メイ英首相、EU離脱実現には「労働党と協力しかない」 ビデオメッセージで

Theresa May in the Commons Image copyright UK Parliament/Mark Duffy

イギリスのテリーザ・メイ首相は7日、ビデオメッセージで欧州連合(EU)離脱についての所感を発表し、ブレグジット(イギリスのEU離脱)を実現するかブレグジットが「指の間から滑り落ちる」かの瀬戸際で、最大野党・労働党と協力することにしたと語った。協定に基づくブレグジットとブレグジット中止の間で厳しい選択を迫られたと述べている。

6日夜に収録されたビデオメッセージでメイ首相は、下院議員がメイ首相とEUがまとめたブレグジット協定を受け入れる見通しは「予想に反して」立っていないと話した。

その上で、協定を下院で承認する「新しい道筋」を模索しているが、そのためには「与野党双方の譲歩」が必要で、「国民が国民投票でEU離脱を決めたのなら、議会としてはそれを実現する義務がある」と述べた。

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さらに、保守党および閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)に協定を支持するよう「全力を尽くした」が、「別のアプローチを取らなくてはならなくなった」と話した。

「我々は野党に手を伸ばす以外の選択肢がなかった」と首相は述べ、保守党と労働党が雇用保護と人の自由な移動の中止が必要だという点で合意したと語った。

「(2016年の)国民投票は党の方針で戦ったものではない。私が訪ねた人々は、国益がかかっている時は政治家に(党を超えて)協力して欲しいと話していた」

その上で、離脱協定の下院通過がブレグジット実現のため唯一の道筋だと述べた。

「このプロセスが長くなればなるほど、ブレグジットが実現しないリスクが大きくなる」

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Image caption テリーザ・メイ首相と労働党のジェレミー・コービン党首

イギリスは4月12日にEUを離脱することになっているが、離脱条件をまとめた協定が下院で承認されなければ、合意のないまま離脱することになる。

メイ首相は5日、イギリス政府として離脱プロセスを6月30日まで再延長したいと要請した一方、それまでに離脱協定が承認されれば、5月23日の欧州議会選挙の前に離脱したい構え。

下院はこれまで3度にわたりメイ首相の離脱協定を否決している。メイ首相は2日、新たな離脱計画を最大野党・労働党と協力して作成すると発表した。

4月10日にはEUの臨時首脳会議が予定されており、首相はそれまでにこう着状態を打破したい考えだ。しかし、3~5日に行われた与野党の協議では、合意には至らなかった。

離脱の延期には他のEU加盟27カ国の承認が必要となる。

今週の主な動き

  • 4月8日: 政府と労働党の協議が再開される見通し
  • 4月10日: EUの臨時首脳会談が開かれ、イギリス政府が要請した6月30日までの延長を協議する
  • 4月12日: 再度の延長が認められなかった場合、イギリスはこの日にEUを離脱する

労働党の反応は?

政府との協議にも参加した労働党のレベッカ・ロング=ベイリー影のビジネス相はBBCの番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演し、政府から協定合意に必要な譲歩案を得ていないが、「向こう数日で事態が変わることを期待しているし、協議を続けたい」と語った。

一方で、「合意なしブレグジットを除外するためにあらゆる手段を講じる」と述べ、その中にはブレグジット中止も含まれるとしている。

労働党のジェレミー・コービン党首は、「(政府が)一線を越えるかどうか待っている」と話した上で、「政府の方針には大きな変化はみられない」と述べた。

コービン党首は党内から保守党との譲歩条件についてさまざまな圧力をかけられている。4日には、まとまった協定の是非を国民投票で決める条件を含めるべきではないとする書簡に25人の議員が署名した。

一方、4人の影の内閣閣僚を含む議員80人は、国民投票を譲歩の「最低ライン」にするよう求める書簡をコービン党首に提出した。

保守党の院内総務は 「国民投票は究極の裏切り」と

一方、保守党のアンドレア・レッドソム下院院内総務は「アンドリュー・マー・ショー」で、政府は労働党と「歯を食いしばって」協議していると説明。ブレグジット中止と合意なし離脱なら後者の方がましだと話した。

また、2度目の国民投票を行うことは「究極の裏切り」になると語ったほか、離脱延期の結果として欧州議会選挙に参加することは「全く受け入れられない」と述べた。

「EUを離脱する以上、譲歩することが重要だ。それが今回の与野党協議で、歯を食いしばって行っている。しかし言うまでもなく、最も大事なことは実際にEUを離脱することだ」

さらにレッドソム氏は別のBBC番組で、今週にもメイ首相の協定を4度目の採決にかける可能性があると話した。

関税同盟を認めるか

労働党はかねてブレグジット後にEUとの関税同盟を結ぶ案を示している。一方、保守党は2017年の総選挙で関税同盟からの離脱をマニフェストとして掲げており、この点で政府が譲歩するかについては与野党双方で物議が出ている。

関税同盟への加盟は協定のうち、EUとイギリスの将来の関係を示した「政治宣言」に含まれる。

労働党議員がコービン党首に送った書簡によると、メイ首相が協定が承認された暁には辞任すると表明している上、協定に含まれる「政治宣言」には法的拘束力がないため、次期首相が合意を破る可能性があると指摘している。

その一方で保守党のEU離脱派からは、メイ首相が労働党の要求を、特に関税同盟加入を飲むとの見通しに怒りの声が挙がっている。

マイケル・ファブリカント議員は、もし議員がこれを認めれば保守党や離脱に投票した国民から「大きな反対運動」が起こるだろうと話した。

また、ドミニク・ラーブ前EU離脱相は英紙デイリー・メールに寄稿し、メイ首相の方針は「保守党に今後、何年もダメージを与える可能性があり、ブレグジットは失敗し、政府は倒れ、コービン党首が政権を握る危険性を伴っている」と批判した。

(英語記事 May: I had to approach Labour over Brexit

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