米上院の共和党、トランプ氏に造反 国家非常事態宣言の無効支持

A patchwork representing a US flag hangs on the US-Mexico border in Playas de Tijuana, Baja California State, Mexico, on March 8, 2019

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トランプ米大統領はメキシコとの国境での状況は国家非常事態に相当すると主張する。写真はメキシコ・カリフォルニア州ティフアナの国境

米上院(定数100)は14日、メキシコ国境の壁建設をめぐるドナルド・トランプ米大統領による国家非常事態宣言を無効にすると賛成59、反対41で可決した。与党・共和党の上院議員12人が大統領に造反し、野党・民主党の決議案に賛成した。トランプ氏は拒否権を行使するとただちに反発した。大統領の拒否権を覆すだけの票数は上下両院でまとまらない見通し。

上院が自分の国家非常事態宣言の無効化を支持したのを受けて、トランプ氏は「VETO!(拒否!)」とツイートした。

さらにトランプ氏はツイッターで、「いま可決されたばかりの、民主党発の決議を拒否するのが楽しみだ。この決議は国内の犯罪と麻薬と人身売買を増やして、国境を開いてしまう。国境警備となんとしても必要なを支持して投票してくれた、強い共和党の全員に感謝する!」と書いた(太文字は原文では大文字で強調)。

大統領の拒否権を覆すには、上下両院で3分の2以上の賛成が必要。

トランプ氏は選挙公約の壁建設に向けて、議会の予算決定権を迂回(うかい)するため、2月15日に国家非常事態を宣言した。宣言にもとづき軍事予算を壁建設に充てることで、約80億ドル(約9000億円)を捻出する方針。ただし、アメリカとメキシコの約3200キロに及ぶ国境沿いに壁を建設するには、推定230億ドルが必要と試算されている。

これに対して、大統領が国家非常事態宣言を使って議会の専権事項について議会を回避するのは、危険な前例を作ることになると、共和党の間でも懸念が出ていた。

民主党が多数を占める下院は先月末、この大統領宣言を無効にする決議案を可決。下院では共和党議員13人が、大統領に造反した。

上院は現在、共和党53人、民主党45人(2議員は無所属だが投票傾向は民主党寄り)で、今回は共和党から12人が大統領に反対した。

共和党から造反した上院議員は、ミット・ロムニー(ユタ州)、マイク・リー(同)、マーコ・ルビオ(フロリダ州)、ロイ・ブラント(ミズーリ州)、ラマー・アレクサンダー(テネシー州)、パット・トゥーミー(ペンシルヴェニア州)、ロブ・ポートマン(オハイオ州)、ジェリー・モラン(カンザス州)、スーザン・コリンズ(メイン州)、リーサ・マーコウスキ(アラスカ州)、ランド・ポール(ケンタッキー州)、ロジャー・ウィッカー(ミシシッピー州)の各議員。

採決前にコリンズ議員は、「問題は国境警備の強化ではありません。その目標は私も支持してきました。今の問題は、この立法府が自分たちの専権事項を守るため立ち上がり、憲法に規定された三権分立を支持するかどうかです」と主張した。

ポール議員は、国境警備への予算支出には賛成しながらも、「いかなる大統領も連邦議会を迂回してはならない」と批判。さらに、今回のトランプ氏の非常事態宣言が認めれれば、将来的に「社会主義寄りの大統領」が同じ手法で環境保護や銃規制推進の法案を成立させてしまいかねないと警告した。

ロムニー議員も、トランプ氏の国家非常事態宣言が前例となり、「未来の大統領がさらに権力を拡大し乱用する」ための「招待状」になりかねない、「権限の逸脱」だと批判した。

一方で、共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は、大統領の非常事態宣言は「民主党が国家利益よりも党の利益を優先させて妨害を重ねた」ことへの、「予想可能で理解可能な帰結」に過ぎないとトランプ氏を擁護した。