英下院、合意なしブレグジットを否決 延期を求めるか明日採決へ

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英下院(定数650)は13日夜、イギリスが合意のないままEUから離脱するかどうかの採決を行い、これを否決した。ただし、この採決に法的拘束力はない。
テリーザ・メイ首相は、下院の「明確な過半数」が合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)に反対したと認めた。しかし現時点の「法的な基本方針」ではなお、イギリスは何らかの協定が承認されない限り3月29日に合意のないままEUを離脱することになる。
その上で首相は、下院は今後、離脱を6月30日に延期するかどうかを採決すると述べた。この採決は14日に行われる予定。これが承認され、EU側も合意すれば、イギリスは3月29日にEUを離脱しないことになる。
メイ首相は、EUとの延期合意を実行するには数日の遅れが生じる可能性があり、もし合意できなければそれ以上の遅れが予想されるとしている。
13日の審議ではまず政府が、イギリスが3月29日に離脱協定に合意しないままEUを離脱するのを防ぐ動議を提出した。
しかしこの動議が採決される直前に、イヴェット・クーパー議員(労働党)が提出した、いかなる状況でも合意なしブレグジットを容認しないという修正案がわずか4票差で可決された。
これを受けて政府は与党・保守党議員に対し、政府動議に反対するよう指示する事態となった。首相は前日には、党議拘束をしない方針を示ていた。
修正後の政府動議は結局、321対278で可決された。多くの議員は合意なしブレグジットを望んでいないという主張を、あらためて強調する形になった。
一方で、EU離脱を2019年5月22日まで延期する修正案は374対164で否決され、いわゆる「管理された合意なしブレグジット」の可能性は残された。
6月30日まで延期か
この日の採決結果を受けてメイ首相は、「我々の前にある選択肢はこれまでと変わらない」と釘を刺した。
「下院はきょう、合意なしブレグジットを明らかな反対多数で否決したが、私はこれまでと同じことを繰り返したい」
「この院が直面している選択肢について、EUとイギリスそれぞれの法による法的な基本方針は、何らかの協定がまとまらなければ、イギリスは合意なしでEUから離脱する。下院にいる我々一人ひとり、この何らかを見つける責任がある」
下院は14日には、ブレグジットを6月30日まで延期することの是非を採決する。必要な立法措置を終えるにはそれだけの猶予が必要だという理由で、6月30日の期日が設けられた。たたしそれは、下院が20日までに首相の離脱協定に合意することが前提となると、政府は説明している。
もし下院がそれまでに離脱協定に合意しないならば、ブレグジットの期日はさらに延長されるかもしれないと、メイ首相は釘を刺した。
一方で、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は、イギリスが5月の欧州議会選までに離脱しないならば、加盟国として議会選に参加しなくてはらないと注意している。
5年に一度の欧州議会選挙が2019年5月23日から26日にかけて、EUの各加盟国で行われる。
閣僚の造反
メイ首相はこの日の採決の前、党議拘束をしない方針を示していたが、クーパー議員の修正案が可決されたために急きょ、政府動議に反対票を投じるよう指示した。
合意なしブレグジットに反対していた閣僚数人が、この異例な指示に従わず、政府動議の採決に棄権した。通常は、党議拘束に従わなかった閣僚は辞任するのが慣例。
アンバー・ラッド労働年金相、グレッグ・クラーク・ビジネス相、デイヴィッド・ゴーク法相、デイヴィッド・マンデル・スコットランド相を含む閣僚13人(閣外担当相含む)が、院内幹事の命令に逆らい棄権した。
サラ・ニュートン労働年金担当閣外相は、党議に反対し、内閣を辞任した。
棄権したマンデル・スコットランド相は、「自分は総理の行動を支持するので、辞任しない」と述べた。自分はメイ首相がEUとまとめた離脱協定を支持しているし、合意なし離脱への反対は以前から明示してきたと話した。
労働党のジェレミー・コービン党首は、今こそ議会がブレグジットの手続きを掌握する時だと述べ、労働党としても党を超えて解決策を見つける努力をすると話した。