月に、230票の歴史的大差で離脱協定を否決していた。テリーザ・メイ首相はその後EUと再交渉し、11日には協定を「法的拘束力のある」ものに変更する合意を取り付けていた。  

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メイ首相は、現段階では合意なしブレグジットがイギリスの基本方針だと述べた。首相官邸の報道官によると、首相はあすの審議で合意なしブレグジットに賛成するかどうかを明らかにするという。

また1月に内閣不信任案が否決されたため、辞任については協議しなかったと述べた。

その上で、メイ首相はなお、この協定が最善で唯一のものだとの考えで、これ以上EUと交渉はしないつもりだと説明した。

採決では保守党からは75人の議員が造反したほか、メイ首相と閣外協力する北アイルランドの民主独立党(DUP)も反対した。一方、最大野党・労働党からは3人が賛成票を投じている。

1月に下院が歴史的大差で首相の協定を否決した際には、保守党から118人が造反した。今回の採決までに首相は与党議員43人を説得したことになるが、可決には至らなかった。

Image caption EU離脱協定の投票結果

アイルランド国境の問題

EU離脱派議員団・欧州研究グループ(ERG)を率いる与党・保守党のジェイコブ・リース=モグ議員は、今回もメイ首相のまとめた離脱協定に反対票を入れた。

「協定の問題点は、EUをきっぱり離脱するという方針を明示していないところだ」とリース=モグ議員はBBCに説明した。さらに議員は、英・北アイルランドとアイルランドの国境の扱いをめぐる合意案(バックストップ)を、あらためて問題視し、これが導入されれば、「我々は関税同盟に残ることになり、単一市場にも実質的に残ることになってしまう」と述べた。

「(国民投票で)離脱に投票した1740万人の道義的権威を前に、実際にブレグジットを撤回させたいと発言している人は少ししかいない。ブレグジット反対派は代わりに、2度目の国民投票や延期をもとめている。しかし、国民投票の結果を反故(ほご)にしたいのだと口にする勇気のある政治家は、実際にはほとんどいない」

イギリスの一部の北アイルランドと、EU加盟国アイルランドの間には、約500キロの国境がある。「バックストップ」は、この地続きの国境に厳格な入国審査を復活させないための措置で、2020年末までに英・EUの正式な通商協定が締結されなかった場合、北アイルランドをEUの関税同盟と単一市場に留めるというもの。その場合、関税や規制上の国境は、アイルランド島とグレートブリテン島を分けるアイルランド海に引かれることになり、イギリス各地から北アイルランドに入る製品は、EU基準に見合っているかどうかの検査を受けなければならない。北アイルランドと、それ以外のイギリス各地の地位にそうした差が生まれれば、連合王国全体としての一体性を損なう恐れがあるとみられている。

さらに、EUが合意しなければイギリスはバックストップから一方的に離脱できないことから、イギリス議会ではこの状態が恒久化するとの懸念がある。1月の歴史的大敗を受けてEUと再交渉した首相は今回の採決を前に、EUがイギリスをバックストップに留めようとした場合にはイギリスが「正式な紛争」を開始できるというEUとの共同声明を発表した。

これに対して、政府に法的助言をするジェフリー・コックス法務長官は、今回の共同声明などによってイギリスが「恒久的かつ不本意な形で」バックストップの取り決め状態に押しとどめられるという「リスクは減退した」ものの、EUの合意がなければバックストップを解除するための「国際的に合法な手段がない」という「法的リスクは不変だ」と、危険がまったく消えたわけではないと、法的見解を表明していた。

野党・労働党は

労働党のジェレミー・コービン党首は、メイ首相は解散総選挙を行うべきだと訴え、「再び圧倒的大差で敗北した今、メイ政権は離脱協定が完全にだめになったこと、下院の支持を得られていないことを認めるべきだ」と話した。

また、合意なしブレグジットは「選択肢から外すべき」と主張し、労働党は代替の離脱協定案を支持し続けると発言した。一方、労働党が2度目の国民投票案を支持するとした先の約束については言及しなかった。

EUの反応は

離脱協定の否決を受け、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官はツイッターで、「EUは離脱協定が承認されるのを支援するためにあらゆることを行った。この難局はイギリス国内でしか解決できない。我々としては、『合意なし』に備えることが、ますます重要になった」とコメントした。

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)の報道官も同様に、「我々がこれ以上できることはほとんどない」と述べている。

「3月29日まで17日しか残されていない中、きょうの採決によって合意なしブレグジットの可能性は大いに高まった」

また、イギリスがブレグジットの延期を求めるならEUは1度は考慮するだろうが、加盟27カ国はそのために「根拠のある正当な理由」が必要だと話した。

(英語記事 MPs reject May’s EU withdrawal deal again / Brexit deal: What do the documents say?

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