EUとイギリス、ブレグジットの延期に合意 10月31日まで

Jean-Claude Juncker and Donald Tusk

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欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は11日未明、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)について、イギリスと欧州連合(EU)が10月31日までの「柔軟な延長」で合意したと発表した。記者会見でトゥスク氏は、「イギリスの友人へのメッセージ」として「この時間を無駄にしないで欲しい」と話した。

EUは10日、ブリュッセルで臨時首脳会議を開き、テリーザ・メイ英首相が離脱日を今月12日から6月30日に延期したいと要請。それより前にイギリス議会が離脱協定を批准すれば期日を早める条件も申し出た。

これに対して他の加盟27カ国は短い延期の繰り返しには応じず、5時間の会議の末に10日深夜、10月31日までの延長で合意。その後、トゥスク氏はメイ氏と会談し、合意に至った。

離脱日の決定では全加盟国が一致する必要があったが、臨時首脳会議では延長期間をめぐって加盟国の意見が割れたという。

トゥスク氏はツイッターで、「EU27カ国とイギリスは、10月31日までの柔軟な(ブレグジット)延長に合意した。イギリスにはさらに6カ月、最善の結果を模索する期間が与えられる」と述べた。

トゥスク氏は11日午前2時過ぎ(日本時間午前9時過ぎ)にジャン=クロード・ユンケル欧州委員長と記者会見を行い、「今後どう動くかは全てイギリスにゆだねられている。イギリスはなお離脱協定を批准できる。そうなれば延長は終了する」と話した。

また、イギリスにはブレグジット戦略の再考のほか、EU基本条約(リスボン条約)50条の発動を撤回し「ブレグジットを中止する」選択肢もあるとしている。

ユンケル欧州委員長は、「(5月に行われる)欧州議会選挙にはイギリスも参加するだろう。少し奇妙なことだが、ルールはルールであり、我々はEU法を尊重すべきだ。その上で、何が起きるか注視する」と話した。

これに対しメイ首相は、もしイギリス議会は5月第3週までに離脱協定を批准すれば、イギリスは欧州議会選挙に参加する必要はないと述べた。

また、離脱協定が承認されるまではイギリスは「EU加盟国としての権利と義務を全て負う」と話した。

「私が離脱の延長を申し出なくてはならなかったことで、多くの人が大きないら立ちを抱えている」とメイ首相は述べた。

「今なお議会を説得できていないことを心の底から申し訳なく思う」

欧州議会選挙参加が鍵か

アイルランドのレオ・バラッカー首相はツイッターに、「会議は終わった。 1. 10月31日までの柔軟な延長、2. 6月の通常の首脳会談で状況を検討する 3. イギリスは欧州議会選挙に参加するか、6月1日に合意なき離脱をするかのどちらか」と投稿した。

BBCのアダム・フレミング・ブリュッセル特派員は、「5月23日の欧州議会選挙に参加しなければ、イギリスは6月1日に崖っぷちのブレグジットとなる可能性がある」と指摘した。

BBCのカティヤ・アドラー欧州編集長は、「EU首脳は、6月に点検するという条件付きで、10月31日までの延長に合意したとのこと。もしこの通りなら、首脳会議で最も強硬派だったマクロン(仏大統領)の勝ちということになる」とツイートした。

マルタのジョゼフ・ムスカット首相は、10月31日という期限は「イギリスに最終的にその道筋を決める時間を与える」もので「理に適っている」と話した。

10月31日が離脱日となれば、イギリスは欧州委員会の次期委員長が就任する前日にEUを離脱することになる。

臨時首脳会議の前、メイ首相は6月30日までの延長を求めるにあたって1時間の演説を行った。その中で、首相とEUがまとめた離脱協定が議会で批准されれば、これより前に離脱する用意があると述べた。

イギリスがEUにブレグジットの延長を求めたのは、これで2回目。

イギリス議会はこれまでに3回、メイ首相の離脱協定を拒否している。また、合意のないままEUを離脱する案も否決しており、メイ首相は引き続き、国内での合意を求める必要がある。